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第二次性徴を追体験 辛酸なめ子

5/18(木) 17:30配信

Book Bang

 失われた6年間。男子とほとんど接触がなく女子校で中高時代を過ごした私にとって『せいのめざめ』は、第二次性徴の謎や人体の不思議を解明してくれた本でした。小学校6年の子鹿のような少年の姿から、大学生の骨張った巨体に変態するまで、男子の体には何が起こっていたのか?  大人になった今もとくに誰にも聞けないままでいた疑問が、おかげでだいぶ判明しました。保健体育の教科書よりも役に立つこの本に感謝しつつ、もっと早く読みたかった思いです。
 益田ミリさん、武田砂鉄さんの漫画と文章で構成されているのですが、この手の共著はお互いへの手紙形式なのかと思ってページを開いたら、ユルくテーマが共通しているくらいで、二人のやりとりはなし。それがかえって新鮮というか、男と女の間の深い川の存在を感じさせるとともに、適度な緊張感が漂います。やはり男女は馴れ合いにならず、距離感と節度があったほうがいいです。益田さん、武田さんの二人は共学で、さすが共学は進んでいるとたびたび痛感しました。やはり身近に大人へと変化していく異性がいると、その体を観察することで、目に見えないホルモンがお互い促進され、健やかに性がめざめていきそうです。
 武田さんは、毎月生理のある女子に比べて「性について、ちゃんと目覚めるプロセスを、男子は持っていない」と書いています。でも、下ネタのギャグにまぎらわせながらも、性欲と直面し、とまどう男子たちの姿は魅力的というか萌えました。案山子のように手を広げ子宮の物真似をした同級生。「闇ルート」で盗聴テープを入手しこっそり回したり、旧約聖書の76ページに載っているオナニーのルーツ的記述に興奮したり、学習机の引き出しの最下段を外したところにエロ本を隠していたり……。性体験の有無や性の情報を持っていること、性器の大きさやむけているかどうかが、男子のヒエラルキーに影響しているとは。男子の生態をここまで書いていただき、ありがとうございます。秘め事を知ったことで世の男性に感じていた距離感が少し縮まった気がします。今まで男子高生はケダモノだと思い込んでいて失礼いたしました。ピュアで繊細だということがわかりました。
 益田ミリさんは、金玉の形状はクリスマスツリーのオーナメントみたいなものかと想像したり、ほのぼのとした話題から入って、次第にドキッとするような過激な内容にも切り込んでいきますが、かわいいウサギのイラストの効果か違和感なく受け入れられます。男性が小用を足すとき、性器をどうやってつまむかとか、水泳の水着にどうやって性器を納めているかなんて、今まで考えてみたこともありませんでした。共学の早熟さが羨ましいです。でも、キスで赤ちゃんが作れると思っていたり、友人同士でAVの鑑賞会をしたら全裸のおじさんにショックを受けたり、基本的にうぶな部分は共学も女子校も同じで、共感しました。
 エロ本やAVもいいですが、この本を中高生が回し読みしたら、お互いリスペクトや思いやりの気持ちを持てて、日本の未来も明るくなりそうです。もちろん大人になって読んでもまだ間に合います……。

[レビュアー]辛酸なめ子

河出書房新社 文藝 2017年夏号 掲載

河出書房新社

最終更新:5/18(木) 17:30
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