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仏大統領選のハッキング騒動は、まだロシアのせいだと決まったわけではない

5/15(月) 17:30配信

WIRED.jp

フランスのエマニュエル・マクロン大統領の選挙陣営がハッキングを受け、決選投票の2日前に大量のメールが流出した。外交を有利に進めたいロシアが政府傘下のハッカー集団を動かし、2016年の米大統領選をはじめ、西欧諸国の選挙に介入しているとささやかれている。しかし、ロシアの一挙一動に気を取られていると、思わぬところで足をすくわれる。

ウクライナの「ハッキングによる大規模停電」で強まる、サイバー戦争への懸念

フランスで史上最年少の大統領が誕生した決戦投票の2日前、事件は起きた。5月5日、エマニュエル・マクロン大統領の率いる政治組織「前進」から9ギガバイト分のメールがインターネット上に流出したのだ。マクロン陣営は数時間のうちに声明を発表し、「大統領選の民主的なプロセスを妨害する意図を持ったハッカーによるものだ」と非難した。

“怠惰な”サイバーセキュリティアナリストとメディアは、ひじ掛け椅子に座ったまま、ろくに調べもせずに「ロシアの仕業に違いない」と決めつけた。被害にあったのが親ロ派候補のライバルで、メールの流出によって不利な状況に陥る危険がある──この構図が米大統領選を彷彿とさせたからだ。

ロシアに悪役を押し付ける代償

2016年の夏から秋にかけて、対ロ外交で強硬姿勢をとっていたヒラリー・クリントン前国務長官の所属する民主党は、次々とハッキングを受けた。陣営のメールや個人情報などは、内部告発サイト「ウィキリークス」を通じて流出。ドナルド・トランプ大統領は当時、その内容をもとに環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に対するヒラリーの態度が一貫してないと批判するなどし、攻勢を強めた。

この事件の前から、米国のあらゆるサイバーセキュリティー企業は、大統領選にまつわるハッキングについて、ロシア政府とつながりの疑われるハッカー集団「ファンシーベア」の関与を指摘していた。そして、ついに米国の情報機関を統括する国家情報長官室も2017年1月、これらのサイバー攻撃はプーチン大統領が指示したと結論づける報告書を公表した。

しかし、今回のマクロン陣営へのハッキングでは、今のところロシアを犯人だと決定づける証拠はない。手がかりが少ないうちに結論を出すのは危険を伴う。その他の国や非政府系のハッカー集団が暗躍する隙を作ることになるからだ。なにより、米大統領選へ厚かましく干渉してきたときのように、確固たる証拠があって抗議する場合、その声の威厳が損なわれることになりかねない。

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最終更新:5/15(月) 17:30
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