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飯テロ時代劇!ドラマ『みをつくし料理帖』が描く江戸のリアル

5/25(木) 19:10配信

サライ.jp

文/堀口茉純(お江戸ル、歴史作家)

NHKの土曜ドラマ『みをつくし料理帖』が面白い。主人公の澪役を演じる黒木華さんはじめ登場人物の配役がイメージにピッタリ。高田郁さんの同名の原作がそのまま立体化したような印象を受け、いち原作ファンとしてとても嬉しかった。

また江戸時代の料理事情を丁寧に再現している点が非常に画期的である。例えば一般的な時代劇での飲食店のシーンには当然のように机や椅子が備え付けられているものだが、『みをつくし料理帖』で澪が務めている江戸の料理屋・つる家のセットにはこれが無い。外国の文化が本格的に流入する以前の江戸時代当時の生活習慣を考えれば机や椅子が無いのが当たり前。時代考証的な観点で見れば、正しいのは『みをつくし料理帖』のほうだ。

このため料理人である澪は床にまな板を置いて調理し、客たちも皿を座敷に置いたまま胡坐を掻いたような状態で箸をすすめるというシーンがあった。現在の感覚で見るとマナー違反のように感じられるかもしれない所作だが、これが江戸のリアルなのだ。

東西での食文化の差も面白い。味付けは勿論、食べ物の形にも現在以上に様々な違いがあった。

例えば第一話に登場した創作料理“はてなの飯(鰹の時雨煮を白米と混ぜた創作料理)”で上方出身の澪がむすんだおにぎりは俵型だった。何気ないことのようだが、これも江戸時代当時に描かれた風俗百科事典『守貞漫稿』の握り飯の項目「京坂は俵型に制し、表に黒胡麻を少し蒔くものあり。江戸にては円形あるいは三角等(原文ママ)」という記載にのっとった描写である。

おにぎり以外にも正月に食べる餅の形が上方では丸、江戸では四角。月見団子は上方では小芋形。鰻の蒲焼は上方は腹びらきにして串に指し、焼いてからタレを付けるが、武士が多い江戸では腹びらきは切腹を連想させて縁起が悪いと背開きにして、一度焼いてから蒸して味醂を加えたタレをつけてさらに焼く、など枚挙にいとまがなかった。

こうしたの違いにカルチャーショックを受けながら料理人として成長してゆく澪。

澪の創り出す上方と江戸の食文化を融合させた料理はこのドラマの大きな見どころである。とても美味しそうで、正直見ていて物凄くお腹がすく。これはもう“飯テロ時代劇”といっていいと思う。

本編終了後に紹介されるレシピを元に、今度自分で作ってみよう。

土曜時代ドラマ『みをつくし料理帖』(NHK総合)
■放送日時:毎週土曜18時05分~(連続8回)
■原作:高田郁
■演出:柴田岳志
■脚本:藤本有紀
■主演:黒木華

文/堀口茉純(ほーりー)
東京都足立区生まれ。明治大学在学中に文学座付属演劇研究所で演技の勉強を始め、卒業後、女優として舞台やテレビドラマに多数出演。一方、2008年に江戸文化歴史検定一級を最年少で取得すると、「江戸に詳しすぎるタレント=お江戸ル」として注目を集め、執筆、イベント、講演活動にも精力的に取り組む。著書に『TOKUGAWA15』(草思社)、『UKIYOE17』(中経出版)、『EDO-100』(小学館)、『新選組グラフィティ1834‐1868』(実業之日本社)がある。

最終更新:5/25(木) 19:10
サライ.jp

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