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東京・ホテルストーリー:女の絶頂期、27歳。自惚れた私に突きつけられた、非情な現実

5/20(土) 5:20配信

東京カレンダー

東京の女には、ホテルの数だけ物語がある。

「ホテル」という優雅な別世界での、非日常的な体験。それは、時に甘く、時にほろ苦く、女の人生を彩っていく。

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そんな上質な大人の空間に魅了され続けた、ひとりの女性がいた。

彼女の名は、皐月(さつき)。

これは、東京の名だたるホテルを舞台に、1人の女の人生をリアルに描いたストーリー。

埼玉出身のごく普通の女子大生だった彼女の人生は、少しずつ東京色に染まっていく。社会人になり、年上の恋人と『パーク ハイアット 東京』ステイの夢を果たし、東京生活を謳歌する皐月。しかし、適齢期での結婚を考え始め...?

恋人を、両親に紹介する。

この一大イベントに、私は完全に舞い上がっていた。

27歳という結婚にぴったりな年齢、外資系コンサルティングファームに勤める毛並みのいい恋人、交際期間半年という絶頂期。

まるで、絵に描いたように整った環境だ。

きっと両親と恋人の直樹を対面させることで、私たちの関係は自然と結婚へと向いていくだろう。

20代は、東京の煌びやかな生活を思う存分に楽しんだ。

自由な独身生活が名残惜しい気もするし、27歳で家庭に入るのは少々若すぎるかもしれない。しかし、何事も「もう少し行けるかも」くらいの地点で打ち止めるのが、賢い選択ではないだろうか。

結婚後を想像してみる。白金あたりのマンションに新居を構え、落ち着いて余裕のある、幸せな妻となった自分。

素敵な男性との結婚こそが、本当の意味で東京に根を張るための最大の登竜門だ。

当時の私が、ひどく浅はかな妄想に陶酔していたのは、言うまでもない。

生意気な娘、嬉しそうなママ、堅い表情のパパ

「彼は世田谷出身のきちんとした人だから、ママたちも綺麗な恰好で来てね!」

私の生意気な物言いに半ば呆れながらも、父はきちんとジャケットを羽織り、母はワンピースにパールのネックレスを飾って、地元埼玉から銀座までやって来てくれた。

「わざわざ、そんなにかしこまったお店でランチするの?高いところじゃなくていいのに...」

心配そうに母が聞く。小学生の頃は美人ママと評判で、いつも鼻高々だった母。

少し濃い化粧をして深いピンクの口紅を塗った彼女の顔は、50歳を過ぎた今でも可愛らしい。

昔は母にねだり、よく新宿や原宿に買い物に連れて行ってもらった。テストで良い点数を取ると、好きな服を買ってもらえたのだ。

「いいじゃない、たまには。休日のホテルランチなんて、そんなに敷居が高いわけじゃないわよ。今日は私たちの奢りだし」

そんな母たちを自分が先導し、銀座の街を歩いている。今となっては両親より私の方がずっと東京に詳しいことは、誇らしくも少し寂しいような、甘酸っぱい感じがした。

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最終更新:5/20(土) 5:20
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