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世界でもっとも多く採用されている通信方式「2G(GSM)」がシンガポールでついに全面終了。その影響は?

5/24(水) 9:10配信

HARBOR BUSINESS Online

 シンガポールで23年間にもわたり提供されたGSM方式による2Gサービスが役目を終えた。全世界では今もなおGSM方式の利用者が多いが、シンガポールで全社が2Gサービスを終了した背景とその影響を解説する。

◆シンガポールで2Gが終了!

 シンガポールではシングテル・モバイル・シンガポールが1994年に2GとしてGSM方式を最初に導入し、M1とスターハブ・モバイルもそれに続いた。その後、3社とも3GとしてW-CDMA方式、4GとしてLTE方式を順次導入し、当時の世界最速となる下り最大300Mbpsの高速データ通信も早期に商用化した。

 通信技術の高度化が進む中、2015年6月15日にシンガポール政府組織で電気通信分野を監督する情報通信開発庁(現・情報通信メディア開発庁)と携帯電話事業者3社は2017年3月31日をもって2Gサービスの提供を終了し、2017年4月1日より停波すると連名で発表した。

 情報通信開発庁は2Gサービスのみに対応した端末の国内販売に必要な認証を2015年9月15日に終了し、3社は2016年11月15日以降に開通する前払い式SIMカードは2Gサービスを利用不可とした。さらに、改組後の情報通信メディア開発庁は2017年1月1日以降、小売事業者に対して2Gサービスのみに対応した端末の国内利用を目的とする販売を禁止し、違反すれば罰金の可能性があると告知した。並行して2Gサービスの終了に関して周知徹底し、一部の携帯電話事業者は店頭で同国の公用語である4言語で案内を掲載するなど、政府組織と携帯電話事業者が共同で円滑に2Gサービスを終了できるよう努めた。

 そして、2017年3月31日に予定通り2Gサービスを終了し、停波は2017年4月1日に開始して2017年4月18日までに完了した。

◆2Gを終了した背景は?

 通信機器ベンダのエリクソンが公開した報告書によると、2016年時点の資料ではあるが、世界で最も利用者が多い携帯電話の通信規格がGSM方式だ。しかし、シンガポールでは4G/3Gサービスのエリアが十分に整備され、世界的に見てもスマートフォン(スマホ)の普及率が高い同国では新しいスマホへの買い替えも進み、2Gサービスのみに対応した端末の利用者はごくわずかとなっていた。

 また、データ通信量が増大して高速かつ快適な通信の実現にはより多くの周波数が必要で、GSM方式で利用する周波数をLTE方式に転用し、4Gサービスの強化が適切とされたのだ。

 携帯電話事業者3社はこれらの背景から2Gサービスを継続する利点は少ないと判断し、2Gサービスを終える意向を情報通信開発庁に通達した。情報通信開発庁は3社の判断に同意し、GSM方式で利用する周波数の利用権が満期を迎える2017年3月31日に2Gサービスを終了すると決めた。

 LTE方式への移行を目的として一国のすべての携帯電話事業者がGSM方式を終了した事例はシンガポールが世界初となった。なお、日本はGSM方式を導入しなかった極めて少ない国のひとつである。

◆高齢化社会ゆえの問題も

 携帯電話事業者3社が主張するように2Gサービスの利用者はごくわずかであったが、2Gサービスの利用を継続する顧客には高齢者の割合が高かった。

 3社は2Gサービスの利用者を4G/3Gサービスへ移行させるため、低価格なスマホを用意するなど巻き取り策を実施したが、簡単な操作体系を採用した高齢者向け携帯電話からスマホへの乗り換えに不安を抱える高齢者は円滑に移行しなかった。

 なお、高齢化社会のシンガポールでは高齢者向け携帯電話も一定の需要があり、2Gサービスのみに対応した高齢者向け携帯電話もそれなりに流通していたのだ。

 そのため、情報通信メディア開発庁は高齢者に向けてスマホ教室を案内し、政府組織までもが高齢者のスマホに対する不安を解消して移行できるよう支援したが、それでも移行しない高齢者のために最大手のシングテル・モバイル・シンガポールは3Gサービスに対応した高齢者向け携帯電話の販売を開始して高齢者を救済する取り組みが見られた。

◆利用者への影響は?

 NTTドコモやKDDIなど日本の携帯電話事業者も告知したように、シンガポールでは国際ローミングで2Gサービスが利用不可となる。国際ローミングは4G/3Gサービスで利用可能で、携帯電話事業者から販売された端末であれば公式ウェブサイトで利用可否を確認できるため、渡航前に確認すると無難だろう。

 また、注意したいのが2枚のSIMカードを挿入して2回線を同時待受できるデュアルSIM端末の扱いである。優先のSIMカードは4G/3Gサービスを使えても第二のSIMカードは2Gサービスのみ使える端末は多く、そのような端末では同国でデュアルSIMの機能を活用できない。

 シンガポールは外国人労働者が多いことでも知られるが、デュアルSIMの機能を活用して同国のSIMカードと国際ローミングで母国のSIMカードを同時待受で使う外国人労働者も多く、同国の移民労働者センターが注意喚起を公表するほどであった。第二のSIMカードで3Gサービスを使える端末は増加しており、同国でデュアルSIMの機能を利用したい場合は第二のSIMカードで3Gサービスを使える端末を選ぶようにしたい。

 なお、シンガポールは外国人旅行者向け前払い式SIMカードが充実し、携帯電話事業者の販売店のほか両替所などでも購入できる。両替所やSIMカードでは2Gサービスは利用不可と案内するなど、同国の通信事情に精通していない外国人への配慮も感じられた。

 GSM方式はオーストラリアや米国で一部の携帯電話事業者が終了し、さらに台湾やオーストラリアでは2017年中にすべての携帯電話事業者が終了する見込み。いずれも日本人渡航者が多い国・地域であり、携帯電話の利用時はシンガポールと同様に注意したい。

<取材・文・撮影/田村和輝>

ハーバー・ビジネス・オンライン

最終更新:5/24(水) 13:18
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