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癒やし笑顔の謎の男を演じた福士蒼汰「僕自身は明るくないです(笑)」

5/26(金) 20:30配信

ザテレビジョン

“ブラック企業”“長時間労働”“パワハラ”など現代の社会問題をテーマにしつつ、軽妙な語り口で人気を博した小説「ちょっと今から仕事やめてくる」を映画化。主演を務めた福士蒼汰は関西弁を話す謎の男・ヤマモトを、工藤阿須加はブラック企業に勤めるサラリーマンの青山を演じた。

【写真を見る】福士蒼汰&工藤阿須加がブラック企業に勤めたら…?

――この映画の企画が立ち上がった当初から、福士さんと工藤さんのキャスティングが想定されていたそうですが、お二人はこの作品のどこにひかれて出演を決めましたか?

福士:最初にそのお話を聞いたときは、自分でいいんですか?と思いました(笑)。というのも、脚本を読んでみると、普段の自分とは違ってて、ヤマモトは関西弁をしゃべり、明るくて、常に笑顔のキャラクター。自分とは真逆と言っていいくらいに全然違う要素がいっぱいあるなと思いました。

――福士さん自身は明るくないんですか?

福士:明るくないです(笑)。この人のテンションはいつ上がるんだろうと思われるタイプだと思います。なので、ヤマモトとして、どういう明るさを出していくか、そのエネルギーを探しながら脚本を読んでいました。

――工藤さんはいかがですか?

工藤:僕も福士君と同じで、なぜ僕をイメージしてくださったのかは全然分からないですけど、そうやって言っていただけるのは、とてもありがたいことだと思います。でも、脚本を読ませていただいて、正直、青山という役と向き合うのは大変だなと感じました。青山は仕事の厳しいノルマと上司のパワハラに悩んでいて、精神的に追いつめられているキャラクターなのですが、全体を考えたときに、青山だけを中心に考えたらいけないなと思いました。

なぜなら、青山の視点だけで考えてしまうと、吉田鋼太郎さん演じる会社の上司や、黒木華さんが演じられた先輩がただ否定的な存在になってしまうので。たとえ青山を苦しめる存在であっても、いろんなものを抱えて生きてきた中で、自然とそうならざるを得ない状況になってしまったのではないかと。青山を演じる以上はそこをちゃんと理解しておかないといけないと思い、常に意識して演じていました。

――上司に罵倒される姿など、青山の置かれている状況はとても厳しく、観ているこちらの心が折れそうなぐらいでした。福士さんはそれをそばでご覧になっていて、いかがでしたか?

福士:僕は会社パートの撮影が終わってから合流したので、工藤さんがどういう状況になっているのか、全く知りませんでした。でも、完成した映画を見て、“かわいそうだな”と思いました。

工藤:完全に他人事だよね(笑)。

福士:(笑)。でも、青山の「前に向かいたいけど、向かうのが怖い」という感じがすごく伝わってきました。多分、前に向かおうという気持ちがなかったら、すぐに会社を辞めていると思うんですよね。その青山の頑張りたいという気持ちが、工藤さんのマジメで一直線なところとリンクしていて、青山の心情がとてもリアルに伝わってきました。

――工藤さんは撮影以外のときもスーツを着て過ごされていたそうですが、それが役に影響を与えることはありましたか?

工藤:この役と出会う前から、スーツを着る機会は多いほうでした。でも、リクルートスーツを自分で買って着るということはしたことがなかったので、初めてのチャレンジでもありました。その中で感じたのは、リクルートスーツは自分を守る鎧でもあり、前向きに頑張ろうという意思表示でもあるんだなと。それを毎日着ることによって、しわの出方も、着方も、だんだん変わってくるんですよね。そうやって青山の生活習慣を自分の中に取り入れたことは、演じる上で大きなものになったと思います。

――撮影期間中、青山の気持ちを引きずって、つらくなったりはしませんでしたか?

工藤:正直、とてもつらかったです。撮影の期間中は家族や友人と一切連絡を取らず、自分を追い込むようにしていたのですが、その孤独感はすごく寂しいし、怖いし、つらいものでした。でも、その感覚を撮影期間中に持てて、本当に良かったなと思います。

――福士さん演じるヤマモトは、青山に的確な助言を与え、彼の人生に光を当てていく天使のような役どころでした。ヤマモトのように、ずっと笑顔でいるというのもまたつらいのではないかと思うのですが、演じていていかがでしたか?

福士:笑顔といっても、単純に笑うのではなく、その裏にある気持ちを考えました。ヤマモトがなぜその笑顔になるのかを明確にしてくことが大事だと思い、それを常に意識していました。あと、ヤマモトは確かに客観的に見れば謎の男ですが、実は笑顔の裏に大きな秘密を抱えているんです。そういうヤマモトの根本的な部分は大事にしようと思って演じていました。

――監督を手掛けられたのは、「八日目の蝉」('11年)などの成島出さんですね。人間の心の機微を描くことに長けてらっしゃる監督だと思いますが、成島組の現場で一番得たことは何ですか?

福士:たくさんありました。台本の基本的な読み方、役へのアプローチの仕方、自分の持っているものを100%生かすにはどうしたらいいか、そういうことを学びました。中でも、一番学んだのは、セリフの裏に隠されている思いや感情を明確にしていくことです。なぜこんなことを言うのか、なぜこういう行動を取るのかを読み取って、シーンの前後を見ることで、どう動くべきか明確になっていくんです。そうやって、自分だけのストーリーを見出すことが大切で、役に近づく大きなポイントだと教わりました。

工藤:僕もいろんなことを学ばせていただきました。青山としてその場にどう生きるのかを考え、役と向き合うようにしました。それを成島監督が丁寧に撮ってくださったので、難しかったですけど、最後まで何とか演じることができました。

――お二人は初共演ですが、ヤマモトと青山のように互いに救われるような部分はありましたか?

工藤:たくさんありますね。福士君は仕事に対してマジメで真摯な方ですし、一緒にやらせていただいて感じたのは、本当に表情が繊細なんですよ。だから僕も自分が本当に“救われた”と思えるところまでもっていけたし、相手が福士君じゃなかったら、あそこまで納得して演じることができなかったと思います。何より、福士君が撮影に合流するまでが本当につらいシーンの連続だったので、福士君が撮影現場に来たときに“これでやっと救われる”と思いました(笑)。

福士:僕が思った工藤さんと青山の共通点は、真っすぐな部分なんです。それは主に目に感じたんですが、一緒にお芝居をしていて、本当に青山の目だなと思いました。青山の悲しんでいるときや輝いているとき、その全てが目に表れていて、ヤマモトを演じる上でも、工藤さんの目の表情にすごく助けられたと思います。

――お二人には青山にとってのヤマモトのような背中を押してくれる人はいますか?

工藤:大学時代からの親友が二人いて、彼らは一緒の空間にいれくれるだけでいいというか、3人の間では言葉が必要ないんです。お互いに話をしなくても、別のことをしていても、その空間が居心地よくて。本当に何かあるときは、それを少し話せば、すぐに理解してくれますし、僕にとってのヤマモト的存在だと言えると思います。でも、いつどうやって仲良くなったのか覚えてないんですよね(笑)。きっと親友って、そんなものなんでしょうね。

福士:自分は基本的に、人に相談することがなくて、それより何より、僕は生きていて落ち込むことがないんです。もし悩んだとしても、寝るか、行動するかのどちらか。今日解決するのは無理だと思ったら寝るし、解決できそうなら、その悩みごとに対してどういう解決策があるのかを考えて、それに向かって行動します。そうすれば大抵のことは大丈夫になるんです。

工藤:僕も誰かに悩みを相談することは、あまりないかも。福士君と同じで、基本的には自己解決派なので。

――では、もしお二人がブラック企業に勤めたら、どういう決断を下すと思いますか?

工藤:ブラック企業って…、どこからがブラックなのかな?と思います。就業時間を守らないとブラックなのか、上司から罵声を浴びせかけられたらブラックなのか。でも、昔はブラック企業なんて言葉はなかったですよね。たぶん、そこに愛があるか、ないかの違いであって、愛があったら必ず相手も受け止めてくれると思うんですよ。だから、もし自分がそういう会社に勤めたら、たぶん会社に対する見方を変えると思います。別の見方をすれば、違うアプローチもあるんじゃないかなと思うし。きっと言う方も言われる方も何かしらの理由があると思うので、そこを明確にしたうえで、対処法を考えると思います。

福士:どうだろう。「ミスったなぁ」って思うんじゃないでしょうか(笑)。たぶん僕は、速攻でめっちゃいい仕事をして、上にのぼりつめて会社の体制を変えるか、それが無理だと分かったら辞めると思います。だって、「無理」ってなったら、会社にいる意味が見出せなくなりますからね。

――では、最後に、今回の映画は“仕事”がテーマになっていますが、お二人にとって仕事とは何ですか?

福士:今やっている役者という仕事は、自分のスキルを上げてくれるものかなと。今回の関西弁もそうでし、職業ものや技術者ものもそうですけど、俳優は役のためにいろんなことを学ばないといけないので、それを続けていけば必然的に自分のスキルが上がっていくと思うんです。そして、それは人間としての魅力にもつながると思うので、仕事は自分を高めてくれるものなのかなと思います。

工藤:あらためて考えると難しいですね。

福士:「仕事とは?」って、なんだか「情熱大陸」みたいで(笑)。

工藤:僕も福士君と同じように思っているところもありますけど、「仕事とは?」というよりも、生涯一つの仕事を見つけられたら幸せだろうなとは思います。まだこの先どうなるか分からないですけど、それが役者であればいいなって。たぶん生涯をかけてのめり込める仕事に出会うことって、なかなかないと思うので、もしそれが今出会えているのなら、自分は幸せ者だなと思いますね。でも、きっと自分に守るものができたら、仕事に対する考えも変わってくると思うので、今はまだ明確な答えを出せていないというのが正直なところですね。

最終更新:5/26(金) 20:30
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