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U20W杯初出場。メディアに叩かれ続けたベトナム代表、それでもファンが期待を寄せる理由

5/20(土) 9:02配信

フットボールチャンネル

20日から韓国で開催されるU-20ワールドカップに出場するベトナム代表。FIFA主催大会への出場そのものが初めてとなるが、堅実で守備重視の戦術を好む指揮官のスタイルがメディアから批判され続けていたという。それでも現在のU-20ベトナム代表には将来有望な選手が揃っており、国民の期待値も高いようだ。(取材・文:宇佐美淳【ホーチミン】)

初戦の相手は南アフリカ 【U-20W杯】グループステージ組み合わせ

●狙うは東南アジア勢初の勝ち点。“ベトナムのモウリーニョ”率いるアジアの新興勢力

 2017 FIFA U-20ワールドカップが韓国で5月20日に開幕する。日本では、FC東京U-18に所属する15歳の久保建英が飛び級で選出されて大きな話題となっているが、筆者が住むベトナムでもFIFA主催大会に自国が初出場するとあって、サッカーファンの間ではかなりの盛り上がりを見せている。

 アジアの新興勢力ベトナムは、昨年バーレーンで行われたAFC U-19選手権(兼U-20ワールドカップ予選)でベスト4に躍進。グループステージでは、初戦で前大会準優勝の北朝鮮2-1で下した後、中東の強豪UAE(1-1)とイラク(0-0)に引き分けて、グループ2位で決勝トーナメント進出。準々決勝では、地元バーレーンに1-0で勝利して史上初のU-20ワールドカップ出場を決めた。

 過去に東南アジアからU-20ワールドカップに出場した国は、インドネシアとミャンマーの2ヶ国のみ。このうち、日本で開催された1979年大会(当時はワールドユース)に出場したインドネシアは、クウェートが辞退したことによる繰り上げ出場。2015年大会に出場したミャンマーは、前年のAFC U-19選手権を自国開催しており、地の利を活かしての予選突破だった。そして、インドネシアもミャンマーもU-20ワールドカップでは、勝ち点をあげることができずに惨敗を喫している。

 今大会のベトナムには東南アジア勢初の勝ち点獲得、そして初勝利に期待がかかるが、指揮官が狙うのはあくまでもグループステージ突破だ。

 ベトナムを率いるのは、理論派として知られるホアン・アイン・トゥアン監督。ベトナム人でUEFAプロライセンスを持つ唯一の指導者で、そのサッカー哲学から国内では“ベトナムのモウリーニョ”、“三浦俊也の後継者”などと呼ばれている。ハードワークする選手を重用し、個人より組織重視で堅守速攻を好むことが由来のようだ。


●「地味でつまらないサッカー」と非難轟々…高い評価を得るまでの険しい道のり

 今でこそ高い評価を受けているU-20ベトナム代表だが、ここまでの道のりは決して平坦なものではなかった。一つ前の世代にFWグエン・コン・フオン(元水戸)、MFグエン・トゥアン・アイン(元横浜FC)、MFルオン・スアン・チュオン(現江原FC)といったスター選手がいたのに対し、現在のU-20代表はどちらかというと小粒な印象。

 ポゼッション重視の攻撃サッカーを好む国民性もあり、堅実なホアン・アイン・トゥアン監督のサッカーは当初、ファンやメディアから「地味でつまらないサッカー」と叩かれ続けた。

 現在のベトナムでは、メディアが上記のスター選手たちを輩出したHAGLアーセナルJMGアカデミー(ベトナム1部ホアン・アイン・ザライの下部組織)が実践してきた攻撃的スタイルを「ベトナムサッカー新時代の宝」として持てはやしたため、それ以外の守備的戦術が批判の対象となる傾向がある。前ベトナム代表の三浦俊也監督が一定以上の結果を残しながら解任されたのも、この風潮が強まっていたのが原因の一つと考えられる。

 HAGL信仰はかなり偏った形で残っており、HAGLの選手が何人代表に選ばれたか、あるいは選ばれなかったかがスポーツ新聞の見出しになる。HAGLはVリーグで毎年残留争いをしているにもかかわらずだ。

 現U-20代表では、同クラブの有望株MFファン・タイン・ハウが最終登録メンバーから外れたが、メディアから質問が殺到したため、監督がわざわざ個別で落選理由を説明する羽目になった。
(※編注:同選手は、その後、負傷した選手に代わり21人のメンバー登録に追加された)


●「我々はサプライズを起こす」…初戦勝利なら決勝T進出の可能性も?

 現U-20代表メンバーを見てみると、強豪ハノイFCから最多の6人が選出。注目選手は、既に同クラブのトップチームでもスタメンの座を確固たるものにした20歳のMFグエン・クアン・ハイ。16歳の頃から飛び級でU-19代表に選ばれており、国際大会の経験も豊富な頼れるキャプテンだ。

 それ以外では、ベトナムサッカー選手才能開発投資ファンド(PVF)アカデミー出身のFWハー・ドゥック・チンとMFホー・ミン・ジー。ベトテルFCが誇るユーティリティプレーヤーのDFグエン・チョン・ダイといったところが注目株。

 このうち、ハー・ドゥック・チンは今季移籍したSHBダナンで大ブレイク。大会前に行われたU-20アルゼンチン代表との親善試合でも途中出場からゴールを決めている。“棒の足”と揶揄されたかつての面影はなく、英雄レ・コン・ビン以来となる本格派ストライカーとしてA代表入りが待たれる逸材だ。

 U-20ベトナム代表は、今大会のグループEで優勝候補のフランス(出場回数6回)、ニュージーランド(同5回)、ホンジュラス(同7回)と対戦する。初出場のベトナムは同グループで最も評価が低いが、初戦のニュージーランド戦で勝ち点3を奪うことができれば決勝トーナメント進出の可能性は大きく広がる。

 ホアン・アイン・トゥアン監督は、「サッカーでは何が起こるかわからない。我々は今大会でサプライズを起こすつもりだ」と自信をのぞかせている。

(取材・文:宇佐美淳【ホーチミン】)

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