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「遺影」を荒木経惟が撮影!樹木希林、その半生と家族を語る  [FRaU]

5/22(月) 12:00配信

講談社 JOSEISHI.NET

祈る女性の手――。それだけを写した、一枚の写真がある。今からちょうど10年前、2006年3月7日に文京区の護国寺で、演出家・久世光彦さんの葬儀が営まれた。遺影は、写真家の荒木経惟さんが撮ったものだ。荒木さんは、出棺の際に隣で手を合わせていた女性の手の美しさに目を奪われ、思わずカメラのシャッターを押した。女優・樹木希林さんの手だった。

「何かの時は花がイイ」

 いつかポートレートを撮りたい。そのときは、希林さんの手の写真を収めた『東京人生』という写真集を手渡したい。かねてから、荒木さんはそう話していた。

この日、フォトセッションが始まる前に、荒木さんは希林さんに2冊の写真集をプレゼントした。「盗み撮りしちゃってスイマセン」と言いながら『東京人生』を。もう一冊、自身のデビュー作である『センチメンタルな旅』の復刻版には、その場で、「キキキリンスキアラーキー」とサインした。なんだか「キ」が多い。邪キに元キに陽キに英キ、意キに本キに勇キにキ合……。

実際、撮影はエネルギーを表す気と気のぶつかり合いと相成った。最初に、「花からいきましょう!」と決断したのは荒木さんだ。希林さんが自ら用意した衣装は、花柄のブラウスが3枚と、娘婿である本木雅弘さんが家に置いていったシャツを袖上げしたものが2枚。荒木さんは、最初に花柄のブラウスを選んで言った。「何かの時は花がイイ」と。

 希林さんは撮影の時、スタイリストもヘアメイクもつけない。全部自分で準備する。

「テレビ局なんかでついていてくれるときは別としても、たとえば映画の宣伝なんかでわざわざつけたりすると、宣伝部に負担がかかるわけでしょう? 私の中には、『宣伝部が(費用を)出すならいいじゃない?』という感覚はないの。かといって、『じゃあ私が出します』というほどのものでもない。だって、そのために大勢の人が動いたところで、大して成果も上がっていないのを見てるから(笑)。効率を考えたら、つい『自分でやったほうがいい』と思っちゃうのね」

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