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韓国発30年W杯4ヶ国共催案の非現実性。将来構想異なる各国。日本の目標は単独開催

5/17(水) 11:25配信

フットボールチャンネル

 2030年に開催される第24回FIFAワールドカップを、日本、韓国、中国、北朝鮮の4ヶ国の共催で誘致したいとする声が再びあがった。大韓サッカー協会(KFA)の鄭夢奎(チョン・モンギュ)会長が、突然表明した今年3月に続いて14日にも仰天構想に言及。出場国数が「48」に増え、国際サッカー連盟(FIFA)のジャンニ・インファンティーノ会長も近隣国による共催を推奨する流れを受けての発言だが、4ヶ国が置かれた状況を整理していくと、絵に描いた餅で終わる可能性が高い。(取材・文・藤江直人)

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●韓国協会会長の持論。東アジア4ヶ国によるW杯共催構想

 大韓サッカー協会(KFA)の会長で、国際サッカー連盟(FIFA)の理事にも就任したばかりの鄭夢奎(チョン・モンギュ)氏が、2030年の第24回FIFAワールドカップを韓国、日本、中国、北朝鮮の4ヶ国による共催で開催したい意向をあらためて示した。

 韓国紙『コリア・ヘラルド』などの報道によると、U-20韓国代表と同セネガル代表が高陽総合運動場で対戦した14日の国際親善試合を視察した鄭会長は、今年3月に突然表明した東アジアの4ヶ国による共催構想に再び言及。それぞれの国が緊密に話し合えば、誘致できる可能性は高いとする持論を展開したという。

 FIFAは今年1月、2026年の第23回大会から、ワールドカップの出場国数を現行の「32」から「48」に拡大することを正式に決定。3ヶ国ずつの16グループに分かれて1次リーグを戦い、上位2位までの計32ヶ国がノックアウト方式による決勝トーナメントに臨む大会方式が採られることも決まっている。

 今月9日にバーレーンの首都マナーマで開催されたFIFA理事会では、2026年大会における大陸別の出場枠拡大案も承認された。アジアは現行の「4.5枠」から「8枠」への拡大が確約され、続く2030年大会でもこの数字が踏襲される見通しになっている。

 他の大陸の出場枠はヨーロッパが「13」から「16」、南米が「4.5」から「6」、アフリカが「5」から「9」、北中米カリブ海が「3.5」から「6」、オセアニアが「0.5」から「1」へそれぞれ拡大。残り2枠はヨーロッパを除く5大陸に、開催国が所属する大陸の1チームを合わせた6チームによるプレーオフで争われる。

 必然的に本大会における総試合数も、現行の「64」から「80」に増える。開催スタジアムの収容人員やインフラ設備などの規格が厳格に定められていることから、2026年以降のワールドカップに関して、FIFAのジャンニ・インファンティーノ会長は複数国による共同開催を奨励する意向を示していた。

●W杯100周年となる2030年大会。第1回開催国が進める準備

 具体的には「2つから4つの国で、なおかつ近隣国で開催するのが理想的」とまで言及。実際、2026年大会に関しては4月10日、北中米カリブ海サッカー連盟(CONCACAF)所属のアメリカ合衆国、カナダ、メキシコが共催で立候補することを正式に表明している。

 過去のワールドカップで共催となったケースは、日本と韓国による2002年大会の一度だけしかない。出場国数の拡大決定とともに共催に対するハードルは下がっているものの、鄭会長が描く構想がそのまま具現化されるのかと問われれば、現実的には難しいと言わざるを得ない。

 まずネックになるのがFIFAの規定だ。ワールドカップの開催立候補国について、FIFAは2009年の段階で、当該大会に先立つ2大会の開催国と同一の大陸連盟に所属する国は立候補できない、という旨の規定を定めている。

 すでに2022年大会は、中東の地・カタールで初めて開催されることが決まっている。このため、アジアサッカー連盟(AFC)に加盟する国は、2026年及び2030年のワールドカップ開催国に立候補することは不可能となっている。

 もっとも、この規定に関してFIFAが改正に動くのでは、という動きを今年5月になって欧米のメディアが報じ始めた。あくまでも「状況が必要となれば」という前提つきながら、直近2大会とされているところを直近1大会にする、というものだ。

 実際に改正されれば、2030年大会にはAFC加盟国も立候補できることになる。FIFA理事に就任したことで、サッカー界の総本山内の“内情”にも精通しはじめた鄭会長が、そうした動きを把握したうえで今回の発言に再び至った可能性は決してゼロではないだろう。

 一方で2030年大会に関しては、100年前の1930年に第1回大会を開催し、優勝国にもなったウルグアイが、隣国のアルゼンチンとの共催で立候補する準備を早い段階から進めている。実際に立候補に至れば、100周年を意味する「センテナリオ」として、大きな意義を伴うことができる。

 しかし、この共催計画は不確定要素が多い。ウルグアイで開催されれば100年ぶりとなるが、当時と比べてはるかにハイレベルな規模と設備を備えたスタジアムが求められる。国内総生産(GDP)がアルゼンチンの10分の1以下という経済力でも、ウルグアイの開催能力には疑問符がつく。

●将来戦略がバラバラの日中韓。日本が目標に据えるのは単独開催

 それでも東アジアの4ヶ国による共催に懐疑的な視線を送らざるを得ないのは、北朝鮮を除く3ヶ国が描く将来戦略がバラバラだからだ。たとえば中国はサッカー好きとされる習近平国家主席の大号令のもと、中国サッカー全体の徹底強化に国策として取り組んでいる。

 著名な外国人選手のいわゆる「爆買い」には、クラブチームを強化することで自国の選手を育て、ワールドカップの常連国となり、ごく近い将来にサッカー界最大の祭典を単独で招致する思惑が込められている。将来を担う子どもたちを対象とした、グラスルーツの強化にもすでにスタートしている。

 今月に入って「2034年大会の招致に動くのでは」と報じられたが、中国側はこれを否定した。もっとも、否定の対象は「2034年大会招致に関する報告書を正式にまとめた」とする報道であり、将来的な招致そのものではない。単独招致へ手を挙げるタイミングを、見計らっているとするのが妥当だろう。

 日本も2度目のワールドカップ開催は単独で、という目標を掲げている。日本サッカー協会(JFA)が2005年1月に発表した『JFA2005年宣言』のなかで記した「JFAの約束2050」で、2050年までにワールドカップを日本で開催し、日本が優勝することを長期的な目標としてすえている。

 10年以上が経過したいま現在も、もちろんスタンスは変わらない。だからこそ、今年3月に打ち上げられた鄭会長の4ヶ国共催構想に、JFAの田嶋幸三会長は「寝耳に水で驚いている。聞いたこともないし、相談されたことも、したこともない」と困惑気味のコメントを残している。

●絵に描いた餅に終わる可能性が極めて高いプラン

 そして、最大の障壁となるのが、東アジア地域における政治的及び外交的な関係だ。安倍政権になってからの日本は、韓国及び中国と決して良好な状態にあるとは言えない。何よりも金正恩体制のもとで核実験やミサイル発射を繰り返す北朝鮮は、日本を含めた近隣諸国と常に緊張状態を作り出している。

 韓国国内の報道によれば、鄭会長は4ヶ国による共催が実現すれば、東アジア地域の安定に寄与できると考えているという。要は「平和」の二文字を招致への大義名分とする思惑が伝わってくるが、目標の異なる各国、特に北朝鮮を話し合いのテーブルに就かせるのは荒唐無稽な話と言っていい。

 2030年大会のワールドカップ開催国は、2026年大会のそれとセットで、2020年5月に決まる予定になっている。それまでに政治的及び外交的な緊張を取り除き、4ヶ国による共催で合意に至り、具体的な計画を練ったうえで立候補するには、3年という時間はあまりにも短すぎる。

 ウルグアイとアルゼンチンの共催計画も、ウルグアイの民間人が最初に声をあげる形で20世紀の末から草の根的に進められ、10年前から両国サッカー協会が、6年前からは両国の政府が本格的に加わった。こうした差を見ても、鄭会長のプランは絵に描いた餅に終わる可能性が極めて高い。

(文:藤江直人)

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