ここから本文です

蜷川実花、父に導かれるように撮った写真たち

5/13(土) 18:17配信

otoCoto

「世界のニナガワ」と呼ばれ、数々の名演出を残し、多くの舞台人を生み出した演出家・映画監督の蜷川幸雄さんがこの世を去ってから、5月12日で1年になる。その蜷川幸雄さんの娘で、写真家・映画監督の蜷川実花さんが、父を見送った昨年の春からこの1年をカメラにおさめた写真集「うつくしい日々 蜷川実花」を11日に上梓した。
父の死に向き合う日々を撮影した写真約60点で構成された展覧会「蜷川実花 うつくしい日々」が5月19日(金)まで原美術館(東京・品川)において開催されている。展覧会の会場において、蜷川実花さんが写真集や展覧会について、そして父・蜷川幸雄について語った。


──まず写真集についてお話いただけますか?

いままで(の自分の写真)と違って、自分でもこんな写真になるとは思ってなくて、気がついたらこういう写真になったいました。まるで導かれたように感じました。父が亡くなる前後二ヶ月をメインに撮ったのですが、いつかまとめようと思ってはいたものの、なかなか手を付けられずにいたのですが、ある時、「よし、やってみよう」と思ったら、スルスルっとまとめられたんです。(やると)決めてからは、まるで流れて辿り着くようにできあがりました。

(展覧会を)原美術館で行うことになったのは、二ヶ月ぐらい前に「原美術館みたいなところでできたらいいね」という想いをもっていて、それがご縁があって実現したんです。それもたまたま会期に父の命日もあって、やはり導かれたのかな、と。

──これまでの写真とは趣が違うように感じますが。

入院していた時に撮っていた写真は、(父は)もう、表には出られないんだろうと思っていたら、たぶん(父と)シンクロしていたんだろうと思うのですが、横断歩道が眩しくみえたり、桜がきれいだな、新緑がきれいだなとか、なんてことのないことなんですが、なんてこんなに世界は美しいんだろうと。染み入りながら写真を撮っていました。明るくて、眩しくて、美しいな、と。

この時期の写真は(いままでとは)あからさまに違っていて、元気玉みたいだった父が具合が悪くなっていくのと、(私が)子どもを産んだ時が重なって、(父と子どもの)間に私がいるみたいに感じました。命ってこういう風に紡がれていくんだな、こういうものなんだなと。悲しいけれど、これが当たり前のことなんだな、と。

──ぜひ見てほしい一枚は?

亡くなるって時の心電図の写真があるのですが、こういうものも撮るんですね。写真家のサガなのかとも思うのですが。世界を圧倒的に肯定している写真だと。「浮腫んじゃってるね」なんて言いながら撮った、父の手の写真を入れるのは悩みました。簡単にセンチメンタルな気分になりそうだと思ったのですが、(私の)小さなこだわりより伝わりやすい方がいいかな、と思って。

父が亡くなってからは、もっとガクッとくるかなと思っていたのですが、子どもが小さいこともあって、日々生活するのに精一杯で。それに助けられました。(父は)一年間ぐらい具合悪いながらも仕事を続けていたので、家族にはなんとなく覚悟があって、穏やかな気持で送れたのかな、と思います。大切な人との別れはどなたにもあることだと思うのですが、(今回の写真は)これまでの私の写真の積み上げ方とは、まるで違う形でできた写真で、もしかしたら代表作になるんじゃないかな、と思っています。

1/2ページ

最終更新:5/13(土) 18:17
otoCoto