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速水健朗さんが分析!「産地直送ビジネスの今」 [FRaU]

5/24(水) 19:00配信

講談社 JOSEISHI.NET

最近スーパーなどでもよく目にするようになった「産地直送」という言葉。
『フード左翼とフード右翼 食で分断される日本人』の著者、速水健朗が流通の観点から、産直ビジネスに切り込む。

産地直送は 「信頼」や「安全」を保証し、 生産者との触れ合いを可能にする

 ケースA。オーガニックな食材を扱うレストランでは、食材の産地や農場の名前が黒板などに事細かに手書きで示されている。皿に料理をきれいに飾り付けることと同様、いやむしろそれ以上にこだわる要素なのかもしれない。

 独自の食材調達は、レストランにとっての命だし、それは美味しさへのこだわりであると同時に食の安全に対する「品質保証」の意味が強い。現代における「ブランド」とは、表層的な記号やお飾りなのではなく、「信頼」や「安全」そのものを保証するためのものになっている。

 ケースB。週末の午前中などの都心部では、毎週ファーマーズマーケットが開催されるようになっている。普段、スーパーマーケットの野菜売り場では見かけることのない珍しい、そして見た目のいい野菜を見つけるなら、ファーマーズマーケットに出かけてみるべきだろう。行ってみればわかるが、直接売り手とコミュニケーションをとることができるショッピングは思いのほか楽しい。また、生産者の声を直接聞くことができるというのは、スーパーでも商店街の八百屋でもできない体験である。

 こだわりをもって野菜をつくっている人たちというと、気むずかしかったり説教臭かったりするんじゃないかというイメージもあるけど、野菜をつくるのが好きという理由で携わっている人たちが多い。

食の流通の変化を生んだ 「中抜き」という構造

さて、このA、Bの2つは、どちらもここ10年以内によく見かけるようになった新たな生活の一部である。これは大都市部に限定しての話だが、まずオーガニックなレストランが増えた。それは、本当にこの10年くらいのことである。週末のファーマーズマーケットも、明らかに利用者も参加者も増え続けている。そして、この2つに共通するものがある。これらは、食の流通における「中抜き」の現在形を示すものなのだ。

 従来、食の流通は、米、米以外の農産物、青果、水産物、加工食品などでは、生産者と消費者の間に、卸売り、仲卸、小売りといった業者が仲介してきた。さらには、農業の世界では、生産、流通において独占的に強い立場を維持してきた農協(JAグループ)、漁協などが個々の農家の自立を妨げてきた面もあった。

 だがこれらを中抜きする新しい食の流通が生まれつつある。「産地直送」という言葉から連想されるのは、採れたての新鮮な食品が家に届くというイメージかもしれない。だが、少しその枠を広げて考えるなら「中抜き」でリーチすることができる食材との出会いを「産地直送」と名付けることができるだろう。そして、「産地直送」に出会える機会は、いま急速に増えつつある。

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