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ミシュラン世界最高峰のシェフが魅了された日本酒。「獺祭」が日本一になった秘策とは?

5/18(木) 6:30配信

ダ・ヴィンチニュース

 2017年秋、パリに日本酒のレストランが誕生する。しかも共同プロデューサーは、かの有名シェフであるジョエル・ロブション。ミシュランで世界最多の星を獲得した人物である。そのロブション氏が惚れた日本酒とは「獺祭」。2014年にオバマ元アメリカ大統領が日本を訪問した際、安倍首相が送ったのもこの獺祭である。

 獺祭とは日本酒好きな人なら名の知れた銘柄である。ふんわりと梨のような甘い香りが特徴の極上の日本酒。これが日本だけではなく、世界でも愛好され今秋にパリにレストラン、バー、ショップを兼ねた複合施設をオープンする予定だ。

 日本酒業界が縮小しているなか、なぜ獺祭だけが大きな売上を獲得しているのか。それは獺祭を製造している旭酒造の会長、桜井博志氏の「口ぐせ」にある。このたびその桜井氏の言動をまとめた『勝ち続ける「仕組み」をつくる 獺祭の口ぐせ』(桜井博志/KADOKAWA)が電子書籍化され、各電子書店で好評配信中だ。

 本書は、日本酒という特殊な業界だけに通用する話ではない。人口減少社会の日本のあらゆる企業、働く人のマインドにも通じるものだ。

■非常識な杜氏のいない酒蔵

 多くの発言がまとめられているなか、もっとも印象深いのは、「常識・慣例に」捕らわれないこと。そして「お客様本位」で考えることだ。

 例えば、旭酒造には、「杜氏」がいない。杜氏とは、酒造りを行う職人集団の最高製造責任者である。プロ野球に例えれば、球団オーナーが酒造メーカーで、監督が杜氏という立場である。現場での指揮権は監督にある。同じように酒造りの裁量は杜氏にゆだねられている。

 しかしなぜ杜氏がいないのか。それは見切りを付けられたからである。1990年、先代から旭酒造を引き継いだ桜井氏は、新規事業にて手痛い失敗を起こす。そこで1億9000万円もの損失を出し、銀行の融資が止められた。そんな状況のなか、「給料をもらえないかもしれない」と杜氏が辞めていったのだ。そして代わりの杜氏もそんな借金の多い会社には誰も居着いてくれない。

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