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「電球交換」から「縁日開催」まで!? 公団団地の救世主、それは「セブンイレブン」だった!

5/20(土) 16:20配信

HARBOR BUSINESS Online

 ゴールデンウィーク真っ只中の昼下がり、東京都東村山市のUR団地「美住一番街店」の一角に人だかりができていた。

⇒【資料】60歳以上の住民が希望する生活支援サービス

 その中心にあったのは、コンビニエンスストアの「セブンイレブンJS美住一番街店」。

 都市再生機構(UR、旧・住宅都市整備公団)は、昨年から今年にかけてセブンイレブン、ファミリーマート、ローソン、ミニストップの大手コンビニ4社と団地の利便性向上に向けた連携協定を締結するとともに団地活性化のため新業態「団地特化型コンビニ」の運営を開始することを発表。

 4月21日に開業したセブンイレブンJS美住一番街店はその団地特化型コンビニの第1号店で、UR子会社の日本総合住生活(JS)がフランチャイズ運営する。

 取材をおこなった日は5月5日、こどもの日。わたあめや景品釣りなど、同店が開催した「プチ縁日」を目当てに子供を中心とする多くの団地住民が集まっており、高齢化が進む団地ゆえに「高齢者向けのコンビニ」を想像していた筆者は、思わぬところで店舗運営の懐の深さを垣間見ることとなった。

 さらに店内に一歩踏み入れると、そこには「団地特化型コンビニ」ならではの様々な“秘策”が隠されていることが分かった。

◆鍵の引き渡しや電球交換も!「生活拠点としてのコンビニ」

「団地特化型コンビニ」と一般的なコンビニとの違いは、売場づくりにも大きく表れている。

 店内に入って一番はじめに気付くのが、通常であれば雑誌や成人誌が陳列されている窓際が「日用品売場」となっていることだ。その取り扱い品目は通常のコンビニよりも多く、コンビニではあまり取り扱われていない6ロール入りトイレットペーパーやボトルタイプの大きな洗剤などといった容量の多い商品も数多く陳列されている。これは、「容量の多い商品ほど遠くのスーパーで買うと持ち帰りが大変」であるため、住民の利便性を考えた「団地ならでは」の商品構成だという。

 その奥にはスーパー顔負けの「安価と品揃えが自慢」という青果売場が設けられている。こういった野菜や果物も買い物の際には重くてかさばりやすく、団地住民のニーズを的確に捉えた売場展開・構成がなされていることが分かる。

 さらに、車椅子利用者や歩行が不自由な高齢の利用客が回遊しやすいように通路は広めに取られ、トイレも広々とした多目的式を採用。実際に、開店以来ほぼ毎日、車椅子利用者も来店しているという。

 また、高齢者を中心とした「自分の足で店舗へ出向くことが難しい」団地住民に対しては、独自の宅配サービスも実施している。従来のセブンイレブン店舗でも行われている「セブンミール」は、食料品など500円以上の購入で送料が無料となる宅配サービスだが、高齢化が進み身体に不自由な住民も増えつつある住宅団地においては特段大きな効果を発揮するであろう。

 そして、一般のコンビニとの最も大きな違いとなるのが、コンビニが団地内の「住民サービスの窓口」としての役割も担っていることだ。団地管理を行っているJSのフランチャイズ運営であることを活かし、コンビニが「粗大ゴミ搬出手続き」や「鍵の引き渡し」、さらには「電球交換」などといった、生活支援サービスの提供拠点窓口としての機能も果たすという。

 もちろん、こうしたサービスに従事する「コンビニ店員」の一部は団地内に居住する住民であり、同店は団地住民の雇用創出にも一役買っている。

 開店から2週間の「セブンイレブンJS美住一番街店」の客入りは上々だといい、開店以来よく店を利用しているという住民の一人は「オザム(団地外にある食品スーパー)はちょっと遠かったから、近くに出来てありがたいですね」と嬉しげ。開店して早速、「団地特化型コンビニ」は住民のハートをがっちりと掴んでいるようだった。

◆「地域の冷蔵庫」のみならず「地域の防犯灯」に

「団地特化型コンビニ」の1号店として東京のベッドタウン・東村山市に店を構えたセブンイレブンだが、それ以前の団地はどういった問題を抱えていたのだろうか。

 団地特化型コンビニが出店した東村山市美住町のUR団地「グリーンタウン美住一番街」(総戸数945戸)は、老朽化した公団住宅を改築し1994年に供給を開始。改築当初は子育て世代にも人気があり、団地の入口に軒を連ねたコンビニや八百屋、薬局などが住民の生活を支えていた。

 しかし、一度は息を吹き返したこの団地も、近年は再び住民の減少と高齢化が進行しており、2000年代に入ると八百屋や薬局などが相次いで閉店。住民の一人は「昔は夜でも若い人の声が聞こえた。今じゃ昼間でも遊んでいる子供をそんなに見かけない」と話すなど、団地の賑わい低下は日を追うごとに顕在化していった。

 そして、3年ほど前には最後の物販店となっていたコンビニ「スリーエイト」も閉店。団地内での日常的な買い物の場が失われるとともに、夜遅くまで営業していたコンビニの明かりが消えたことで団地の入口は不気味に静まり返り、夜間には一人で出歩くことも躊躇うほどになっていた。

 そんな状況の中、コンビニ跡地に居抜きで出店したセブンイレブンは、前身店でも成し得なかった24時間営業を実現。簡単な買い物であればスーパーにまで出向く必要性もなくなったばかりか、大手企業の見慣れた看板と昼夜問わず消えない明かりは地域住民に大きな安心感を与える「防犯灯」としての役割も担うこととなった。また、住民からの要望を受けて店先にはベンチが設置されており、昼間にはお年寄りが集うコミュニティスペースにもなっている。

 開店後の反響について、店舗関係者の一人は「『もうコンビニ閉店しないよね?』と聞いてくる方もおられますが、大丈夫です。閉店しませんので(笑)」と力強く回答。

 団地のエントランスに灯るコンビニの「明かり」は、末永く住民の暮らしを明るく照らし続けることになるであろう。

◆高齢化時代だからこそ「コンビニ」にかかる期待

 東村山の美住一番街のように、住民の高齢化や買い物環境に課題を抱えている団地は全国的に数多く存在している。

 URが住宅団地の住民などを対象に行っている定期調査によると、2015年の高齢人口(65歳以上)率は同年実施された国勢調査(速報値)の26.7%よりも高い34.8%を記録しており、住民の「3人に1人」が高齢者という状況だ。

 そのような「高齢化」が進む中で、60歳以上の住民が希望するサービスは「家事・買い物代行」や「食事宅配」といった項目が大きなウエイトを占めるなど、団地内における高齢者向けの買い物環境・サービスの整備は喫緊の課題となっている。

 もともと高度経済成長期に開発された多くの住宅団地には、広場や団地下層階などに住民の消費の場として設けられた小規模な「団地商店街」があり活況を呈していたが、現在は住民利用者の減少や商店主の高齢化などで「シャッター商店街」と化している場所が多く、利便性向上と賑わい創出のために空き店舗の有効活用が求められていた。

 近年、URでは、無印良品との提携や有名建築家の起用による「居住空間の全面リノベーション」により若い世代の入居が進んでいる団地が脚光を浴びているが、その一方で、既存団地に併設された「団地商店街」の活性化はあまり行われていないのが実情であった。

 居住空間のリノベーションとともに「団地特化型コンビニ」の導入による団地商店街の活性化は、「暗くて時代遅れの公団団地」というイメージの払拭にも繋がる。

 好調な滑り出しを見せたURの「団地特化型コンビニ」1号店。URはこうした「団地特化型コンビニ」を全国の約100団地に出店させる予定で、URとしては、コンビニの出店により団地商店街全体の集客力を上げることで、空き店舗の解消も狙いたいところであろう。

 今後の各団地の「変化」が楽しみだ。

【都市商業研究所】

若手研究者で作る「商業」と「まちづくり」の研究団体。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitterアカウントは「@toshouken」

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最終更新:5/20(土) 16:20
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