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四国みぎした鉄道紀行

5/16(火) 12:00配信

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 四国の地図で「右下」にあたる徳島県東南部の海岸線には、徳島からJR牟岐線とそれに接続する第三セクターの阿佐海岸鉄道が延びている。「四国みぎしたGOGOフリーきっぷ」という室戸岬をまわって高知に至るルート(と言っても全区間を鉄道が通っているわけではない)の周遊きっぷもあるので、訪れる人もいるのだろう。残念ながら四国ではこのあたりだけは行ったことがなかったので、先日、四国へ行った時に、時間をやりくりして、初めて牟岐線に乗ってみることにした。と言っても、高知まで行く時間はなかったので、前記のきっぷを使ったわけではない。

 徳島駅から牟岐線の特急「むろと1号」に乗る。徳島県は47都道府県中、唯一鉄道電化ゼロの県。電車の全く走っていない貴重な地域であり、「むろと1号」も当然ディーゼルカーである。それも2両編成。特急らしからぬ列車だ。何も分からなかったので、指定券を取っておいたのだが、指定席は、1号車の前方4列、通路をはさんで2人掛けのシートが並んでいるので合計18席だけである。そのほかは自由席なので、区別するため青い枕カバーに白地で指定席と書いてあった。

 時季にもよるのだろうが、4月下旬の連休前の平日だったせいか、車内はそれほど混んでいなかった。自由席でも楽々座れたようだ。列車は定時に発車し、徳島市街を抜け、いくつも川を渡って南へ進む。ローカル線とは言え、かなりのスピードで走り、一応特急であるから乗り心地も悪くない。牟岐線には「阿波室戸シーサイドライン」という愛称が付いているので、さぞかし海の車窓がきれいなのだと思い、進行方向窓側を指定したのだが、一向に海は見えない。南小松島、羽ノ浦、阿南と停まって行っても、見えるのは田園風景ばかり。阿南でかなり降り、その先は、海どころか山岳地帯に迷い込む始末だ。

 徳島を出て45分、由岐を発車すると、ようやく海が見えてきた。田井ノ浜という海水浴場があるところで、夏には臨時の駅も開設される。岬や島も見え、なかなかの眺めである。けれども、その先は再び海とは縁がなくなり、ウミガメで有名な日和佐に停まると、もう特急の終点牟岐であった。

 

 牟岐のホームの反対側には1両だけのローカル列車海部行きが停まっていた。慌ただしく乗り継ぐと、すぐに発車。各駅停車とは言え、新しいディーゼルカーだった。ほどほどに乗っていて、北海道のローカル線のような地元から見捨てられたような寂しさがないのは救いだ。意外にも、牟岐を出てからは海岸線に沿って走り、見ごたえのある車窓が続く。その一方で、雲がさらに増え、暗く空模様があやしくなってきた。

 牟岐からのんびりと3つの駅に停まって15分程で海部着。ここからは阿佐海岸鉄道に乗り継ぐのだが、ほかの列車は影も形もない。不安になり、運転士に聞いてみると、反対側のホームで待つようにとのこと。同じ列車から降りた数人の後を追い、ホームの端にある踏切を渡ると、もう一本ホームがあった。線路がさらに延びているので、先の方を見るとトンネルがある。しばらくすると、そのトンネルから見慣れない1両だけのディーゼルカーが飛び出してきて、乗ってきたJRの車両と並ぶように停車した。これが阿佐海岸鉄道の列車だった。

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