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耕作放棄地を宝に変える!お茶が持つ1000%の可能性

5/15(月) 11:50配信

Wedge

 奈良県の大和高原で30カ所、12ヘクタールの茶畑を管理する健一自然農園。耕作放棄された茶畑を積極的に引き受け、自然栽培に取り組んできた。その夢は奈良でつくったお茶栽培のモデルを全国、そして世界に広げることだ。

ジャングルだった耕作放棄地を宝に

 奈良県宇陀市。傾斜のきつい林道を上がっていった標高450メートルほどの山腹に70アールの茶畑が広がっている。傾斜のきつい斜面に茶の若木が等間隔に広がる。この茶畑、5年間人の手が入らず荒れ放題になっていたのを復活させたものだ。

 「土地を見たときに農薬飛散もないし、荒れているために逆に土が肥えていて、ここはいいと直感しました。耕作放棄地だけど、自然栽培ができる。荷物だと思っているところにこそ宝はある」

 この場所でお茶の自然栽培をしている健一自然農園代表の伊川健一さん(35)はこう言葉に力を込める。

 借りた当時はお茶の木が3メートルほどの高さにもなり、茶畑だったとは到底想像できない荒れ具合だったそうだ。今でも当時の木を部分的に残しており、背の高い木々が絡み合って密生するその様は、まるでジャングルのよう。ここで栽培しているのは三年晩茶。3年間、途中で剪定をせずに成長させ、冬に木を根元から刈り取り薪で焙煎するというものだ。

 この三年晩茶、耕作放棄地の解消だけにとどまらない効果を生んでいる。自然栽培の宿命の夏場の雑草との戦いでは、地元のお年寄りに作業してもらい、働く場を提供している。冬に刈り取りと焙煎を行うことで、通年雇用も実現した。また、化石燃料でなく、奈良県内の山林で出た間伐材の薪で焙煎することで、二酸化炭素排出を抑制し、かつ林業を支えてもいる。三年晩茶には、「農家が社会課題を解決する時代にしたい」という伊川さんの思いがぎゅっと詰まっているのだ。

モデルを全国へ

 かつてここが「ジャングル」だったころの名残のお茶の木も、有効活用している。

 「種と花を取るんです。化粧品の原料にします」

 通常のお茶栽培のように肥料を多く与えていれば、それほど多くの花が咲いたり実がなったりすることはない。加えて花と実に木のエネルギーが奪われることを嫌って早めに摘み取ってしまうため、花が咲いているのを見かけることはない。対して、肥料に頼らない自然栽培の茶畑では花も実もたくさん採れるのだという。8月末から11月初めにかけて収穫する花は合計で300キロほど。サポニンという老化を防ぐ成分が含まれるため、化粧品会社のクレコス(奈良市)が使っている。種に含まれるオレイン酸は、オリーブオイルにも含まれる肌に潤いを与える成分。種からとった油は化粧品のベースオイルになるため、こちらの需要も大きい。

 「種も花もものすごく需要があるのに、国内で量が取れない。このお茶の作り方をしたら、お茶の種や花が取れてプラスの収入になりますよというのを、伝えていきたい。茶畑は全国に1万ヘクタールあるので、全国の耕作放棄された茶畑のあるところにこうしたモデルを持って行ける」

 伊川さんは耕作放棄地を使った栽培普及の夢を熱く語る。

 ところで、お茶の産地といえば、ぱっと思いつくのは宇治、静岡など。なぜそうした産地でなく、奈良というあまり全国的に有名でない産地から、耕作放棄地を使った栽培という新しい手法が生まれてきたのか。

 「奈良は耕作放棄地先進県なんです」と伊川さん。

 というのも、奈良で収穫されたお茶は一般的に京都に運ばれ、宇治茶として販売されることになる。独自のブランドで売れない分買いたたかれる結果になり、かつ、お茶の消費の低迷の影響を真っ先に受けることになったのだ。

 「下請け工場のように、先に仕事がなくなってしまう。なんとかせなということで、こういう話題が出てくる。大産地では、耕作放棄地はそれほど大きな問題になっていなかったから、今焦っていて、話をしてほしいと僕が呼ばれたりしています」

 実際、この栽培方法の水平展開はすでに始まっている。昨年12月には、岐阜県揖斐川町で地元農家と共同出資して農事組合法人を立ち上げた。大和高原で始めたモデルを地域に合うようにカスタマイズしつつ、活性化に役立てていく。

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最終更新:5/15(月) 11:50
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