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生涯賃金を部員に考えさせる野球部。沖縄・美里工の一風変わった文武両道。

Number Web 5/19(金) 7:31配信

 時計の針は22時を回っていた。

 4月27日の神宮球場。春季東京都大会決勝は早稲田実が18-17で日大三高を延長12回サヨナラで下した。ホームラン7発が出る大打撃戦だったが、平日のナイター開催という異例の試合に対して疑問の声が少なくなかった。

 早実の清宮幸太郎という高校野球界のスターがいるため、通常使用することが多い神宮第二球場では観客が入りきらない。混乱を避けることも考慮に入れ、神宮球場で執り行うことになった。その日程が平日夜となったわけだったが、18時開始の試合は想像以上に長引くことになった。それを受けて、高校生がこの時間帯までプレーしてよいのかという声が上がったのだ。

 高校生の本分が勉学であるということを考えれば、たしかにそこには難しい問題がある。

「生きる力をつけるのが、高校教育の仕事である」

 批判者の多くは部活動が教育の一環であることを指摘していたが、今回は早実と日大三というビッグマッチだからこそクローズアップされたというところがある。もし部活と教育の関係を語るのならば、目を向けるべきところは他にもたくさんある。

 勉学の暇もない長時間練習、健康リスクのある炎天下での試合、投手の登板過多など、現在の高校野球を取り巻く環境は、教育という観点から見たときに首をかしげる点が複数ある。

 本来、高校球児は何を学ぶべきなのか。高校野球に携わる大人たちは、いま一度考え直す必要があると思うのだ。

 「生きる力をつけるのが、高校教育の仕事であるという使命感を持っています」

 そう語るのは、この春の九州大会でベスト4に進出した美里工(沖縄)の神谷嘉宗監督だ。

生きるために、高校時代に身につけるべきもの。

 神谷は前任の浦添商で'08年夏に、沖縄県大会決勝で東浜巨(ソフトバンク)、嶺井博希(DeNA)を擁する沖縄尚学を破って甲子園に出場し、本大会でもベスト4に進出している。そして美里工が6校目の指導となる。

 神谷の指導は端的に言うと「文武両道」だ。

 なぜ、神谷が「文武両道」を指導の根幹に置いたのかに耳を傾けると、高校球児が学ぶべき大切なものが見えてくる。

 「甲子園に行って上位に入りたいという目標や、プロ野球選手になる夢を持っている子もいます。でも、その夢や目標は叶うかもしれないけど、叶わないかもしれない。しかもプロに入団したら将来が安心できるかといったら、プロの道も厳しい。生きるために、将来のために、高校時代に何をするべきかといえば、生きる力をつけないといけない。

 その生きる力をつけるためには、専門高校ではその学校の専門性を生かした資格を取って、それを身につけることが、将来の生きる力につながると思います」

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最終更新:5/19(金) 10:46

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