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電通が鬼十則を“仏十則”に「創り出したゆとりで、旅に」

5/23(火) 7:00配信

NEWS ポストセブン

「取り組んだら『放すな』、殺されても放すな、目的完遂までは……」──第四代社長・吉田秀雄氏が電通マンの心構えを説いた「鬼十則」は、新入社員過労自殺に端を発する違法残業問題を受けて、社員手帳から姿を消した。

 5月12日、その「鬼十則」に変わる新たな心構えが、社員向け掲示板に掲載された。「新しい電通を創る」と題された文書は、〈電通は何のために存在するのか?〉という問いかけから始まる。

〈いま、目の前にある課題。/「法令遵守」と「社員の健康」/コンディションを犠牲にしてでも勝ちを追い求めた。/間違っていた。〉

 ポエム調の文体で、これまでの鬼十則の精神を否定するかのような内容が60ページ以上にわたって続き、こう結ばれる。

〈今までの仕事のやり方をいったんリセットする。最初はうまくいかなくても、無理だと思っていても、それが当たり前になる日がきっとくる。/創り出したゆとりで、旅に出る、書を読む、家族と過ごす、新しいことを始める、自分の成長を実感する。(中略)2年後、5年後、10年後、電通に入って良かったと心から思える。〉

 仕事の厳しさなどどこへやら、もはや“仏十則”とでも言うべき変わりようである。電通はこの文書の意図についてこう説明する。

「当社では労働環境改革基本計画の策定に向けて、各種資料を作成し、社員との対話や外部有識者との意見交換を継続的に行っております。当該資料は社員との対話のための資料の一つです。引き続き、社内外からのさまざまな意見や提案をいただき、各種施策案を検証した上で最終的に基本計画として取りまとめ、社内外に発表させていただく予定でおります」

 しかし、激務で知られる電通で本当にこんな働き方が可能なのか。『電通と博報堂は何をしているのか』の著者でネットニュース編集者、中川淳一郎氏は文書をこう読み解く。

「電通が反省しているのは確かでしょうが、これは社内外への“ポーズ”という側面もあるはず。世界一の広告会社がこんなに“仏”で仕事が永続的に回るとも思えない。実際には働き方をすぐに変えるのは難しくても、鬼十則をやめて“ホワイト企業”になりました、とマスコミや取引先、内定者の親御さんなどに説明しやすくなりますから」

 最大の問題は、肝心の文書が「存在すら社員のほとんどに知られていない」(電通社員)こと。まずは社内への“宣伝広告”が必要だ。

※週刊ポスト2017年6月2日号