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ヒップホップとラップは別物? トランプからフリースタイルダンジョンまで、ラップはどこに向かっているのか?

5/21(日) 15:00配信

ダ・ヴィンチニュース

 今、ラップが熱い。特にここ3年ほどのミュージックシーンを見渡せば、ケンドリック・ラマー、ドレイク、カニエ・ウェストなど、世界的セールスと評価を両立させた作品に多くのラップ・ミュージックが含まれていることが分かる。ここ日本でも『高校生RAP選手権』『フリースタイルダンジョン』といったテレビ番組をきっかけに空前のMCバトルブームが巻き起こっている真っ最中だ。

 一体、ラップはどうしてここまで世界に受け入れられたのだろう。『ラップは何を映しているのか――「日本語ラップ」から「トランプ後の世界」まで』(毎日新聞出版)はラップを通して激動の時代を見つめようとする、識者3人の鼎談本だ。参加者は慶應義塾大学教授にしてアメリカ音楽研究家の大和田俊之氏、音楽ライターの磯部涼氏、批評家でありラッパーでもある吉田雅史氏。三者三様の視点が交差し、ラップを入り口にしてさまざまな事象を考察する本書は、ラップに興味がない人でも楽しめる内容だ。

 ラップとはご存知、ビート上で話し言葉のように歌詞を乗せていく歌唱法のことである。特にヒップホップとラップは密接な関係にあり、ラップといえばヒップホップのことだと認識している人も多い。

 しかし、本書は「ヒップホップという言葉はアメリカでほとんど使われなくなっている」という衝撃の解説から始まる。ヒップホップとはもともと、70年代半ばのサウスブロンクス発祥で、「DJ」「ラップ」「グラフィティ」「ブレイクダンス」の4大要素から成立する黒人のユース・カルチャーだった。しかし時代は変わり、現代では4大要素がそれぞれ独自の発展を遂げてきているという。中でもラップの求心力は高く、時代と共にさまざまな音楽ジャンルを横断し、広く愛されてきた。ラップがヒップホップだけのものとは言い切れなくなってきたのだ。

 ラップが他ジャンルの音楽にも取り入れられるようになった理由はその情報量ゆえだ。ラップでは、通常の歌唱法と比べて言葉数が圧倒的に多くなる。それゆえ、内容が他のポップミュージックよりも内省的表現や政治的表現に適していると思われてきた。ラップが「いま」を映している、という多くの言説もこうしたラップ・ミュージックの特徴に根拠を置いているのだろう。

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