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UターンにⅠターン、移住ブームで移住者お宅直撃「ぶっちゃけ、どうですか?」

5/15(月) 9:00配信

週刊女性PRIME

シングルマザー、バリキャリから自給自足へ

【Iターン】東京⇒大分/武井啓江さん
●家族構成=娘(小4) ●住まい=一戸建て空き家購入(約400万円)+改修費 ●支援制度=空き家バンク引っ越し補助10万円、住宅改修費50万円、創業支援150万円 ●移住先の決め手=国東の人柄、自治体の支援制度 ●きっかけ=36歳で経験した沖縄ひとり移住で「お金≠幸せ」を体感。娘にも同じ経験をさせたかったから ●仕事=自営で洋裁業+ゲストハウス(民宿) ●最近の楽しみ=暮らしの仕事全般 ●移住アドバイス=自分を偽らず、気持ちに素直に生きる「母親が人生を楽しんでいないと、娘も人生を楽しく生きられる人になれない。私は身体がウキッとしないことはしないと決めたんです」

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 大分県国東市。田畑と山に囲まれたのどかな地に、4月、念願のゲストハウス『ノルブリンカ』をオープンしたばかりの武井啓江さんはこう話す。

 昨年春、小学3年生になる娘と、東京から移住したシングルマザー。お昼に近くの海で娘とお弁当を食べたり、ご近所さんとバーベキューをしたり。「孤独とは無縁の日々」と明るく言い放つ。

 東京都国分寺市で生まれ、母の厳しい教育を受けて育った。名門大学卒業の高学歴で、企業のマーケティングや企画担当として活躍。海外事業にも携わり、家政婦を雇ったり、ポルシェに乗るような生活を送っていた。

「当時は、お財布に30万円入っていないと不安でね。飽くなき欲でしたね」

 転機が訪れたのは36歳。毎日働き詰めで、心身ともにボロボロ。人間関係のこじれも重なり、退職を決意した。

「しばらく悶々と自分を見つめ直しました。そこでやっと親とは価値観が違うことを理解した。自分の人生を生きていなかったのね。気づくのが遅いけど、ピンチをチャンスに変えてやろうと思った」

 派遣でお金を貯め、沖縄の西表島へ。1か月滞在のつもりが、久米島で地元男性と1年生活することに。定職には就かず、貯金を切り崩しての狩猟採集生活。薬草を摘み、野菜は近所にもらい、満月の夜は海の潮だまりに出かけ、取り残された魚やエビを銛で突いた。

「貧乏でしたね。お財布には10円玉数枚。缶ジュースも買えなかった。(笑)でもね、人生でいちばん楽しかった。“人間は自然の恵みで生かされているんだ”って実感したのは初めてで、お金で買えない絶対的な幸福感があった」

 1度は東京に戻り、その後結婚、出産と新たな転機を迎えるも、1年半で離婚を決意。

「“いやいやあなたのために働いている”って姿だけは娘に見せたくなくて、好きな洋裁業を自営で6年やりました。でも、都会での経済的な自立は難しかった。それで、いつか娘にも経験させたい、と温めてきた移住に踏み切った」

 西日本の候補地を数か所回り、最後に国東市を選んだ。安い空き家があったこと、親切な人との出会いが多かったことが印象に残ったからだ。

 築80年の家を購入。元所有者の家財の片づけや改修作業に時間はかかったが、畑と山の一部も手に入れた。

 聞けば、表の広いデッキも、木材の温もりあふれるセンスのいいキッチンも、近所の大工さんと共同で作ったもの。「トンテンカンテン忙しかったわ」と、この1年を振り返り穏やかで上品な雰囲気のなかにたくましさをのぞかせる。

 ご近所に恵まれ、自治会にも入ったことで、地域には難なく溶け込めた。雨の日には「洗濯物、中に入れておいたわ」とご近所さん。そんな距離感や好意に感謝する毎日だ。

 人付き合いのコツは「本音を伝えること」だという。

 例えば、畑のやり方ひとつとっても地元の人とは考え方が違う。「肥料まけばいいのに!」と外から言われても、「私、自然農法をやってみたいんですよ~!」ときっぱり。「ま~た変なことしとるわ!」とたびたび言われるが、「そうでしょ? (笑)」なんて返しながら、そのやりとりをお互いに楽しんでいる。

 最初は田舎での遊び方がわからなかった娘も、今は山に秘密基地を作ったり、畑に大きな落とし穴を掘ったり。近所のおじいちゃんにも可愛がられ「タケノコ掘るぞ」「魚釣るぞ」とよく誘ってもらう。

 武井さんは、ゲストハウスにこんな思いを込めている。

「都会で疲れた人に国東の暮らしを体験しながら、ゆっくり考える時間を提供したい。それに、娘がいつか出て行っても、お客さんがいれば私も寂しくないでしょ?」

 母としての自立、娘への故郷づくり、自分らしい暮らしの実現。その第一歩を踏み出したばかりの彼女の表情は、晴ればれとしていた。

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最終更新:5/15(月) 9:00
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