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【法律相談】高齢を理由にタクシーを途中下車 法に触れる?

5/15(月) 16:00配信

NEWS ポストセブン

 飲食業界では「客は店を選べるが、店は客を選べない」としばしば言われるが、タクシーの乗客が、高齢を理由にした途中下車した場合、これは法に触れるのか? 弁護士の竹下正己氏が回答する。

【相談】
 62歳のタクシー運転手です。先日、お客を乗せた際に年齢を訊かれたので答えると、「降りる」といわれました。60歳以上が運転するタクシーには怖くて乗れないというのです。先般の高齢者ドライバーの事故報道などで、乗客が神経質になるのも理解できますが、年齢を理由にした途中下車は罪になりませんか。

【回答】
 タクシーの乗車の契約には、タクシー会社の旅客運送約款の適用があります。運送約款は国土交通大臣の認可を受ける必要がありますが、国交大臣が定めて公示した標準約款と同じか、これに準拠したものになっています。

 標準約款では、途中の下車などについて、直接触れた規定はありませんが、危険品の持ち込みや行き先を告げられないほど泥酔している場合を除き「旅客の運送を引き受けます」と定めています。乗客の求める運送を引き受け、指示に従って運ぶという仕事をする契約です。

 約款では、乗客はメーターに表示された金額の料金を支払う義務があるものとされ、運転に関連する事故などの責任は乗車時から始まり、降車で終わるとされています。つまり、旅客運送の引き受け契約では、乗客には実際に乗っている間の距離に応じたメーター表示の料金の支払い義務しか発生しませんし、逆にいえば、運転手の責任もそこまでということです。

 ある目的地まで運ぶ仕事を引き受けるのは、民法でいう請負契約です。請負契約では「請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる」と定められています。

 要するに、乗車時に告げられた目的地までの運送引き受け契約が成立したとしても、目的地到達前に気が変わった乗客は途中下車ができるのです。その場合、メーター表示の下車地点までの料金を支払えば、損害を賠償することになりますので、問題なく乗客は下車でき、運転手も特に損をしたことにはなりません。

 結果的には、目的地までの約束が成立していることを理由にして、この乗客に対し、法によって制裁することはできないということです。しかし、年齢だけを理由にする差別が不合理となる場合もあり、それが遺憾なことには共感します。

【弁護士プロフィール】竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。

※週刊ポスト2017年5月26日号