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「残業規制はむしろ迷惑」と考える人々の事情

東洋経済オンライン 5/17(水) 8:00配信

■残業規制を喜んでいる人ばかりではない

「働き方改革」が進められる中、労働時間の上限規制に関する法案が現在議論されており、ニュースでも目にすることが多くなってきました。労働時間規制の内容は、先日連合と経団連が合意した、月間残業最大100時間以内などの内容をベースに議論が進んでいくと思われます。ただ、ニュースなどを見るにつれ、議論に欠けている部分があると思いましたので、今日はその点について触れたいと思います。残業規制をされたら「困る人々」の話です。

 といっても、極限まで従業員に長時間労働を強いるいわゆる「ブラック企業」の話ではありません。従業員側の目線から見て、「困る人々」がいるという現実のお話です。なお、前提として、あくまで健康管理やワークライフバランスの向上のために労働時間の上限規制をすること自体が無意味と主張するつもりはありません。ただ、労働時間規制がなされるのがほぼ確実であり、国民的な議論がなされている今だからこそ、長時間労働が抱えているさまざまな側面に光を当てないと、実態を無視した議論になってしまいます。そこで、あえてこの点をテーマとして取り上げました。

 では、具体的に労働時間規制がなされることにより「困る人々」とはどのような人々でしょうか。

「残業をしたい」と考えている人もいる?

 困る人① 生活残業代をアテにしていた人々

 「生活残業」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。本来、残業とは会社の指示で行うものであり、労働者にとっても、「長時間労働は良くないことだ」という前提で現在の上限規制議論が行われています。

 しかし、これに反する実態もあり、「残業をしたい」と考えている人もいることが現実です。たとえば、「先月は飲み会でおカネを使いすぎたな」「来月は入り用だから今月頑張ろう」など、普段より給与を多くもらいたい、という欲求から、自主的に残業を多く行う例が少なからず見受けられるのです。

 つまり、労働時間を減らされると残業代も減ってしまうので困る、ということです。現に、社内の労働組合からも、「今後労働時間削減により減った月給の代替として増額する手当などを考えてほしい」などと交渉要求を受けている例もあります。

■日中にスイッチが入らない「5時から男」

 また、本来残業をする必要がないのにダラダラと居残って残業をする「ダラダラ残業」という例も見受けられます。日中は仕事をあまり進捗させず、夕方5時・6時頃から突然スイッチが入ったかのように仕事をするタイプです。実際に、会社側が無用な残業はしないようアナウンスしていたケースや、具体的に「帰れ」と上司から言われたケースでも、これを無視して残業を続けていた例もあります。

 もちろん、ダラダラ残業でも、残業代を意識して行っているケースとそうでないケースもあり、一概に指摘することはできません(家庭不和で家に居たくないから会社に残るというケースもあります)。ただ、少なくとも、労働時間規制がなされる以上、会社としてはますますこうしたダラダラ残業に対しても対処する必要があります。

 「長時間労働は労働者にとって悪いことだから規制しよう」という議論だけでは実態に即していないことが、この点を見てもわかるかと思います。長時間労働=会社が悪というケースだけではないのです。

 困る人② 自発的にクオリティにこだわりたい人

 次に、職人タイプの労働者も困る人がいるでしょう。プレゼン資料やシステム開発、ムービーにプログラム、企画書やエクセル資料、内容は何でも良いですが、「会社から求められる以上に細部にまでこだわりを見せる人」はいませんか? 

 このような人々も、労働時間規制によって大いに影響を受けます。細部にわたる「こだわり」を捨てて、最低限のクオリティで妥協せざるをえない場面が増えてくると思います。このようなケースのほとんどは、会社が望んでいなくても、本人が望んで、自主的に残業を行っています。これを一律に規制するのが本当に良いことなのか、改めて考えておく必要があるでしょう。職人タイプの方々は、仕事に対する喜びが失われると、モチベーションが下がる傾向にありますので、労働時間規制により、その後のパフォーマンスが悪化する場合があります。

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最終更新:5/17(水) 8:00

東洋経済オンライン