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「IPOの中長期投資」で好成績なのは、意外な"あの銘柄群"

5/25(木) 18:11配信

会社四季報オンライン

 2017年のIPOは4月末までに32社が上場を終えた。32社の初値騰落率は、日経平均株価が3月に入って軟調に推移したにもかかわらず、平均で105%と絶好調となっている。

 1月から4月の期間を過去5年間遡って比較すると、アベノミクス相場が本格化した13年を除くと、この時期は例年大型株主導の相場展開となるため、IPO銘柄の初値パフォーマンスはいまいちだった。ところが、17年は米国におけるトランプ相場の先行き懸念、フランス大統領選挙、北朝鮮の地政学的とリスク要因が多かった。大型株が軟調に推移した3月に21社のIPOがあったことが、功を奏したと言えるだろう。

 13年から17年までの期間の初値騰落率を市場別に分解してみると、マザーズ市場のパフォーマンスの高さが目を引いている。一方、東証1部、2部に関しては、マイナスパフォーマンスの年もあり、公募・売出しにおいて積極的に投資を希望する投資家は少ないとみられる(下表)。

 IPOといえば短期勝負でいかに儲かるかに個人投資家の焦点があるため、「初値」ばかりに目が行きがちだ。しかし、もう少し長い時間軸で投資を考えてみると、初値騰落率だけに着目すべきではないことがわかる。

 私はこれまでの連載で、公募・売出しでIPO株を手に入れることは非常に難しいがゆえに、上場日に値が付いた瞬間以降の投資手法について何度か言及してきた。しかし、これまでの投資手法は、上場してから1年程度の期間で白黒つける内容であった。今回はやや長め、2年から3年の期間で、じっくりと保有してリターンを上げるにはどのように銘柄選択すべきかを考えてみよう。

 上場時の公募価格で計算した時価総額、初値で計算した時価総額と、直近5月18日終値の時価総額をそれぞれ比較したものが以下の表である。やはり、公募価格に対する比較では、東証マザーズ市場に上場した銘柄の平均パフォーマンスが初値騰落率同様に群を抜いている。しかし、初値からのパフォーマンスを見ると、群を抜いているとは言いにくい。 

 一方、14年、15年ともに、安定したパフォーマンスを出しているのは、東証2部銘柄である。もし仮に、「上場後のIPO株に投資する市場別ファンド」があれば、東証2部銘柄ファンドが最も高いパフォーマンスを出している可能性が高い。 

 なぜなら、以下の表は時価総額比較だけで、配当などは含まれていないからである。東証2部銘柄は時価総額が250億円に満たないという理由だけで東証1部に上場できなかっただけであり、新興市場銘柄と違ってほとんどの2部銘柄は配当を出している。ファンドであれば、その配当収入もあって基準価格は株価のパフォーマンス以上になるのは当然のことである。

 東証2部銘柄のパフォーマンスが高くなりやすい理由を挙げてみると、1.2部から1部への市場変更、2.バリュエーションの変化、3.投資家層の変化、4.業績の安定度などがある。

 まずは「市場変更」について。14年、15年に2部にIPOした19銘柄は、17年5月19日時点で13社が1部に指定替えとなっている。繰り返しになるが、IPO時点ですでに東証1部基準は満たしているわけで、上場1年後にその形式基準を下回っていないことに加えて、時価総額が40億円であれば、非常に簡易な上場審査で1部昇格となるはずである。なので、2部銘柄は「1部昇格に最も近い銘柄群」といっても過言ではない。

■ 1部昇格でバリュエーション・チェンジ

 「バリュエーション」については、14年、15年の19銘柄の業績予想ベースのPERは12.6倍と既上場の2部平均との比較でかなり低いのが現実である。それが、1部昇格でバリュエーションが変わることで、業績に大きな変化がなくても、株価のバリュエーション・チェンジが起こるのは必然的なことである。

 「投資家層」については、大口の機関投資家の運用するファンド、特に年金ファンドなどでは、ユニバース(組み入れ候補銘柄)に2部銘柄を入れていないものが多い。それが、1部昇格と同時に組み入れ対象になるわけだから、需給による株価上昇が起こり、ひいてはバリュエーションが上昇することになる。 

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