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「子づくり」まで生中継する中国ネットの病弊

東洋経済オンライン 5/19(金) 18:00配信

中国ではパソコンやスマートフォンからネット回線を使って手軽にできるインターネット生中継が大流行している。多くの素人が歌や踊りを披露するパフォーマーとなり、ブレークすれば中国語でネットアイドルを意味する「網紅(ワンホン)」と呼ばれる。
2016年には、この「網紅」が大量に生まれ、「ネット生中継元年」と称された。そのきらめく世界の「実態」と「儲けの仕組み」を5日連続でリポート。最終回は行きすぎた生中継がもたらす害悪について考える。
=敬称略=

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 「新たなプラットフォームを作る。それは資本市場から得られる満足感より大きい。これがわれわれの真実の夢です」

 集まった100人近い社員の前で熱く語る男性がいた。ゆるくパーマのかかった髪はおそらく手でなで付けただけだろう。外見には無頓着そうだが、銀縁のメガネの奥に鋭く光る瞳は意志の強さを想像させた。

 2016年9月、ネット生中継の新プラットフォーム「夢想生中継」を立ち上げた呉雲松CEO(37歳)だ。

■売り上げは毎月6倍のペースで増加

 北京の繁華街に立つモダンな商業ビル三里屯SOHOの15階にあるオフィス。日本でいえば会社が六本木ヒルズの中にあるようなものだ。今、中国ではネット生中継サービスを提供する会社、つまりプラットフォームは300以上あるといわれる。乱立期であり戦国時代である。そうしたなか、呉はプラットフォームの先駆けの1つで大手の「花椒生中継」から独立、自ら1000万元(約1億6000万円)を投資し、あえて新プラットフォームを立ち上げた。呉は強気だ。

 「今月の売り上げは600万元(約9600万円)です。毎月6倍のペースで増えています。月に数十億元(数百億円)は簡単に達成できるでしょう」

プレゼントの取り分は3分の1

 広いオフィスのフロアにはデスクの島がいくつかあり、呉はその1つをデザイン部と紹介してくれた。視聴者がネット生中継のパフォーマーに贈るバーチャルプレゼントのデザインや動きを決めている部門だ。いちばん高いプレゼントを尋ねたところ、スタッフが画面に出して見せてくれたのは、波を切って走るクルーザーだ。値段は約1万6000円。立ち上げたばかりの夢想生中継だが、すでに1日で120万円程度のプレゼントを贈られたパフォーマーもいたという。

 呉によれば、視聴者がプレゼントの購入に支払った代金は、プラットフォームが3分の1、残りがパフォーマーとマネジメント会社側に分配される。

■違反行為を24時間体制で監視

 さらに呉が最も力を入れたと強調するのは生中継の内容を監視するシステムだ。壁に取り付けられた巨大な液晶パネルに、同社が流している生中継の画面がずらりと並んで表示されており、呉は「中国で唯一のシステムです」と胸を張る。生中継の内容は、スタッフ数人が24時間体制で監視しているという。

 さすがに全部の画面に目を配るのは無理ではないかと思ったが、「わいせつなどの行為があれば、5秒で止められます」と呉は自信を見せる。

 これには、ネット生中継で注目を集めようとするばかりに発信する内容が過激化している現状がある。具体例については後述するが、急速に膨れ上がっているネット生中継だけに、中国当局もその内容の乱れぶりを無視できなくなり、プラットフォームに対する管理を厳格化する新しい法律を去年12月1日より施行した。

 その中には、生中継を行うパフォーマーの実名での認証の義務付けや、違反行為を行った者のブラックリスト作成なども含まれる。またエロや社会秩序をかく乱する行為などを発信しないよう内容についても規制した。中国らしいところでは反共産党活動などもその規制内容に含まれるが、呉によれば実際の違反行為はほとんどが「わいせつ」だという。呉が、監視システムの充実を強調するのは、こうした中国政府の動きに即した対応でもある。

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最終更新:5/22(月) 15:41

東洋経済オンライン