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金満PSGを上回り…モナコ、17季ぶりリーグ制覇。2部降格経て、圧巻の快進撃

5/18(木) 11:50配信

フットボールチャンネル

 17日、リーグアン第31節未消化分の試合が行われ、モナコがサンテティエンヌを相手に2-0で勝利。これによりモナコは17季ぶりのリーグ優勝を決めた。圧倒的な戦力を誇るPSGが5連覇をもくろんでいたリーグにあって、最終節を残した段階でモナコが記録した得失点差は「+75」。まさに圧巻の快進撃であった。(取材・文:小川由紀子)

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●最終節を残してリーグ優勝決定。PSGの5連覇阻む

 5月17日、リーグ杯決勝と重なったため未消化となっていた31節のサンテティエンヌ戦に2-0で勝利したASモナコは、最終節を残してリーグ優勝を決めた。

 この試合では、19分にムバッペがピッチ上を滑るようなスピードでカウンターのチャンスから先制点をゲット。アディショナルタイムにジェルマンがルマールのグラウンダーパスをネットに収めて追加点をあげ、モナコらしい活気あるゲームで勝利をものにした。

 モナコのリーグ優勝は99-00シーズンから17年ぶり、8度目のタイトルとなる。財政破綻が大きな原因となって2011-12シーズンから2年間はリーグ2でプレーする辛酸をなめたが、この間にクラブを救済したロシア人オーナーの再建プランが実を結び、昇格4シーズン目にしてフランスの頂点に立った。

 37試合で104得点をあげ、得失点差が75点と、攻撃陣がバンバン点を入れた今季のモナコは見ていて痛快なチームだったから、彼らの優勝は喜ばしい。

 得点者リストには21点を獲ったファルカオ以下、ムバッペが15点、ジェルマンが10点、ルマールが9点、シウバが8点……と並ぶように、モナコの得点シーンは、常に攻撃陣が相手ディフェンスを崩して点を取るスタイルだったのも印象的だった。

●上位陣の中で断トツに薄い選手層。だが過密日程戦い抜く

 さらに彼らの優勝が特別だと思えるのにはいくつかの理由がある。

 一つ目は、欧州主要リーグの中でもダントツに多い試合数をこなしてきたこと。リーグ戦…38(現状は37)、フランス杯…5、リーグカップ…4、チャンピオンズリーグ予選…4、チャンピオンズリーグ本戦…12と、計63試合。

 3月下旬の国際マッチデー明けの4月1日のリーグカップ決勝戦から最終節の5月20日まで、彼らは例外なく週2戦のスケジュールをこなし、7週間で15試合を戦った。

 疲れのピークが見えたのは、ちょうどユベントスとCL準決勝を戦った頃だ。1stレグ4日前のリーグ戦、対トゥールーズ戦では運動量が売りの左SBメンディが大腿部に痛みを訴えて途中で退いたが、これは明らかに疲労性のものだった。おかげでメンディはユベントスとのホーム戦を欠場することになったが、彼の不在の影響は小さくなかった。

 加えてモナコは、リーグ上位陣の中でも断トツに選手層が薄い。レギュラー陣はほぼ出ずっぱりの状態で、交代要員は生え抜きの若手に頼るという状況も少なくなかった。

 ファルカオはシーズン序盤に負傷が続き、右SBのシディベは3月後半から体調を崩してほぼ一ヶ月間欠場、メンディも前述したように重要な試合に欠場することになったが、その他の中核選手であるGKスバシッチやバカヨコ、ムバッペ、ルマールらが過密スケジュールに耐えてほぼ毎試合出場できたことは、重要な生命線だった。

 また、シーズン序盤の調べでは、モナコは今季のリーグアンでニース、トゥールーズに次いで主力イレブンの平均年齢が低い、つまりは経験値の浅いチームだった。その彼らが、PSGの5連覇を退けたのはお見事と言うほかない。

●CLだけでなくリーグ杯、フランス杯でも躍進

 序盤は新監督ウナイ・エメリの戦術がフィットせずに軌道に乗るまで時間がかかったとはいえ、PSGは控えメンバーだけで各国代表クラス揃いのセカンドチームが作れるほど層が厚く、おまけにカバーニ、マテュイディ、ヴェッラッティら主力は4-5年同じメンバーでプレーし、チームとしての熟成度はモナコと比べて桁違いに高い。

 CLでバルセロナに悲劇的な逆転をくらった後はその反動からかいっそう奮起し、シーズン終盤には首位のモナコに並びかける猛追をしかけたが、追われる側ながらとりこぼすこともなく、今年に入ってからはリーグ戦無敗で王者を振り切った精神力は特筆に値する。

 なおかつ、そんな経験値の浅いメンバーながらCLとリーグを立派に両立させ、5年前からベスト8止まりのPSGを差し置いて、予選からベスト4まで勝ち上がった史上初のチームとなったのは誇れる功績だ。

 準決勝のユベントス戦ではさすがに限界を見た気がした。とくにモナコでの1stレグは、鉄壁のスリーディフェンス相手に、点を入れられる気配がまったく感じられなかった。

 前述のようにメンディが不在だったため右SBのシディベを左、ウィングハーフのディラールを右サイドバックで使うという布陣の変更を余儀なくされ、抜群の機能性を誇る左サイドの“メンディ-バカヨコ-ルマールームバッペのホットライン”を繰り出せなかったのも響いたが、いまの彼らには、ベスト4が納得の成果といえる気もした。

 それでも2ndレグで18歳のムバッペが、CLで689分間破られることのなかったブッフォンのゴールを破り、爪痕は残した。

 両立させたのはCLだけではない。リーグ杯では準優勝、フランス杯でもベスト4まで勝ち進んだ。今季の彼らは、真に強いチームだったのだ。

●4年半前にはリーグ2に所属。レスター優勝に似た感触

「欧州五大リーグのひとつで優勝タイトルを勝ち取ったことは自分のキャリアでもっとも素晴らしい功績。PSGから王座を奪ったことも格別だ。非常に疲れたシーズンだったが、最後に最高のご褒美を手にすることができた」と感想を話したジャルディム監督の手腕もまた見事だった。

 1、2点をとって地味に勝っていた昨季とはガラリと表情をかえ、多少守備で犠牲を払ってでも生きの良い若手にガンガン攻めさせる清々しい攻撃的サッカーを展開、それが選手たちの自信につながり、自分たちのスタイルを確立することにもなった。

 2部から1部への昇格に貢献したクラウディオ・ラニエリを昇格1年後にスパッと切り、ほぼ無名だったジャルディムを連れてきたフロントの眼力に狂いはなかったということだ。

「4年半前にはリーグ2にいた…。しかしこのチームは特別だ。才能とエスプリに溢れている」と喜びを語ったモナコのアルベール王子の目には光るものが浮かんでいた。

 今季大ブレイクし、一躍時の人となったムバッペは「PSGとニースを押さえ込んでチャンピオンになれた。最高の気分だ!」と喜びを語った。彼には移籍の噂が絶えないが、「おそらく残る」とバシリエフ副会長は話している。チームスピリッツが最高潮にあるこのチームで、来季チャンピオンズリーグに再挑戦するのは、彼にとってもきっと魅力的なはずだ。

 モナコの本拠地、ルイ二世スタジアムのキャパシティは15000人と小さい。生粋のモナコ国民も3000人ほどしかいない。しかし、数は少なくても、モナコと、隣接するフランスの町にいる土着のサポーターたちの熱意は、決して小さくはない。

 レンタルバックの中堅選手や生え抜きの若手を中心に作られたチームが、潤沢な予算でスター選手を集めたPSGに勝った。昨季のレスターシティの優勝の喜びにも似た感触が、フランスリーグを包んでいる。

(取材・文:小川由紀子)

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