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テスラモーターズがメキシコでエンジニアを募集した理由とは?

5/13(土) 9:10配信

HARBOR BUSINESS Online

 2003年創業のベンチャー企業「テスラモーターズ」がメキシコでエンジニアの雇用を開始した。ヌエボ・レオン州の首府モンテレイ市にて5月5日から8日までテスラで働きたいメキシコ人を募ったのである。その広報には「リンクトイン」を使ったという。生産体制の拡大と不足しているエンジニアを補う為である。

 テスラがエンジニアの雇用に米国人よりもメキシコ人に関心を示したのは、メキシコには世界の主要自動車メーカーが生産基地としており、現在メキシコには19の生産工場が存在している点が挙げられる。そこで経験を積んだエンジニア或いはエンジニアを目指す若者などを対象にして募集したのである。エンジニアの中でもロボット・エンジニアリング部門を中心に、オートメーション、車体、メカニカル・デザイン、プラスチック成型、プレス加工、品質コントロールなど15部門に亘るエンジニアを求めているとしている。

 更に、テスラがメキシコ人の雇用を望んでいるのは、テスラの創業者であるイーロン・マスクが大の労働組合嫌いだということもある。”労働組合は企業にとって有益にはならない”という考えなのだという。(参照:「El Confidencial」)

 その点、メキシコは労働組合は殆ど存在しておらず、仮に存在していたとしても、企業経営においてその影響力は非常に低いとされているのだ。それが理由で、労賃においても比較的安価に雇用できる。このことが、イーロン・マスクにとって、メキシコ人の雇用に関心を示している理由である。

 因みに、<「米国の自動車産業の平均時間給は25.58ドル(2865円)、テスラは17ドルから21ドルだ(1900-2350円)」>とテスラに勤務して労働組合の創設を望んでいるホセ・モランが確言したそうだ。(参照:「El Confidencial」)

◆募集にはエンジニアが殺到

 ただ、そんな労働環境であってもメキシコのエンジニアには魅力的だったようで、面接が行われたモンテレイ市のグラン・フィエスタ・アメリカーナ・ホテルは、会場外にまで就職希望者で溢れていたという。また、取材記者の安全を兼ねて市の警備員が彼らを保護したそうだ。メキシコ・シティから1000㎞を走行して面接に駆け付けた経験を積んだエンジニアもいたという。ロイターの取材に答えた一人は、<「テスラは新しいインノベーション企業だ。将来の発展性あることを提供してくれる」>と匿名希望で答えた。飛び込みで、直ぐに採用されると思って履歴書も持参せずに駆けつけた者もいたそうだ。(参照:「El Confidencial」)

 テスラの当面の目標はカリフォルニア州フレモント工場で<2018年までに年間50万台の生産体制にする>ことである。(参照:「Excelsior」)

 特に、その中でも<「モデル3」は価格も3万ユーロ(370万円)>という高級電気自動車としては、手頃な価格帯であり、ミドルクラス市場への参入が可能になる車種を作ることをテスラは期待している。それが、販売台数の伸びに繋がると見ている一方で、既に、このモデルは<40万台を受注>している。<その最初の納入は9月に予定されており、2018年中には50万台の納入体制にするのがプランだ>としている。(参照:「El Confidencial」、「El Pais」)

 モデル3が一旦市場に現れれば、それがさらに販売の拡大に繋がるとテスラは見ている。これまでの車種は「モデルS」が8万3000ユーロ(1000万円)、「モデルX」が10万3000ユーロ(1250万円)といった価格で、購入できる消費者の市場が狭い。しかし、モデル3は価格が一般の高級車と比較しても大差がなくなり、電気自動車がこれから市場でさらに普及すると見て、テスラの期待の大きい車種である。

 一方、モデルXも高い価格ではあるが、<今年第一四半期だけで25418台を納品>している。(参照:「La Vanguardia」)

 更に、EVトラックとバスの製造も予定しているという。しかし、現状の生産能力ではトラックとバスの生産まで行けるか疑問もある。テスラの車は高級乗用車で環境に良い電気自動車ということから販売が進展している。しかし、トラックやバスとなると、環境に良い電気自動車という点は魅力があるが、高級トラックや高級バスということでは説得し難い。寧ろ、より実用性があるということが大事である。その上で、価格も従来のトラックやバスと比較して競争力がある必要がある。

◆好調テスラが抱える意外な問題とは?

 そんなテスラだが、今の処、解決できない問題が一つある。

 それは、従業員が出勤退社で利用する車の駐車場のスペースがもうないという問題である。6000人の従業員に対して駐車場は4500台までしかスペースがないのである。その為、従業員の中には勤務開始の時間よりも相当に早い時間帯に出社するとか、二交代制勤務の早組と遅組同士が事前に打ち合わせて前者が退社する時に後者がそのスペースに駐車できるように時間調整するといった方法も従業員同士でやっているそうだ。そうしないと、勤務場所まで相当に長い距離を歩く羽目になるのだそうだ。(参照:「La Vanguardia」)

<文/白石和幸>

しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。

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最終更新:5/13(土) 19:36
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