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知られざる「北斎の東海道五十三次」が集結!展覧会「てくてく東海道-北斎と旅する五十三次-」

5/22(月) 17:10配信

サライ.jp

取材・文/藤田麻希

徳川家康が五街道の一つとして最初に整備した東海道は、江戸と天皇の住まう京都を結ぶ大動脈でした。江戸時代も後期になると、参拝や湯治を理由にすれば庶民でも以前より気軽に行き来できるようになり、東海道を歩く旅が盛んになりました。

東海道は名所が多く、数々の絵巻や屏風、浮世絵などに描かれてきました。こう聞いて、まっさきに思い浮かべるのは歌川広重の「東海道五十三次」でしょうか。ゴッホなど西洋の画家に好まれたというエピソードも一因となり、世界的に有名になった浮世絵です。しかし、広重がこのテーマに挑む30年も前に、葛飾北斎が東海道五十三次を描いていることは意外と知られていません。

北斎は、享和から文化年間(1801~18)の中頃にかけて、7種の東海道五十三次のシリーズを完成させました。ちょうど十返舎一九の『東海道中膝栗毛』の影響による、旅行ブームの只中でした。北斎以前にも「見返り美人」で知られる菱川師宣も同テーマの作品を残していますが、ひとつづきになった長い地図に地名が描き込まれている実用的なものでした。北斎は、一図に一宿場を割り当て、名所や名物など、その土地の特徴を表しました。

そんな、北斎が描いた東海道五十三次7種のうち、6種をまとめて鑑賞できる展覧会が、東京の「すみだ北斎美術館」で開かれています。

同館学芸員の山際真穂さんに、本展の見どころについて伺いました。

「とくに注目いただきたいのは『春興五十三駄之内(しゅんきょうごじゅうさんだのうち)』のシリーズです。これは北斎の『東海道五十三次』シリーズ中、唯一の摺物です。

摺物は趣味人のプライベートな楽しみのために制作されたものなので、富士山や波を、空摺りと呼ばれるエンボス加工のような摺りで表現するなど、利益を度外視した凝った技法が用いられています。初摺の揃いの所蔵は現在当館のみで確認されている、貴重な作品です」

北斎の東海道五十三次の特徴は、風景よりも人物の描写や街道沿いの風俗に重きが置かれていることです。その点が広重の作品と異なります。

「広重の東海道五十三次で有名なものは風景を描いたものが多く、大きさは約39×27cmほどと、壁に飾って眺めるのに適したサイズです。一方、北斎の『春興五十三駄之内』は風俗を描いたものが多く、当時の人々が旅先で何を楽しみにしていたのかを知ることができます。また、大きさは16.3×11.4cmほどと小さくかわいらしいサイズで、摺物ならではのエレガントな描写がされており、手にとってじっくり眺めたくなるような魅力があります」

出版後も形をかえながら再版されたり、弟子が画風を継ぎながら描いたり、北斎が描く風俗画としての東海道五十三次には、かなりの需要があったようです。生き生きと表現された旅人や、名所や名物をじっくり眺め、江戸の旅路に思いをはせてみるのはいかがでしょうか。

『開館記念展III てくてく東海道-北斎と旅する五十三次-』
■会期/開催中~2017年6月11日(日)
■会場/すみだ北斎美術館
■住所/東京都墨田区亀沢二丁目7番2号
■電話番号/03-5777-8600(ハローダイヤル)
■開館時間/9時30分~17時30分(入館は閉館の30分前まで)
■休館日/月曜
■アクセス/都営地下鉄大江戸線「両国駅」A3出口より徒歩約5分
JR総武線「両国駅」東口より徒歩約9分

取材・文/藤田麻希
美術ライター。明治学院大学大学院芸術学専攻修了。『美術手帖』などへの寄稿ほか、『日本美術全集』『超絶技巧!明治工芸の粋』『村上隆のスーパーフラット・コレクション』など展覧会図録や書籍の編集・執筆も担当。

最終更新:5/22(月) 17:10
サライ.jp