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【U20】久保建英と堂安律、共鳴した2人の感性。守備陣も試合中に立て直し。攻守両面に収穫は大

5/22(月) 12:13配信

フットボールチャンネル

 21日、FIFA U-20ワールドカップのグループステージ第1節・U-20南アフリカ代表戦に臨んだU-20日本代表。いきなり先制点を奪われるという予期せぬ展開でのスタートとなったが、小川航基と堂安律という2大エースがそれぞれゴールを奪い逆転勝利をおさめた。序盤こそあたふたした守備陣も時間の経過とともに安定。攻守両面で収穫のある初戦となった。(取材・文:元川悦子【水原】)

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●アジア1次・最終予選は無失点も、本大会でいきなり失点

 日本にとって10年ぶりのU-20ワールドカップが21日、韓国・水原で幕を開けた。初戦・南アフリカ戦はいきなり先制点を奪われるという予期せぬ展開で、チーム全体に暗雲が立ち込めたが、小川航基(磐田)・堂安律(G大阪)の両点取り屋にゴールが飛び出し、2-1の逆転勝ち。苦手なアフリカ勢を撃破して白星発進という理想通りの好スタートを切ることに成功した。

 前日の予想通り、2トップに小川と岩崎悠人(京都)、ボランチに板倉滉(川崎)と坂井大将(大分)らが入るスタメンで大一番に挑んだ日本。最終予選からの課題である「入りの悪さ」を修正しなければならなかったが、この日はアフリカ勢特有のスピードとパワーに頭から翻弄されることになった。

 南アが先制点を奪ったのは、前半開始早々の8分。中盤のダボ・セレ(21番)の浮き球のパスにグランド・マージマン(18番)が反応し、オフサイドギリギリのタイミングでゴール前に侵入してきた。「自分はオフサイドで止める、(右サイドバックの初瀬)亮君はついていくという形で連携が合っていなかった」とDF冨安健洋(福岡)は反省したが、後手を踏んだのは事実。

 次の瞬間、マージマンのシュートを止めようとカバーに入った彼にボールが直撃し、そのままゴールに入ってしまった。「後から聞いたところではシュートも外れていたらしい。ショックが大きかった」と日本屈指の長身DFは自らのミスを悔やむしかなかった。

 アジア1次・最終予選を通じて無失点という堅守を誇る日本にとって、この1点は公式戦初失点。チームに少なからず衝撃が走った。そこから15~20分頃までは混乱が続く。相手のロングボールとFW陣の裏への飛び出しに苦しみ、守備陣が肝を冷やす場面が頻発したのだ。

●攻撃陣のギアを一段階あげた久保建英

 この苦境を何とかしのぎ、時間が経過するにつれて、日本は相手のリズムや身体能力に慣れ、逆に主導権を握るようになる。「前半の後半から徐々にボールが回り始めて、後半になればもっとあいてくると思った。全然慌てることはなかった」と堂安が言うように、小川が2度の決定機を迎えるなど、得点が生まれそうなムードはじわじわと高まっていた。

 それを具現化したのが、後半開始早々の3分だった。左サイドで高い位置に上がった舩木翔(C大阪)とのワンツーから岩崎が中央に鋭いボールを送った瞬間、エース小川がゴール前で反応。確実にシュートを流し込み、ついに同点に追いつく。「自分が取らなきゃいけないっていう責任がある」と事前合宿から繰り返し強調していた背番号9の待望の一発でチームは勢いに乗った。

 そこで内山監督は、すかさずジョーカー・久保建英(FC東京U-18)を三好康児(川崎)に代えて投入。彼と小川を2トップで組ませ、岩崎を左サイドに移動させる布陣変更を行った。「建英は非常にクオリティの高い選手なんで、チャンスメークをしてくれると思った」と指揮官も絶大な期待を寄せていた。

 バルセロナ下部組織出身の15歳のアタッカーへの関心は現地でも極めて高く、彼の一挙手一投足は大いに注目されていた。が、本人は周囲の雑音を一切気にせず、いきなりファーストタッチで小川に切れ味スルーパスを出してみせる。試合を視察した日本サッカー協会の西野朗技術委員長も「2つ3つ先の展開が見えているし、相手が3~4人いても平気でスルーパスを出そうとしていた」と強心臓ぶりを絶賛したが、この若武者の登場で日本攻撃陣のギアがもう一段階上がった。

●「タケなら走ってるかなと思ってパス&ゴーで行った」(堂安)

 迎えた後半27分、日本は左サイドを上がった舩木のパスをペナルティエリア左隅で受けた堂安が久保にダイレクトパス。久保はノールックでリターンを送り、堂安が左足を一閃。ついに逆転弾を叩き出すことに成功した。

「若干ボールが伸びた部分があってピッチも滑ったんで、その分、見る余裕があった。最初に小川選手が入ってるのは見えたんですけど、クロスを上げようとした時に堂安選手から『後ろ』と言われた。だいたいの位置をつかんでたんで、そのままクロスを上げました」と久保は語った。

 そして堂安も「自分は感覚で出したというか、タケなら走ってるかなと思ってパス&ゴーで行った。絶対、航基がニアにいてくれると思ってたんで、自分はマイナスに走ってどっちに出してもゴールになるような形で入って行きました。タケはホントに賢い選手なんでナイスボールを出してくれた」と2点目のお膳立てに感謝した。

 ダブルレフティの「あうんの呼吸」が日本を逆転勝利へと導く一撃を生み出したと言っても過言ではない。2人は年齢的には3歳違いだが、2020年東京五輪、その後のA代表でコンビを組み続ける可能性が高い。近未来の日本攻撃陣を担う2人の鋭い感性が合致したことは今後に向けて非常に大きな一歩ではないか。

 小川と堂安、そして久保といった前線の奮起に守備陣も呼応する。序盤は不安定さを垣間見せていた冨安が前半終わり頃から相手のスピードに慣れて目覚ましい変貌ぶりを見せたうえ、中山も本来の落ち着きを取り戻す。前半は相手に1対1でアッサリとかわされる場面が目立った舩木も攻守のバランスを意識するようになるなど、守備陣が高い修正能力を示したのだ。

「試合の中でだんだんスピードにも慣れてきたし、後半はしっかり対応できたかなと思います。最後の体を張ることの重要性は内山さんにもアビスパの井原(正巳)さんにも言われているので、そこは意識したつもりです」と冨安は大きな手ごたえをのぞかせた。

●「1-0で我慢してくれたからこそ、逆転勝ちまで持って行けた」(内山監督)

 彼を筆頭に守備陣が1つのミスをズルズルと引っ張らず、短時間で切り替えて、失点1でとどめたことも大きな収穫だ。

 内山監督も「このチームは親善試合でも1点食らったら2点3点と立て続けに失点して自分たちでゲームを難しくする傾向が強かったが、今日は1-0で我慢してくれた。だからこそ、逆転勝ちまで持って行けた。この経験がこれからのサッカー人生に役立つと思う」と嬉しそうにコメントしていたが、彼らが後半のようなパフォーマンスを維持してくれれば、今大会での上位躍進への道も開けてくるはずだ。

「非常に大きな勝ち点3を持って、次の試合に気持ちよくのぞめると思います」と久保は話したが、24日の次戦・ウルグアイ戦に連勝できれば、1次リーグ突破が決まる可能性が高い。

 ウルグアイもイタリアを1-0で下して勢いに乗っており、日本に対しても凄まじい迫力で対峙してくるだろう。相手のフィジカルコンタクトの強さを考えると、久保の先発抜擢の確率は低いかもしれないが、本人が「ここに呼ばれている以上、頭から出たいのは当然」と語気を強めたように、貪欲にスタメンの座を取りに行くはず。

 そういう競争意識の高まりも、チームに前向きな変化をもたらすだろう。南ア戦で得た攻守両面の収穫をこの先に生かして、選手たちには完成度、成熟度を高めて行ってほしいものだ。

(取材・文:元川悦子【水原】)

フットボールチャンネル編集部

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