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「老化を防ぐクスリ」が実現する可能性が見えてきた

5/16(火) 12:30配信

WIRED.jp

アンチエイジング治療の研究において、2つの大きな前進が見られた。ひとつは、老化によるDNAの損傷を修復する治療法の発見。もうひとつは、年老いた細胞を自死へと導くメカニズムの発見だ。これらの研究が進めば、「老化を防ぐクスリ」が実現する可能性が見えてくる。

遺伝子治療で20歳若返った女性

アンチエイジング治療において、一度に2つの重要な前進があった。1つ目は、デイヴィッド・シンクレア率いるオーストラリアのニューサウスウェールズ大学の研究チームの成果だ。彼らは、『サイエンス』誌で語っているように、細胞がDNAに引き起こされた損傷──まさに老化や放射線によって引き起こされるもの──を修復する分子プロセスを特定した。

2つ目は、オランダのエラスムス大学医療センターの科学者グループの研究だ。こちらは老化した細胞を自死(アポトーシス)へと導く治療法を開発し、マウスでの実験で成功を収めた。学術誌『セル』で発表された。

修復のメカニズム

『サイエンス』で発表された研究から見てみよう。研究の著者たちは、マウスを使って一連の実験を行い、細胞が老化や放射線によって損傷を受けたDNAを修復する分子プロセスの、決定的な変化を特定した。

体細胞は生来、DNAを修復する能力をもっている。たとえば、わたしたちが太陽に晒されるたびに修復は行われている。このような機能は加齢とともに衰える。だがシンクレアのチームは、代謝物質「Nad+」が全修復プロセスにおいて重要な役割を担っていることを発見した。

Nad+の前駆体を用いた治療を行ったマウスは、放射線被曝や老化によって引き起こされるDNA損傷を修復する際、ほかのマウスと比べて高い修復能力をもつことを示した。

シンクレアは言う。「年老いたマウスの細胞は、治療からわずか1週間で、若いマウスの細胞とほとんど区別がつかなくなりました。わたしたちは、効果的で、安全なアンチエイジング薬の実現に近づいていると思います。もし今後の実験がうまくいけば、この薬は5年以内に市場に出る可能性もあります」

NASAもこの研究に関心を示している。宇宙の有害な放射線から宇宙飛行士たちを守ることが必要となる、将来の火星有人ミッションを視野に入れてのことだ。

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最終更新:5/16(火) 12:30
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