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「こども保険」は高齢者偏重を切り崩せるのか

5/13(土) 6:00配信

オトナンサー

 未来を担う子供たちのために、高齢者偏重の社会保障制度を是正する制度として、自民党の小泉進次郎氏を中心としたグループが提言している「こども保険」。現在の「年金」「医療」「介護」という社会保障制度の3本柱に加えて、新たに「こども保険」を創設し、未就学児の保育園や幼稚園の実質無料化を実現しようというものです。

実現へのハードルは高い?

 その趣旨には賛同する方が多いようですが、実際の財源は「社会保険料の上乗せ」です。提言では、まず社会保険料に0.1%を上乗せして約3400億円の財源を確保、これにより、子供1人あたり毎月5000円を支給できる計算になります。

 その後、段階的に上乗せ分を増やして最終的に0.5%、財源を1兆7000億円とし、子供1人あたり毎月2万5000円になれば、それらを保育園や幼稚園のコストに充てられるため、「無料化」が実現できるというわけです。

 しかし、単身者や、子供がいない夫婦世帯などにも負担を強いることになるほか、ある程度年収の高い世帯は、6年間の受給のために40年以上、社会保険料が上乗せされることになるため、自分で支払っているのと変わらないことになりかねません。

「老人から子供へ」というスローガンは理解できますが、その実は社会保険料の「値上げ」でしかなく、実現へのハードルは高いように思います。

「世代間格差」と呼ばれるものの正体

 そもそも、現行の社会保障制度は本当に高齢者偏重なのでしょうか。ここで一つ、内閣府が出しているデータをひも解いてみます。

 内閣府経済社会総合研究所の2012年の資料では、社会保障の「受給」から「負担」を差し引いた数値を「生涯純受給率」と定義し、各世代の数値を公表しています。これらの数値を比較すると、実際に「若ければ若いほど不利」、つまり高齢者が優遇されている実態が鮮明となり、政府自らその事実を認めていることになります。

生年(年齢)      生涯純受給率
1950年生まれ(67歳)  +1.0%
1960年生まれ(57歳)  -5.3%
1970年生まれ(47歳)  -7.8%
1980年生まれ(37歳)  -9.8%
1990年生まれ(27歳)  -11.5%
2000年生まれ(17歳)  -12.7%
2010年生まれ(7歳)   -13.0%
(※内閣府経済社会総合研究所「社会保障を通じた世代別の受益と負担 2012年」)

 この数値は「受け取り」と「支払い」の差とも言え、プラスは「得」、マイナスは「損」ということになります。

 マイナスなので「損をしている!」と怒る方がいますが、まず大前提として、この数値がプラスになることはあり得ません。そのことを理解するには、「全体」と「個人」を分けて考える必要があります。個人レベルでは、どの世代でも「得する人」と「損する人」がいて、年金は長生きすればするほど多く受給でき、短命ならば当然少なくなります。

 医療や介護も、使う人はたくさん使いますが、使わない人は全く使わずに亡くなります。そうした「個人間の損得の差」はあっても、それを承知で、「皆で支える」ことが制度の根幹であり、全体としての収支もトントンになるはずです。

 つまり、理論上はプラスマイナスゼロになるのですが、現実的には、これらの制度を運営する上での人件費(公務員の給与)や設備費、システム費、事務手数料などの「コスト」があるため、それらは全体で負担する必要があります。

 このコスト分だけ「少しマイナス」になるのは仕方ありませんが、実際には、若ければ若いほどマイナス幅が大きくなり、これが「世代間格差」となるのです。

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最終更新:5/13(土) 6:00
オトナンサー

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