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30歳で大企業を飛び出した男が「空きスペース」ビジネスをひらめくまで

5/14(日) 7:00配信

文春オンライン

 緑の芝がまぶしいアメリカのボールパークで、ホームラン競争に挑みたい。誰もいない夜の遊園地でふたりきり、ロマンチックに遊びたい。モノレールを借り切って、空中宴会を催したい……。夢か妄想のような話だが、実はすべて実現可能。貸したいスペースがある人と、借りたい人をマッチングするサービスを手掛けるのは、ベンチャーのスペースマーケットだ。

 2014年1月のサービス開始から3年で、お城から築150年のかやぶき古民家まで取扱数は1万件を超えた。「予想を超える反響」と語るのは、創業者の重松大輔さん。

 早稲田大学在学中に「ネットの時代が来る」と予想していた重松さんは、「インターネットビジネスを学ぼう」とNTT東日本に入社した。しかし、焦燥感が募る職場だった。 「良くも悪くも官僚的な大企業で、何年たっても、まったくやりたいことができそうな気配がありませんでした。いつも、こんなはずじゃない!と思っていましたね」

 もとより組織の歯車になるつもりはなく、2006年、30歳のときに元同期が立ち上げたプロカメラマンの写真をネット販売するベンチャーに参画。当時、まだ社員十数人だった同社で新規事業開発を担い、「商い」の楽しさを初めて知って貪欲に働いた。

 急成長する会社に身を置いているうちに、「自分でもなにかやりたい」という想いがムクムクと湧いてきた。考えた事業のアイデアは100を数えたが、「そもそも、なぜ俺がやる必要があるのか」を考えると、どれも腑に落ちない。

「自分のやりたいこと、できること、得意なことをやろう」と考え続けて、ついに閃(ひらめ)いたのが、空きスペースのマッチングだった。

「写真の仕事をする中で、平日ガラガラになって困っている結婚式場を間近に見ていました。一方で、自分の会社の会議室は土日いつも空いている。お金を払ってもこのスペースを使いたい人がいるはずだと思いました」

 意見を求めるたびに厳しい指摘をしてきたベンチャーキャピタリストの妻も、このアイデアには「一生追いかけられそうなテーマだし、いいんじゃない」と後押しした。

 最初は知人を頼りに貸せるスペースを集めたが、間もなく自ら登録する人が現れ始め、比例するように利用者も右肩上がりで増えていった。

 最近では遊休資産を抱える国や自治体からも声がかかるようになり、すそ野が広がる。

「2020年までに5万スペースを目標にしています。維持費がかかる地方のお城や歴史的建造物などの登録も増やして、それらの施設が自力で稼げるようにしていきたいですね。新国立競技場など五輪関連の施設の活用もできたらいいなと考えています」

しげまつだいすけ/1976年、千葉県生まれ。現在の事業のアイデアを思いつく前は、ウェディングのキュレーションメディアや産後の女性を手厚くケアする産後院などの事業を検討していた。熱心なラグビーファンで、2019年に日本で開催されるラグビーワールドカップを心待ちにしている。

川内 イオ

最終更新:5/14(日) 12:09
文春オンライン

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