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まさか自分が…多くの親に潜む「毒親」の兆候

5/23(火) 6:00配信

東洋経済オンライン

 「毒親」という言葉を聞いたことがありますか?  これは暴力、暴言、ネグレクト、過干渉などによって、子どもに毒のような悪影響を及ぼす親のことです。特に自覚がないのが過干渉な親です。

 読者の中には、「自分が毒親だなんて。そんなはずはない」と思っている人が多いと思います。確かに「毒親」とは強い言葉で、まさか自分のことだとは思いにくいでしょう。でも、毒親のほとんどは自覚がないままそうなっているのです。

 筆者は小学校教師として、そしてその後は教育評論家としていろいろな例を見てきましたが、今回は微妙な過干渉によって子どもを傷つけてしまった例を紹介します。ここから、お子さんとの接し方を考えていただくきっかけになればと思います。

■母親の期待に従い続けた優等生のケース

 出版社で働きながら、2人の子どもを育てている30代の佐藤さん(仮名)。親の過干渉に長い間苦しんできたひとりです。

 彼女の母親は、子どもの頃ピアノとダンスをやりたかったけれど、できませんでした。それで、娘である佐藤さんを幼稚園の年長の頃からピアノ教室とダンス教室に通わせました。

 佐藤さん自身は絵を描いたりお話を作ったりするのが好きだったので、気乗りがしませんでした。でも、根っからまじめな性格なので、ほとんど休むことなく中学3年生まで通い続けました。そして、小学4年生の頃に、母親との何気ない会話の中で、「お母さんはピアノとダンスをやりたかったけどできなかった。だから、私にやらせたんだ」と気づきました。

 佐藤さんが小学5年生の頃、母親は中学受験の話をし始めました。自分は○○中学に行ったけど、本当は□□学園に行きたかった。街中で□□学園に合格した友達に会うと何となくみじめな気持ちになった。あなたなら□□学園も受かるかも……。だいたいこのような話だったそうです。

母親の気持ちを察して

 佐藤さんが母親の気持ちを察し、ある日「私、□□学園に行きたい」と言うと、母親はとても喜びました。もともと勉強はかなりできたほうでしたし、持ち前のまじめさから塾にも休むことなく通い、□□学園に合格することができました。

 いよいよ小学校を卒業して□□学園の中学に入るというとき、母親はこう言いました。

 「お母さんは中学のときに体操部に入ってすごくよかった。体も柔らかくなったし、姿勢もよくなった」。それを聞いた佐藤さんは、「お母さんは私に体操部に入って欲しいんだ」と気がつきました。実は、佐藤さんは漠然と「美術部に入ろうかな」と思っていたのですが、絶対にというほどでもなかったので、体操部に入ることにしました。そして、高校を卒業するまで6年間も体操部を続けたのです。

■就職にまで口を出す母親

 母親の過干渉は、大学に入学しても続きました。高校を卒業した佐藤さんは□□学園の系列の大学に入学。そして、かねてから興味があった絵本サークルに入りました。小さい頃から絵を描いたりお話を作ったりするのが好きだったので、自然に絵本に興味を持ったのです。そして、絵本サークルで鈴木さん(仮名)という友達ができました。

 鈴木さんは、系列の中高一貫校とは別の高校の出身。すごく積極的で、やる気と行動力に満ちあふれた人です。今まで佐藤さんが接したことのないようなタイプで、非常に刺激されました。

 鈴木さんは、いつも明るく元気で、自分がやりたいことをどんどんやっていきます。授業でわからないことがあれば、先生に質問に行きます。興味を持った絵本作家には直接会いに行きます。好きな画家の展覧会があれば、たとえ遠い地方都市でも見に行きます。佐藤さんが鈴木さんに聞いたところでは、小さい頃から自分がやりたいことをどんどんやってきたそうです。そして、両親はいつもそれを応援してくれたそうです。

 鈴木さんの話を聞いて、佐藤さんは自分との違いにショックを受けました。鈴木さんは、自分がやりたいと思った習い事をやってきましたし、□□学園も自分の意思で選んだそうです。また、服の買い方ひとつ取っても違いました。佐藤さんの場合は、自分が着たいと思った服があっても、母親が気に入らないと買ってもらえませんでした。佐藤さんが欲しがっても、母親が「黄色かあ……。それより緑のほうが似合うと思うよ」というように干渉してくることが多かったのです。それに対して、鈴木さんの場合は、自分が着たいと思った服があれば親は買ってくれたそうです。

 佐藤さんは、今までの自分の生活や母親との関係について考え始めました。そんな中、佐藤さんが大学2年生になる頃、母親は大学卒業後のことを口にするようになりました。「やっぱり、公務員っていいわよね。お給料もいいし、安定してるし」「今日、区役所に行ってきたんだけど、冷暖房が完備で快適だわ。ああいう所で働けたら最高だよね」。

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