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VRがメンタルヘルス関連の治療に有効か

5/14(日) 12:20配信

WIRED.jp

ヴァーチャルリアリティ(VR)を不安障害やPTSDといったメンタルヘルス関連の治療に利用する研究が各地で行われている。これまでの285研究を分析し、VR治療の効果や将来性をまとめた論文が発表された。

VR、人種差別を解決する手段としての可能性

オックスフォード大学の精神科医たちは、英国の国民保健サーヴィス(NHS)とバルセロナ大学の研究者たちと共同で、ヴァーチャルリアリティ(VR)技術を使った精神科治療に関する過去すべての研究結果を分析した。そして、いまだ汎用的ではないものの、特定の分野に関してはVR技術を臨床試験や民間療法として利用できるとした。

今回研究チームがメタ分析(複数の研究の結果を統合した分析)を行ったのは、メンタルヘルス問題とVRに関する研究1,096件。そのうちの285件がデータと、ヘッドセットを使うVRあるいは没入体験的なVRに焦点を当てたものだった。画面しか使わない研究は分析に含まれていない。

285件の研究のうち、86件は精神状態の診察、45件は理論、154件は治療についての考察を行っている。そのなかの192件は不安感、44件は統合失調症、22件は、依存症や薬物中毒といった物質関連障害、18件は摂食障害に関するものだった。研究はすべて2016年末までに発表されたものだ。

論文の主執筆者であるオックスフォード大学のダニエル・フリーマン教授(臨床心理学)は『WIRED』UK版に対し、「全体的に見て、VRにポテンシャルがあることは明らかです」と述べている。

「非常に明確なのは、VRが不安障害に対して有効だということです」と、フリーマンは言う。「特定の状況に恐怖を感じる人々に対してそれが安全であることを感じさせ、不安を軽減することができるのです。優秀なセラピストとの面談と同じくらい効果があります」

論文によると、不安障害のなかで最も研究されている分野は恐怖症だという。たとえば、VRが飛行機恐怖症や高所恐怖症の治療に使われたケースがある。

データ不足のため、恐怖症以外の研究については明確な結論が出ていない。妄想の治療に関する研究は少数(6件)だが、有望な結果が出ているという。薬物乱用に対するVRの研究では、仮想環境によって渇望が引き起こされることが示されているという。

さらに論文では、VRを使って患者に程度の異なる幻覚をあたえることでこの技術を摂食障害の治療に応用できる見込みがあると述べている。一方で、VRとうつ病の関係を調べた研究は2件しか完了していない。結果としてフリーマンは、精神科治療におけるVRの利用は、特定分野においては「より多くの研究が必要」と警告している。

オックスフォードだけでなく、NHSではサウスロンドン&モーズレー国民保健サーヴィス財団がVRの臨床試験を行っており、精神障害や摂食障害、気分障害の患者を診察している。

また米国精神医学会も、VRはいくつかの点で現実世界での治療を上回る効果をもっていると指摘している。たとえば、環境をコントロールしたり、特定のシナリオを繰り返したり、シナリオを各個人に合わせたりといったことだ。VRが自動化と組み合わされれば、治療費が安くなることも示唆されている。

オックスフォード大学のスピンアウト企業であるOxford VRにもかかわっているフリーマンは、VRは個別治療に使える可能性があると話している。「いま実験を行っているのは、仮想セラピストとしての利用です。質問をし、音声認識で答えを聞くことができるもので、利用者は自分の希望に合わせて、VR空間で専用セラピストを設定できます」

MATT BURGESS

最終更新:5/14(日) 12:20
WIRED.jp

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