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増加するアボカド需要とNAFTA見直しの板挟みでトランプが選んだ「切り札」とは?

5/24(水) 16:20配信

HARBOR BUSINESS Online

 メキシコの経済紙『Economiahoy』が5月19日付で<『トランプはコロンビアのアボカドをもっと買うようになる。メキシコにとって危険か?』>という見出しでメキシコ産アボカドの米国での市場が縮小されるのではないかという懸念を表明したのである。

 事の発端はコロンビアのサントス大統領が5月17日にホワイトハウスを訪問し、トランプ大統領と会談したことであった。その折に、トランプ大統領が「コロンビア産のアボカドの米国への輸出に協力しよう」とサントス大統領に語ったというのである。それを、コロンビアのマリア・ラコントゥレ商業・産業・観光大臣が同月19日に正式に表明したからである。

 しかも、1970年代からコロンビアと米国は麻薬組織の撲滅で密接な関係を維持している。米国にとって南米で最も信頼している国がコロンビアなのである。

 さらに、メキシコのアボカド生産業者の不安を煽っているのはコロンビア産アボカドだけではない。天候不順と洪水で<収穫量が20%減少>していることもある。同様に、米国産も<60%の収穫が減少>しているそうだ。その影響で、<13ドルしていた10キログラム箱入りが、27ドルまで値上がり>しているというのである。この価格の高騰で、米国のレストランではメニューから外したところもあるという。(参照:「Sin Embargo」)

◆供給不足に陥っていたアメリカのアボカド市場

 アボカドの生産では、メキシコが世界で断突の生産量を誇っている。その生産量は米国、ドミニカ共和国、コロンビア、ブラジル、ペルーそしてチリの生産量を合わせたものに匹敵するほどである。そのメキシコで生産されたアボカドの8割が米国に輸出されている。それは<年間で20億ドル(2200億円)のビジネス>である。(参照:「Sin Embargo」)

 最近は中国や日本などの需要も伸びており、またヨーロッパ市場もここ数年<30%需要が増加>しているという。

 こうしたメキシコの供給能力も手伝って、米国でのアボカドの一人当たりの消費は<2006年の15キログラムから現在では30キログラム>に増加している。それは米国の<6割の家庭でアボカドが消費されている>ことになるとしている。(参照:「Sin Embargo」、「El Pais」)

 しかし、そこに来てトランプ大統領が誕生した。トランプ大統領にとって、メキシコとの自由貿易協定(NAFTA)の見直しをするといった以上、メキシコ産アボカドへの依存度を減少させたい。とすれば、ここでアボカドの供給不足を補う為の供給国としてコロンビアとの関係を良好にすれば、今後のメキシコとの交渉において都合が良いというわけだ。その意味もあって、今回トランプ大統領がサントス大統領にコロンビア産アボカドの米国への輸出に協力するという姿勢を示したようである。

 更に、米国は国内での供給不足を補うためにペルーからの輸入にも関心を示しているという。メキシコがアボカドの最大供給国になる前は、米国は主にチリから輸入していた。

◆コロンビア産は米市場に食い込むか?

 米国で生産されているアボカドなどへの害虫の感染を恐れて1914年から1997年まで米国はメキシコ産アボカドの輸入を禁止していた。そして、輸入を解禁した時も60社の生産業者と5社の出荷業者を認定しただけであった。

 解禁から20年経過した今、メキシコ産アボカドは米国市場ではなくてはならない果物として不動の地位を築き挙げている。しかし、メキシコ嫌いのトランプ大統領の後押しもあって、米国市場でコロンビア産アボカドがメキシコ産アボカドの市場に食い込むのではないかという恐れがメキシコのアボカド生産業者の間で生じているというわけである。

<文/白石和幸>

しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。

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最終更新:5/24(水) 16:20
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