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東欧出身の元Jリーグ監督「日本の子供は可哀想」 才能を埋没させる育成現場の“無駄”とは

5/22(月) 11:58配信

THE ANSWER

来日20年超のゼムノビッチ氏が見る日本の育成事情「同じような選手ばかりが育ってくる」

「日本で一番良いサッカーをしているのは小学6年生。なぜなら小学生は、学年ごとにチームがあるからね」――ズドラブコ・ゼムノビッチ

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 セルビア出身のズドラブコ・ゼムノビッチ氏は、1995年に来日してからあらゆるカテゴリーの指導を経験してきた。2000年から02年まで清水エスパルスの監督としてプロの頂点を競ったが、一方でアマチュアも、大人から高校、さらには小学生までの現場を知り尽くしている。

「セルビアでは、8歳から18歳まで1歳刻みでチームがあり、しかもずっと同じクラブで過ごすことが多い。でも日本は中学、高校と3学年で一つのチームしかない。これでは18歳までに4~5年間も無駄な時間を過ごすことになる。それに小中高で3度も監督が代わることもある。こうしたロスの多い方式を変えていかなければいけない」

 この言葉は9年前のインタビュー時のもので、その後はJクラブを中心に少しずつ改革は進んだ。部活でも複数のチームがリーグに参加できる仕組みが進んではいるが、それでもまだまだ無駄は多い。

「習志野高校で指導をした時は、100人以上の部員が同じグラウンドで練習をしていた。指導者は、なんとか全員がボールに触れるように工夫をするわけだけど、結局、みんなが同じメニューに取り組むことになる。ポジションに即したトレーニングはできない。だから、同じような選手ばかりが育ってくることになる」

技術は「練習すれば上達する」が、アイデアは教えられない

 日本にも才能豊かな小学生が少なくないことは、バルセロナへ久保建英(現FC東京U-18)、レアル・マドリードへ中井卓大君が加入したことでも証明済みだ。だが、せっかくの才能を見逃すことなく、最大限に開花させるシステムが整っていない。

「日本の子供たちは可哀想だよ。監督、コーチ、さらには親からも、いろんなことを言われる。ある局面で3つの選択肢があっても、コーチに『右だ』と言われたら、右に蹴るしかない。日本の子供たちは、怒られ続けているからね。でも、ピクシー(ドラガン・ストイコビッチ)はコーチに指示されたら、絶対に逆のことをしたそうだよ」

 それが相手の裏を取るということだ。

「テクニックは練習をすれば上達する。でもアイデアは、持って生まれたものだ。子供たちには、もっと自由にアイデアを発揮させなければならない。以前、(ジェフユナイテッド)千葉でプレーをしていたゴラン・バシリエビッチ(1995年に在籍)が言っていたよ。ピクシーの一瞬のアイデアは、我々が一晩中かけて考えても思いつかないんだから、ってね」

 今、日本でもサッカー選手は、子供たちが最も憧れる職業である。だが、せっかくの才能を最大限に広げ、創造性豊かなフットボーラーを育むためのシステム整備や、指導者の意思統一は発展途上である。

◇加部究(かべ・きわむ)

 1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(ともにカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

ジ・アンサー編集部●文 text by The Answer

最終更新:5/22(月) 12:28
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