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北海道「JR特急vs高速バス」の仁義なき戦い

5/13(土) 6:00配信

東洋経済オンライン

 「う―ん、JRがなくなったら困るかどうかと聞かれたら困るんだけど、でも実際には滅多に乗ることはないよね……」。北海道各地で取材をしていると、JR沿線の人たちからは必ずと言っていいほどこんな声を聞かされる。

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 「北海道の人は200kmでも300kmでも自分で運転していくのが当たり前。本数も少ないしお金もかかるJRなんてそうそう乗らないよ」。こんな具合だ。

 ある自治体の関係者は「鉄道がなくなると困るかどうかを住民に聞いても無意味」と断じる。「鉄道があるのかないのかで言えば、あったほうがいいに決まっている。それに、自治体の首長にしても選挙があるわけだから『鉄道をなくしてもいいです』とは簡単には言えない。そういう意味では、誰も北海道の鉄道について本質を考えようとしていないことが、いちばんの問題なんですよ」。

■公共交通ではバスの存在が大きい

 では、本質とは何なのか。もちろん、JR北海道が経営危機に追い込まれるに至った理由・背景は1つではない。ただ、道内の交通という点で見れば大きなライバルの存在があったことは間違いないだろう。

 道東のある自治体関係者は言う。「自家用車もそうですが、公共交通機関という点ではバスの存在が大きい。他の自治体も同じだと思いますが、路線バスや都市間バスには毎年多額の援助を続けており、それで運行本数や運賃面など利便性を維持している状況。ですから、JRを使ってくれと住民にPRするのも難しいんですよ」。

JR特急と高速バス、実際にはどっちが便利?

 札幌から遠く離れた道内の各都市でも、札幌への出張などではJRではなく高速バスを選ぶ人も少なくないという。

 「住民の出張や買い物、札幌の大学に進学した学生さんの帰省はもちろんのこと、われわれ役場の人間も札幌出張ではJRではなくて高速バスを使う人が少なくありません。援助しているからというだけではなく、運行本数も多いし値段も安い。JRさんが苦しいのはわかりますが、現状ではちょっと不便ですよね」(前出の道東の自治体関係者)

 利用者の減少に伴う経営悪化によって運行本数が削減され、さらに利便性が低下して利用者がますます減り、高速バスに乗客を奪われる。まさにそんな悪循環に陥っているというわけだ。

■札幌―函館・室蘭間は拮抗

 では、実際には高速バスとJRの特急列車、どちらが便利なのだろうか。JRの特急が運行されている道内主要都市と札幌の間について、運行本数・価格・所要時間を比較してみよう。
(所要時間はおおよそ。鉄道の運行本数は定期列車のみ、価格は自由席)

■札幌―函館
鉄道:「北斗」「スーパー北斗」
<1日12往復、8310円、3時間30分>
バス:「高速はこだて号」「函館特急ニュースター号」
<1日14往復、4810円、5時間30分>
 札幌―函館間は特急列車も多く、利便性ではバスと遜色ない。高速バスでは夜行便の設定もあり、すみ分けができていると言えそうだ。

■札幌―室蘭
鉄道:「北斗」「スーパー北斗」「すずらん」
<1日18往復、4290円、1時間20分>
バス:「高速はやぶさ号」
<1日14往復、2060円、2時間30分>
 この区間も鉄道の運行本数が多く、所要時間もバスより1時間以上速い。価格差を考慮しても鉄道とバスが拮抗している状況だ。

■札幌―釧路
鉄道:「スーパーおおぞら」
<1日6往復、8850円、4時間>
バス:「スターライト釧路号」「釧路特急ニュースター号」
<1日9往復、5770円、5時間30分>
 バスの運行数が特急列車の本数を上回り、価格差は約3000円。所要時間の差が1時間半であることを考えれば、バス利用のほうが利便性が高いと見ることもできそうだ。

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