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“金融庁史上最強の長官”が金融業界に異例の痛烈批判浴びせた

5/18(木) 17:00配信

マネーポストWEB

 フランス新大統領の誕生を皮切りに、長らく停滞していた株価が動き出した。国内では、更なる株価上昇を招き得る“環境整備”も進んでいる。台風の目となっているのが、金融庁長官・森信親(のぶちか)氏だ。

 森氏が4月7日に日本証券アナリスト協会の「第8回国際セミナー」で行なった基調講演「日本の資産運用業界への期待」にそのカギがある。金融ジャーナリストの森岡英樹氏が解説する。

「来年1月から積立NISAがスタートするのを受けて、金融庁が税正優遇の対象となり得る投資信託を選ぼうとする過程で『投信の問題点が浮き彫りになった』と森氏は指摘したのです。『顧客である消費者の真の利益を顧みない、生産者の論理が横行している。とくに資産運用の世界においては、そうした傾向が顕著に見受けられる』と指摘しました。

 そのうえで、日本で売られている公募株式投信5406本のなかで、『ノーロード(販売手数料無料)で信託報酬が一定率以下のもの』などの条件に限って見ると、積立NISAの対象として残ったのは全体の1%弱となる50本以下だったと言明したのです。要は“ほぼすべての投信が手数料が高いし、不透明”といっているようなもの。これまでの金融庁長官では考えられない痛烈な批判でした」

 積立NISAは森氏が発起人となった新制度だ。個人の資産形成を支援することを目的とし、顧客は“税制上の優遇措置”を受けられる。その対象となる投信は、金融会社にとってドル箱としての期待が大きい。

 しかし、ほとんどの商品が「対象外」の烙印を押されたのだ。いってみれば“もっと買い手のためになる商品を売れ”という業界全体へのメッセージである。森岡氏が続ける。

「顧客よりも、売る側の銀行や証券会社のほうが圧倒的に情報を持っていて、買う側の客はなかなか知識や情報が追いつきません。森氏は、その非対称性を利用して、金融機関が“手数料”を多く取れる金融商品を顧客に売りつけてきたとみて、それを改めようとしているわけです」

 森氏は、2015年7月に金融庁長官に就任。検査局長を務めた4年前から改革に着手し、「顧客本位の金融商品を売る」ことを金融機関に求めてきた人物だという。ジャーナリストの須田慎一郎氏はこういう。

「日本のマネーを貯蓄から投資の分野に移そうという考えが根底にある人。日本の金融業界を護送船団型の“業界の理論で動く”現状を変えようと様々な政策を提唱してきました。今回のように金融庁が業界に痛烈な批判を浴びせるのは異例だが、森氏は財務大臣と金融担当大臣を兼務する麻生太郎氏と親交が深く、菅義偉官房長官など安倍政権の中枢からも信頼が厚い。後ろ楯があるからこそ、こうした発言ができる。業界では“金融庁史上最強の長官”といわれています」

 気になるのは、森氏の考える方向に業界が変わっていくことが、本当に金融商品を買う個人のためになるのかということだ。経済アナリストの森永卓郎氏は、肯定的に評価するひとりだ。

「日本の多くの金融機関は手数料を取るなどして自分の利益だけを考え、顧客と向き合ってこなかったという森氏の発言は正しい。金融機関のファンドマネージャーの手腕がどれほどのものなのか、商品を買う前に顧客が判断するのは容易ではない。そうしたなかで、2%とか3%とかの信託報酬を顧客の財産から取っていく。冷静に考えて、ずいぶん乱暴な商売ではないでしょうか。

“積立型NISAで扱えるのは1%に満たない”というのは、“良心的でまともな投信商品は1%しかない”といっているに等しいんです」

 森氏の過激な発言は業界に混乱をもたらすという批判もある。ただ、多くの資金が投資に回る環境が整備されれば、株価上昇の追い風となることは確かだろう。それを期待する声も根強くある。

「よくわかっていない人に、得にならない商品をつかませて金融機関が利ザヤや手数料を稼ぐ。痛い目にあった顧客は金融機関を信用しなくなり、投資を手控える。日本の投資市場はこうした悪循環に陥っていた。

 森氏による改革が実現すれば、個人の投資が増え、株式市場の活性化にもつながる可能性があります」(森岡氏)

※週刊ポスト2017年5月26日号

最終更新:5/18(木) 17:00
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