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「敬遠で清宮勝負」を仕掛けた熊本・秀岳館高監督の深謀遠慮

5/22(月) 16:00配信

NEWS ポストセブン

 何かとお騒がせな人物だ。昨春のセンバツから3季連続で甲子園に出場し、いずれの大会もベスト4に進出している熊本・秀岳館高校の鍛治舎巧(かじしゃ・たくみ)監督である。

 5月14日、熊本城内にある藤崎台球場で行なわれたRKK招待野球大会で、早稲田実業と対戦した秀岳館は、9回表の早実の攻撃を迎え、5対1とリードしていた。2死走者なしという勝利目前の状況から、秀岳館は2番打者との対戦を回避し、“怪物・清宮幸太郎”との対決を選んだ。

 勝利を目指すなら高校通算93本塁打の清宮より、2番打者と勝負した方がいいに決まっている。それなのに鍛治舎監督は伝令を送ってまで、敬遠を指示した。そんな“パフォーマンス”に、清宮は憮然とした表情で打席に入り、わざわざ相手捕手に「ベンチの指示?」と訊ねたという。

 これまでも鍛治舎監督は、なにかと物議を醸す言動を繰り返してきた。

 自身にとって初めての甲子園だった昨春のセンバツでは、初戦の花咲徳栄(埼玉)戦で「サイン盗み」疑惑が勃発。2塁走者が投手の投げるコースや球種を打者に伝えているのではないかと球審に指摘された。しかも勝利後、お立ち台に上がった鍛治舎監督は、「選手たちには紛らわしいことはやってはダメといっていたので残念に思う」とコメント。ずいぶんと他人事に聞こえる言葉だ。

 もともと秀岳館の監督就任に際しては、自身が率いた大阪の中学硬式野球「枚方ボーイズ」の選手を熊本に総動員。就任からわずか2年で甲子園に出場した。しかし、3季連続ベスト4の実績がありながら、地元で支持は広がっていない。

 川上哲治を生んだ熊本は高校野球が盛んな土地だ。だが、県外出身者で占められた秀岳館に対する風当たりは強く、熊本工業など地元で人気の高校と対戦すれば、「大阪へ帰れ!」などの野次が飛ぶと監督自身が明かしたこともある。さらに今年のセンバツ前には、自身の解任騒動まで起きた。

 NHKの甲子園解説を務めていた頃、明瞭な語り口で人気のあった鍛治舎監督は、早実との試合後、「夏に(甲子園で)対戦するかもしれないので……」と、投手に経験を積ませるための策だと説明した。だが、高校野球ファンの顰蹙を買うだけだった。

●取材・構成/柳川悠二(ノンフィクションライター)

※週刊ポスト2017年6月2日号