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【いいね!源泉かけ流し】なんとも爽快!河原を掘った“マイ温泉”

5/22(月) 12:30配信

旅行読売

冨士屋(和歌山・川湯温泉)

 紀伊田辺駅からバスで紀伊半島の山間部を走ること約2時間。トンネルを抜けると、熊野川の支流・大塔(おおとう)川と川湯温泉が現れた。ここは、河原を掘れば湯が湧くという珍しい温泉。清流に臨んで10軒ほどの旅館や民宿が軒を連ねている。
 予約していた「冨士屋」は、江戸時代の書物にも記されているという老舗旅館で、川底から湧く湯を発見したのはこちらのご先祖にあたるとか。
 「熊野の神様が夢枕に立って、温泉の場所を教えてくれたと伝わっているんですよ」とほほ笑むのは、女将の小渕祥子(こぶちよしこ)さん。 
 宿の前の河原をスコップで掘れば、どこでも川底から湯が湧いて出るというが、“マイ温泉”につかれるようになるまで1時間ほどかかるとのこと。旅館で整備している河原の露天風呂もあると聞き、さっそく入浴用の和風水着を借りて川べりに行く。
 露天風呂といっても、川の中である。足をつけると思ったよりずっと熱く、70度はあるという。周囲を石で囲ってあるだけなので、石組みを調節して川から水を流し入れ、自分好みの温度にする。なんともワイルドな気分だ。地表に湧き出たばかりのフレッシュな源泉と、涼やかな川の流れ。視線の先にはのどかに泳ぐカモがいる。これまで体験したことのない突き抜けた開放感である。
 露天風呂にはすでに先客がいた。熊野古道を旅しているというフランス人男性だ。外国人と感動を共有し「キモチイーネ」と笑い合うとは、まことに旅は異なものだ。冨士屋は世界遺産の熊野本宮大社や熊野古道にも近い。最近は欧米人観光客が増えているそうだ。

あふれる源泉で心身を浄化!女将の肌見て美肌効果期待

 31の客室は、すべて河原に面しているので眺めも良い。夕食まで時間があったので、館内の露天風呂や大浴場をハシゴして過ごす。
 毎日入れ替えるという館内の湯は、泉質は無味無臭のナトリウム―炭酸水素塩・塩化物温泉で滑らかな肌触り。すぐ前の河原から引いた源泉を適温に加水している。保温効果が高く湯冷めしにくいのが特徴で、口に含むと優しい味で飲みやすい。
 湯につかりながら、女将さんのつるんと光るような肌を思い出し、美肌効果も期待できるかもなどと、にんまりする。手足を伸ばすと、あふれ落ちる湯の音がせせらぎのように聞こえて心地良い。
 夕食にはお造り、紀州梅鯛とヒロメ(海藻)のしゃぶしゃぶなど、紀州の食材を生かした料理の数々が並ぶ。山間部とはいえ、漁港までは車で約1時間。鮮度のよい海の幸が味わえるのもうれしい。
 夜、空を見ると星がひと回り大きく見えた。人工の明かりがない上に今宵は新月。カジカガエルの透き通った鳴き声が川面に響く。野趣を堪能できる宿で、身も心も浄化されていくような気がした。

文/北浦雅子 写真/清水いつ子

■温泉データ
泉質:ナトリウム―炭酸水素塩・塩化物温泉
適応症:神経痛、疲労回復、婦人病など
泉温:64.8度
湧出量:278リットル/分
ペーハー値:pH6.4
飲泉:可
加水:あり
加温:なし

冨士屋
電話 0735・42・0007
住所 田辺市本宮町川湯1452
料金 1泊2食1万6350円~
交通 紀勢線紀伊田辺駅から発心門王子行きなどバス1時間50分、ふじや前下車すぐ。紀勢線新宮駅から本宮大社前行きバスなど1時間、ふじや前下車すぐ/紀勢道上富田ICから国道42、311号、県道241号経由51キロ。紀勢道尾鷲北ICから国道42、311号など経由80キロ

最終更新:5/22(月) 12:30
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