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お洒落なヤツは仕事もできる 「ダボダボな服、着てたらあかんで」 伊藤忠・岡藤社長

5/25(木) 7:47配信

NIKKEI STYLE

 「異能の経営者」とも呼ばれる伊藤忠商事の岡藤正広社長。繊維部門の出身でブランドビジネスを手がけてきただけに、ファッションには一家言を持つ。前回掲載「ニッポンのビジネスマン、なんで服に関心ないんやろ」に続き、岡藤社長にファッションとビジネスについて聞いた。

 ――自宅には数百着のスーツやジャケットがあると聞きました。

 「もう、どんどん捨てていっているからね。いまはファッションがどんどん変化しているでしょ。全体的にシルエットがタイトになっているんじゃないかな。だから昔のやつを着ているとダサく見えるわね。そういうトレンドに敏感に反応しないで、昔のダボダボな服を『楽やから』といって着ていたらあかんわな」
 「もちろん、ちょっとタイトだと窮屈やけど。でも、見ただけでわかるんだよね。若い人が着てる細身のやつを、そこそこの年いっている人が着てたら、『あ、おしゃれに関心あんな』って。昔のダボッとしたのを着ているのは、『これは関心がないな』となる」

■装いのためには体も絞らんとね

 「そういうことに、合わしていかないと。そのためには、体も絞らんとね。食生活も考えたら、健康につながる。ファッションに関心のない人は、食べるもの、飲むもの、日常生活のコントロールに頓着していないようにみえる。どんどん、悪い方に行きかねないのでは。心身ともにね。こうしたことは『やっぱり大事やな』という気がするな」

 ――装いで心がけていることはありますか。

 「全体を統一することかな、服だけサラの、ネクタイだけサラのものだと、浮いてしまうわな。やっぱり靴、靴下から、ネクタイ、シャツ、時計、メガネまで、全部あわせる。お金も要るけど、そういう努力をしないと。いつも新しいものを買ったときに、それにあったトータルコーディネートをしようと心がけている」
 「それは服だけじゃない。やっぱり、靴から靴下から、いろんなものをね、そんなに高級なものでなくていいけども、そろえていくということをした方が、全てがいい方にいくと思うわ」

 ――毎日の装いはご自分で選ばれているのですか。

 「それはそうやろ、誰が選ぶんや(笑)。だけど、よく見てると同じのばっかり。ちょっと変わったストライプとか、チェックなんかだと、シーズンに1、2回しか着られない。それを着ると、よく目立つから、『また同じもん、着とる』という感じになってしまうので、どうしても紺とかグレーになる」
 「ただ、同じ紺でも、いい縫製で、いい素材のものを選ぶようにしている。例えば、『スーパー160』(原毛の太さが15.5マイクロ=マイクロは100万分の1=メートルの生地)とか、そういうファインな生地でつくったものは、シワになりやすいけども、シワがとれるのも早い。おまけに光沢からして全然違うわな」

 「ブランドにはこだわらない。もちろん、いいブランドで、いい商品というのはあるんですよ。本当にこだわっているブランドなら、『安心だ』と思って買いますよね。ブランドというのは、そうならないとだめだね。たまたまいいものがあって、買ったらよかった。それがこういうブランドやった。次に買っても裏切らない。すると、そのブランドに対する信頼ができる。逆もあるわな。こういうブランドやと思って買ってみたら、なんか悪かったと。そのブランドには信頼をおけないからな」

 ――ブランドとのライセンス契約でも、必ずご自身で商品を試してきたと聞きました。

 「もちろん。ただし、自分が好きなブランドを導入するんじゃなくてね、お客さんが『これや』というものを取ってくる。それは必ず、自分で着てみる」
 「この前もね、こんなことがあった。スカルとバニーのロゴの米国ブランド『サイコバニー』、あれをうちが導入したということで、そこのシャツを着たらね、袖口がちょっと普通よりも大きいんですよ。それで『ちょっと大きすぎるんちゃうか』といったら、『いやいやこれ、カフスもできるようになっています』と。『カジュアルでカフスするんか』といったら、『今の若い人は、カジュアルでもカフスします』。だからぼくもカフスをしてみた。若者のファッション、こうやって常に変化するから、勉強になるわな。着てみないとわからへん」

 ――最新のトレンドをどうやって知るのですか。

 「暇だったらよくお店に行っています。例えば、東京・原宿のキャットストリートに靴下のショップがあるんですよ。うちの事業会社がやっている、北欧生まれの『ハッピーソックス』というお店なんですけどね。そこへ行って商品、買ってきたんですよ。外国人のお客さんが多いから、商品のサイズもやっぱり大きいんだよ。だから女性用のちっさいやつで、いい柄のやつを買ってみた」
 「無地であればビジネスやけど、そうじゃないから、『これ、どういうときに履くのか』ということを考えながら買った。このあいだの日曜、高校の同窓会が大阪であって、上はまあ普通のジャケットやったんやけど、靴下はそこで買ったものにした。何かのはずみに、同級生が携帯電話を落とし、それを拾ってぱっと見て、『岡藤、えらいおしゃれな靴下やな』と。こういう、話になるわけだよ」

■トレンドを取り込む積極性 ビジネスにもつながる

 「だから、試行錯誤というか、いろんなところに、そういったものを着ていったりして、お客さんや周りの反応を見ることで、勉強になるわけや。そういうことを全く経験しない人と、積極的に経験をして、情報を取る人とでは、おのずと差が出てくる。これ、ファッションだけではなくて、他の産業界、日本のビジネス全体につながっていることなんだよ」

 ――ご自身にとって、ファッションとは何でしょうか。

 「ファッションというのは、服だけに限定されるものじゃなくてね、ライフスタイル全体でも、さらにいえば、世の中全体にとって、ファッションというものが大きな意味を持っていると、力説したい」
 「ファッションのないものは、ないでしょ。車から何からそうやけど、あらゆるものにファッションがあるわけですよ。それはデザインだけでなくて、『ファッション』という大きなくくりのものなんです。だからこそ、ファッションがいかに大事か」
 「そして、ファッションは生活を豊かにしてくれます。生活を豊かにすることで、短い人生をエンジョイできるわけです。だから年いって、『ファッションなんて関係ないよ』といっていると、急に年、いってしまうと思うね」
 「ライフスタイルから、食事から、お皿の並べ方から、家具から。ね、なんかあるでしょいろんな。外に出て、歩くときにもファッションがあると思うんだよ。だから、世の中のすべてがファッション。それをどんどん勉強することによって、豊かな生活はもちろん、ビジネスとか、様々なところでも進化していくことができる、という気がします」

(聞き手は平片均也)

 前回掲載「ニッポンのビジネスマン、なんで服に関心ないんやろ」では、デザインとブランドの弱さが、ファッションビジネスにとどまらず、日本の産業全体の弱点となっているとの持論を語ってもらいました。

「リーダーが語る 仕事の装い」は随時掲載です。

最終更新:5/25(木) 7:47
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