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「週末映画館でこれ観よう!」今週の編集部オススメ映画は『ジェーン・ドウの解剖』『夜明け告げるルーのうた』

5/19(金) 21:30配信

リアルサウンド

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、編集スタッフ2人がそれぞれのイチオシ作品をプッシュします。

■『ジェーン・ドウの解剖』

 リアルサウンド野球部の横浜DeNAベイスターズファン・石井がオススメするのは、『ジェーン・ドウの解剖』。

 サイレント映画時代から現在まで、数多作られてきたホラー映画。観客に恐怖を与えることがホラー映画の定義だとするならば、人が抱く恐怖の形の数だけ作られてきたと言えるかもしれません。

 ホラー映画と言っても、人間以外の何か、いわゆるゾンビなどの“異形のモノ”が主題のものもあれば、殺人鬼などを主役とした人間そのものが恐怖の対象となるものまで、ホラー映画だけでジャンルが作れるほど、恐怖の形は多岐にわたっています。そんなホラー映画の新たなジャンルとして生まれそうなのが、本作“遺体安置所もの”。

 まず、死体解剖シーンがリアル過ぎます。骨を切断する際や、内臓を取り出す際の音がとにかく生々しい! 加えて、それらの内臓を想像させる怖さとして描くのではなく、しっかりと画として見せてしまうのも本作の行き過ぎているところ(褒めています)。おそらく、人によってはこれらの描写だけでも目を背けたくなること間違い無しですが、これらが“グロい”描写として終わるのではなく、あくまで“ドラマ”部分と繋がっているのが本作の優れているところです。

 身元不明の美しすぎる死体“ジェーン・ドウ”。彼女の外見はまったくの無傷にも関わらず、解剖を始めると手足は骨折、肺は真っ黒、舌は切られているという中身はボロボロの謎ばかり。加えてジェーン・ドウの解剖をするうちに徐々に起き始める異常現象。見ている立場からすれば、絶対にヤバイ死体なんだから逃げればいいのに、と思うものの、冷静なベテラン検死官トミーは何が原因なんだと飽きることなく黙々と解剖作業を進めていきます。

 まるでトミーとその息子・オースティンの姿は、事件の謎を解く探偵のよう。いつしかホラー映画からミステリー映画の様相へと移り変わるものの、そんな探偵役の彼らが無事で済むはずもなく……と、ここから先はネタバレになってしまうので語ることができませんが、“何もしない”ことがこんなに怖いと思ったのは初めてでした。。

 舞台は遺体安置室のみで主要登場人物もわずか3人(うち1名は死体)という超ミニマムな構成ながら、86分一切飽きさせることなく描いたアンドレ・ウーヴレダル監督の手腕には脱帽です。

■『夜明け告げるルーのうた』

 二次元担当、炎の営業アニマルこと泉から二次元担当を引き継ぎました。そんなリアルサウンド映画部のゆとり女子・戸塚がオススメする作品は、『夜明け告げるルーのうた』。

 本作は、『夜は短し歩けよ乙女』の湯浅政明監督が手がけた完全オリジナルアニメーション。寂れた漁港の町・日無町を舞台に、心を閉ざした中学生の少年・カイが、人魚の少女・ルーとの出会いと交流を通して、本当の気持ちを伝えることの大切さに気づいていく模様を描く。

 心が踊り出すようなキュートでポップな作品です。何と言ってもルーとルーのパパはじめ人魚たちがカワイイ、そしてビビットで不思議な色合いがカワイイ、流れ出すリズミカルで軽快な音楽がカワイイ、中学生らしい青さと真っ直ぐさがカワイイ、ねむようこさん原案の絵と湯浅監督の世界観の融合がカワイイ……カワイイ! そう、とにかくカワイイんです! 幼い頃、おもちゃ箱の中にいっぱい詰まっていたキラキラな世界、大好きだった遊園地に足を踏み入れたようなワクワク感、ドキドキと高揚しながら探索してやっと見つけた秘密基地……そんな感覚に似たドリーミングな作品です。

 だが決して、“カワイイだけのファンタジー映画”ではないのです。人の心の動きや廃れた小さな町の現状、突如現れた“わからない”モノへの排他的な言動など、細部が妙にリアルなのです。嫉妬、恐怖、嫌悪、恨み、欲望、焦燥、困惑、愛情、友情、勇気、期待、好奇心……など人の感情がしっかりと生きています。人は自身が理解できない“わからない”ものに対して、恐怖を抱き“悪”だと決めつける傾向があります。そして、集団になって排除しようと結託するのです。相手のことをよく知ろうともしないで。人魚を前にした町民たちが、まさにそれでした。

 また、主観でしか物事を捉えられず、己の思い込みを信じてやまない人間の浅はかさ。自分の目で見たものに対して勝手に脳内で物語をでっち上げ、それが“真実”だと思い込む。そんな思い込みが、相手だけではなく自分自身の首をも締めてしまう様もまた巧みに描写されていました。ほかにも新しいことへの恐怖、挑戦者への反発、人の失敗を待ちわび袋叩きにする余裕のなさ、自分の殻に閉じこもる臆病さ、愛するがゆえの盲目さなど、人間の脆さと危うさがさりげなく、でもしっかりと表現されていました。

 だがしかし、人間の“負の部分”ばかりが描かれているわけではありません。物語はあくまで希望に溢れていて“カワイイ”のです。家族、友達、恋人に対する溢れんばかりの愛、そんな大きな愛に満ちています。心を閉ざした少年・カイ君の成長もまた素晴らしい。物語の冒頭と結末では全くの別人です。カイくんはルーのおかげで遊歩や国夫に少しずつ心を開き、距離を縮めていく。殻を破り外の世界と少しずつ関わりを持とうとする。時に後戻りしながらも、でも確実に一歩ずつ一歩ずつ進んでいくのです。そんなカイ君はとてつもなくカッコよくて愛らしい。カワイイんです。さらに物語のいたるところに伏線が散りばめられており、ストーリー展開が実に見事です。

 ココロオドル、カラダオドル、ポップでリズミカルな映画です!

リアルサウンド編集部

最終更新:5/19(金) 21:30
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