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ワインバー経営者との秘密の特訓。普段は穏やかな彼の強い言葉に、乱れる女心

5/14(日) 5:20配信

東京カレンダー

やみくもに婚活に励むのは、もう終わり。

ある強かな女たちは、婚活の場をワインスクールへ移した。

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スクールに通うほどワインが好きな男は、高い年収を稼ぎ、洗練されたライフスタイルを送っている者が多いはずだ。

ワインの知識を深めながら、虎視眈々と男性を見定める女たち。

果たして、その思惑は実るのだろうか?


婚活のため”表参道ワインアカデミー”へ入学した美咲。

研二との食事会での撃沈をきっかけに心を入れ替えたものの、真千子の結婚報告を受け、焦りや寂しさと戦っていた。

そんな矢先に、スクールで知り合った芹那に秘められた孤独な本心を知るようになり、美咲は同情を寄せるのだった。

美咲は、ずらりと並ぶワイングラスとにらめっこをしていた。

今日もワインスクールで、ブラインドテイスティングの講義を受けている最中だ。

白ワインと赤ワインを3種ずつグラスに注ぎ、外観や香り、味わいのコメントをシートに書き込みながら、葡萄品種や産地の見当をつける。

今回は、同じ葡萄品種であっても産地によって特徴が異なることを学習した。たとえば代表的な白ワインの葡萄品種・シャルドネも、フランスとアメリカでは気候が違うため、果実味やアルコール度数が変わってくる。

美咲の隣では、芹那がガッツポーズを取っている。

「やったあ、また全問正解!」

そしてすかさず美咲のテイスティングシートを覗き込んだ。

「美咲ちゃんは?何問当たった?今日は簡単やったね」

「…そうだね」

品種も産地もことごとく外してしまった美咲は、テイスティングシートを両手でさりげなく覆いながら、笑ってごまかした。

授業の最後になると、先生が穏やかな口調で話し始めた。

「みなさん、初級コースもあと一ヶ月で終わりですね」

―そっか…このコースももうすぐ終わりなのね。

美咲はしんみりとした気持ちに浸りながら、話に耳を傾けた。

端から勝てないとわかっている勝負に挑むことへの不安

先生は、最終授業の翌週に学校全体での修了式があることを話してくれた。

「修了式では、ブラインドテイスティング大会を開催します。希望者は誰でも参加できるので、よかったらこのクラスからも誰か出場してみませんか?」

そう言って、クラス中をぐるりと見回す。美咲が思わず目を伏せると、隣で芹那が素早く手を挙げた。

「はい!私、出場します」

自信たっぷりな芹那の声に、美咲が驚いて顔をあげた瞬間、先生とばっちり目があった。

「よかったら美咲さんも、どう?」

「いえ、私は…」

慌てて断ろうとしたが、先生は美咲の返事を待たずに言った。

「確か美咲さんは、ワインエキスパート取得も検討しているのよね。ブラインドテイスティングはいずれ乗り越えなくちゃいけないし、ここで一度、挑戦してみたら?」

先生にまっすぐ見つめられ、美咲はしぶしぶ頷いた。

「…はい、わかりました」

そう答えたものの自信は全くない。動揺でおろおろしていると、芹那がつんつんと腕をつついて小声で囁いた。

「美咲ちゃんには負けへんように頑張るからな」

こうして美咲は、ひと月後のテイスティング大会に参加することになったのだった。



学校帰り、美咲はシチリア料理店『トラットリアシチリアーナドンチッチョ』にいた。

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最終更新:5/14(日) 5:20
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