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伊武雅刀 声だけ評価された時「遠のいたな」と感じた

5/26(金) 7:00配信

NEWS ポストセブン

 映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』。今回は、劇団員としてキャリアをスタートした役者・伊武雅刀が、「声」の仕事で脚光を浴びた経験が、その後の芝居にどのような影響を与えているかついて語った言葉を紹介する。

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 伊武雅刀は高校在学中の1967年、NHKドラマ『高校生時代』の学生役で役者としてデビューしている。

「経済的な事情もあり、大学には行かせてもらえない環境でした。それなら、役者でも目指せば、上手くいったら人生としてなんとかなるだろう、と。

 当時は高校生で、親の都合で名古屋にいたのですが、そんな時に新聞を見たら小さな劇団の募集があり受けることにしました。たまたまその講師をしていたのがNHK名古屋のディレクターの方で、『高校生時代』というドラマを手掛けていて。それで、出ることになりました。

 演技としては、一番ナチュラルにできていた時期だったと思います。怖いもの知らずですし、そもそも演技というものを知りませんから。しかも、ドラマに描かれているのは高校生の実態です。学校のトイレでタバコを吸うような不良の役で、私自身もそれで先生につかまったことがあるから、自然にできるんですよね。煙が出ないようにタバコを吸うコツなんかも分かっていましたから、それをやってみるとリアルになるんです」

 その後、伊武は上京、劇団を移り変わっていくことになる。

「このまま名古屋にいてもダメだなと思い、学校を辞めて東京の劇団の養成所を受けました。劇団雲です。なぜ雲を受けたかというと、いちばん好きな山崎努さんがいたというのと、芥川比呂志さん、神山繁さん、小池朝雄さん、高橋昌也さん──映画の脇を固めている方々がたくさんいらしたからです。そこに入れば映画界に入れる、俺の未来は決まった、と思いました。

 でも、養成所ってそう簡単には出させてくれません。一年で『君はいらない』と言われ、今度は俳優小劇場の養成所に行きましたがそこでも馴染まなくて半年で辞めて。それで自分たちで小さな劇団を作り、貧しい新劇生活が始まっていきました」

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