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北朝鮮危機が招いた米中接近、「台湾化」する日本の選択

5/25(木) 9:20配信

ニューズウィーク日本版

<米トランプ政権の対中強硬派の失速と朝鮮半島危機で好転する米中関係。2大国のはざまで日本は「駒」となるしかないのか>

4月上旬の米中首脳会談は共同声明もなく低調だったとの印象があるが、実態は逆だろう。会談後に中国は北朝鮮への圧力を強め、6回目の核実験を抑え込んだ。さらにこれを取引材料にして、貿易問題でアメリカの圧力を見事にかわした。

中国の習近平(シー・チンピン)国家主席がトランプ米大統領に示した「100日計画」によれば、中国は外資系金融機関への規制を大幅に緩和し、米国産牛肉の輸入も再開する。こうして中国は、「為替操作国」に指定されて関税を上げられる危機を回避した。

その分、貿易面での圧力というしわ寄せを日本などがかぶることになってしまった。3月の米貿易赤字急増について、ロス米商務長官は5月初め、日本とメキシコだけを名指しで非難している。これまで中国を敵視してきたバノン米大統領首席戦略官・上級顧問とナバロ前国家通商会議委員長の力が政権内で削られたこともあり、米中関係は前向きな方向に転じたと言える。

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台湾陥落の次は日本か?

北朝鮮危機が、この回れ右の触媒となった。アメリカの空爆だけでは金正恩(キム・ジョンウン)体制と核関連施設を壊滅できない。さらに日韓両国への報復攻撃を招くため、アメリカとしては中国に依存せざるを得ないのだ。

こうして米中両国が手を握り、しわ寄せが日本に、という構図はこれから定着するかもしれない。米中間の「将棋の駒」としての日本――これは台湾の地位を思わせる。

トランプは大統領就任前の昨年12月初め、国交のない台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン)総統に電話。その後も「一つの中国」を否定する構えを見せて、中国を驚倒させた。しかし台湾はトランプの対中取引の駒にされただけだ。その証拠にトランプ政権は懸案である台湾への兵器輸出を遅らせている。長期の戦略的利益や、自由と民主主義という価値観よりも、目先の取引を重視している。

台湾の防衛力は危険なほど低下しており、中国がいよいよ台湾制圧に乗り出すことも十分あり得る。台湾が陥(お)ちれば米中間の駒の役割は日本に回ってくるだろう。19世紀半ば、ペリー艦隊が日本に力ずくで国交を迫った理由の1つは、対中貿易の中継港獲得だった。この時以来の「中国があるが故の日本」という構造が、冷戦終結と中国経済の台頭で再び戻ってきた。

ただそのアメリカは今、分が悪い。米中首脳会談で習を表面的に屈服させるほど強力な軍事力と経済力がありながら、トランプ政権では各省の局長級以上の8割程度がまだ空席。政策立案と執行が十分できていない。



そしてコミーFBI長官の突然の解任で、大統領弾劾さえささやかれている。共和党主流がその気になれば、弾劾手続きの開始と大統領の辞任もあり得る。共和党と民主党の泥仕合は最悪で、ロシアの識者は「暴君ネロやカリギュラ時代のローマ帝国の再来」と当てこするほどだ 。

振り返れば01年9月11日の同時多発テロをきっかけに、アメリカはアフガニスタンとイラクで開戦。一国だけで世界を差配し、自由と民主主義を力ずくでも広めることができると思い込んだ。人間と国家はおごれば反発を呼び、足元では内紛も高じて高転びするものだ。テロの黒幕ウサマ・ビンラディンは殺されたが、米国支配の打破という目標は実現するかもしれない。

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アメリカの混乱を前に、米中のはざまで日本は揺れている。ただ今は、日米同盟破棄や対中接近に迫られる事態には至っていない。韓国が大統領弾劾中でも経済好調を維持したように、米経済も好調を続けるかもしれない。一方、中国経済は破綻ぎりぎりの綱渡り。5月中旬には北朝鮮がミサイルを発射し、「一帯一路フォーラム」で意気上がる中国の顔に泥を塗った。米軍はアジアで確固たる力を維持している。アジアが近代以前の中華秩序に戻ることはない。

それでもアメリカの内政紛糾と国際的指導力の麻痺はしばらく続く。日本は慌てずに経済の立て直しと、自前の防衛力の強化を続けていくべきだろう。

[本誌2017年5月30日号掲載]

河東哲夫(本誌コラムニスト)

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