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小川航基、「エース」として挑むU-20W杯。期待のFWに磐田・名波監督が与えるノルマ

5/15(月) 11:49配信

フットボールチャンネル

 5月20日に開幕するFIFA U-20 ワールドカップ韓国2017。グループDに入ったU-20日本代表は21日に南アフリカとの初戦を迎える。今大会、日本のエースとして期待されるのが小川航基だ。今シーズンから所属クラブのジュビロ磐田で存在感を強めているストライカーは、世界の舞台でどのような姿を見せるのだろうか。(取材・文:青木務)

初戦の相手は南アフリカ 【U-20W杯】グループステージ組み合わせ

●名波監督が指摘する、柳沢や高原との違い

 U-20日本代表のエースとして期待される小川航基だが、彼の最大の魅力とは何だろうか。

「ゴールバリエーションが豊富」

 名波浩監督は新星の能力を認めているが、その得点感覚は特筆すべきだろう。右足、左足、頭と小川から放たれるシュートは常に可能性を感じさせる。こぼれ球に反応するための準備動作も洗練されてきた。今シーズン、JリーグYBCルヴァンカップ グループステージ第3節・FC東京戦でハットトリックを記録したことからもわかるように、本格的に公式戦に絡む中で、本人が渇望し続けた『結果』も出ている。

 リーグ戦でのスタメン出場はまだないが、第9節のコンサドーレ札幌戦では前半途中に投入されると、川又堅碁と2トップを組んだ。堅い守備を持つ札幌の3バックの陣形を広げる、もしくは下げさせるといったプレーを実行。相手に脅威を与え、チームに流れを引き寄せた。84分には、巧みにボールをキープした川又からラストパスを受けると、右足を一閃。逆転ゴールが決まったかに思われたが、シュートは惜しくもクロスバーに嫌われた。

「柳沢(敦)や高原(直泰)と違うのは、まだボックスの中で力んでしまうこと」

 名波監督はこのシーンについて、小川と同じく高卒でプロの世界に飛び込んだFWを引き合いに出してこう話した。W杯にも出場した日本サッカー界のレジェンドとの差は小さくないが、そうした面々との比較自体に、背番号18への期待を感じさせる。

 確かにフィニッシュは力が入り過ぎたが、この攻撃は小川のポストプレーから始まっていた。味方と絡みながら『仕上げの局面』を生み出したことには価値があるだろう。

 高卒2年目のストライカーは磐田の戦力として稼働しつつある。そして、公式戦に出場することで改めて見えてきたものもあるという。

●Jリーグの試合に出場し、やるべきことが整理された

 自ら得点を奪うことを最重要任務としている小川だが、その他にも意識的に取り組んでいる役割がある。それは、守備面での貢献と攻撃の起点になることだ。中でも後者については、真剣勝負の経験を積むことでやるべきプレーが頭の中で整理できるようになった。

「3つを意識している中で、色々なCBの選手と対戦してみて、それぞれタイプが違う。起点を作ると一言で言っても、中盤まで下りてボールを受けるのか、高い位置でもらうのかという大きく分けて2つのポイントがあると思う。相手CBの特徴に合わせてプレーできるようになってきた。

 ポゼッションができて頭脳派という感じのタイプは前にはあまり強くないと思うし、フィジカル系なら裏への対応は苦手なのかなと。両方兼ね備えている選手は、森重(真人)選手など日本代表クラスだと思う」

 CFがいかにボールを呼び込めるかは、攻撃を進める上で大きな要素となる。今の小川はそうしたプレーをスムーズにこなし、その結果として余裕が生まれ、最も得意とするフィニッシュに持ち込めるようになった。

●最大の魅力は強心臓。ヤジを聞きに相手サポーターの近くへ

 小川は現在、ルヴァンカップで4ゴールを記録し得点ランキングトップに立っている。第4節・柏レイソル戦では思うようなパフォーマンスを見せられなかったが、86分に逆転弾となるPKを決めた。チームは大会2連敗と苦しいスタートを切ったが、柏を下して2連勝とし、決勝トーナメント進出に望みを繋いだ。

 19歳はペナルティスポットにボールを置くと、これをど真ん中に蹴り込んだ。迷いなど微塵もなかった。「プレッシャーは感じない方」と話したことがあるが、土壇場の状況でも気持ちが揺れ動かない。彼にはいくつかの武器があるが、それらを最大限まで高める強心臓こそ、小川が持つ最大の魅力ではないだろうか。

 こんなエピソードがある。

 この一戦の舞台は柏のホーム、日立柏サッカー場。ゴールデンウィークということもあって、10,357人が詰めかけた。このスタジアムは陸上トラックがないためスタンドとピッチの距離が非常に近く、臨場感という点で国内屈指。サポーターの声がダイレクトに選手の耳へ届く環境だ。ホームチームにとってはこれ以上ないほど力となる。当然のことだが、アウェイに乗り込んだ磐田の選手たちにとっては声援ばかりが聞こえるわけではなかった。

 そうした環境の中、小川はあえてゴール脇に置かれた給水ボトルのところへ足を運び、喉を潤しながら“ヤジ”に耳を傾けたという。

「スタンドとの距離が近い方がより気持ちが入る。この前の柏戦はゴール横にある水を飲みに行った時にけっこうヤジられました(笑)。でも、それが嬉しいというか、『やってやろう』という気持ちになる。なので、わざと水を飲みに行ったりもしましたね」

●磐田・名波監督が与えているミッション

 大胆で、いい意味で怖いもの知らずのメンタリティは、世界と伍して戦う上で欠かせない。気持ちで負けていては、試合が始まる前に勝負は決まってしまう。

 U-20W杯では、グループステージで南アフリカ、ウルグアイ、イタリアと対戦する。いずれも一筋縄ではいかない相手のはずで、すでに名前が知られているような選手もいる。劣勢を強いられることもあるだろう。だが、そんな時でも小川は自信たっぷりに相手ディフェンダーとの駆け引きを楽しみ、自らのゴールのため、何よりチームの勝利のため全身全霊を注ぐはずだ。

 名波監督は小川に対し1試合1得点、シュート5本というミッションを与えている。これを遂行できるかでU-20日本代表の結果も変わってくるが、磐田の指揮官は選手にできないことを押し付けたりはしない。小川なら、これをノルマにプレーできると信じているのだ。

「世界に行って戦う上で、中途半端なチームとやっても何も面白くない。グループの相手はレベルが高いし、チームとして、個人としてどれくらいできるのか。それがすごく楽しみだし、ワクワクした気持ちしかない」

 小川の表情に、不安の色など一切見えない。彼の目には、大会で活躍する日本と自身の姿が鮮明に浮かんでいる。

(取材・文:青木務)

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