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【村田諒太】闘うことの意味

5/22(月) 17:30配信

GQ JAPAN

2012年のロンドン・オリンピックから5年が経ち、日本ボクシング界のプリンスは何を想い闘い続けるのか。

【村田諒太】尊敬し認め合って闘う

尊敬し認め合って闘う

村田諒太がプロに転向し4年目の春がきた。ここまで12戦して無敗、9KOの戦績は申し分ない。

とはいえ、周囲はロンドン五輪のミドル級でアマチュアの頂点に立ったボクサーが「いつ世界タイトルマッチを行うのか?」とヤキモキしているのも事実。そのことをぶつけると、村田は小首を傾げながら微笑んでみせた。

「このインタビューが掲載される頃には、いい報告ができそうなんですが……」

村田の人生はボクシングとの出逢いで大きく航路が変わった。ケンカも辞さないヤンチャな中学生だった彼が、教師からリングの上で拳を交えることを勧められ、稀有というべき才能を発揮していく。彼の軌跡に金メダルだけでなく、プロ世界王者と書き加えることができれば、これ以上ないサクセスストーリーの完成だ。

しかし、村田は一転して苦笑してみせた。

「そういうことを意識してボクシングをやってきたわけじゃありません。もっと単純というか、『僕はここにいる。見て! 見て!』って感じだったんです。勉強や音楽、絵画なんかで目立てるならそうしたんだろうと思う。でも僕の場合は、目立つための手段がちょっと異色ではありましたね」

村田はボクシングを「殴り合い」と肯定しながらも、師の教えを付け加えた。

「ケンカは強いか弱いかの二元論。だけどボクシングでは、人を殴りつつも相手の痛みを知る必要があります。拳を交える相手を怒りや憎しみで殴りつけるんじゃなく、尊敬し認め合って闘うからスポーツとして成立しているんです」

村田はサンドバッグに近寄るとパンチを繰り出した。まったく力みを感じさせないけれど、素早く的確な動き。乾いた音がジムに響く。彼を遠巻きにしていた若いファイターたちから、感嘆と畏敬のこもった声が漏れた。

「人生って、パチーンとくるものと巡り逢えるかどうかで変わってきますよね。僕の場合は、偶然なのか必然だったのかは解らないけど、ボクシングと巡り逢い職業にできた。これには感謝しています。だけど、僕を羨まないでほしい。パチーンとくるものって、たいていは意外なほど身近にあるはずなんです」

青い鳥ってヤツか。私がつぶやくと、村田はこんなことをいった。

「もし、ボクサーになってなかったらっていう質問をする人がいるんですけど、僕にとって『タラ、レバ』なんて意味がない。こういうのを口にする人は、いま向き合っていることに満足できず、不完全燃焼だという証拠ですよ」

とはいえ、彼がリングであげた戦果は平凡な日々を送る者にとって特別の輝きを放つ。だからこそ、世間は彼に熱い視線を送る─しかし、ボクサー村田はやんわりと反論してみせた。

「金メダルを獲ったから特別なんでしょうか? 僕はそんなこと、これっぽっちも思っていません。いや、これは敗れていった選手たちをバカにする意味じゃありません。オリンピックで優勝したからって過剰にプライドを高くするなんて、すごく滑稽じゃないですか。幸せなことに、僕はプロへの道を選んでそこから脱することができました」

村田は落ち着いた口調で続けた。

「オリンピックは一所懸命に取り組んだ過去の一コマ。もう大したことじゃない。それより、いま取り組んでいること、これから先のことが大事なんです」

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最終更新:5/22(月) 17:30
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