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「37歳係長」がここまで決められる会社ってどこ?

5/26(金) 12:43配信

日経BizGate

迫られた究極の決断

 【201X年6月上旬、ある電子部品メーカーの担当者は、韓国の大手スマートフォンメーカーから決断を迫られていた。「どんなに遅くても8月中旬には『モノ』が欲しい」と。要望された「モノ」とは、スマートフォンの通信機能に必要な電子部品であった。実はこの部品は、以前、開発依頼を受けていたものだ。ところが、3月、この顧客から、突然「不要になった」と連絡を受け、開発を中断したという「いわくつき」の案件であった。中断した時点で、開発の進捗状況は5合目といったところだった。急に再開を求められても、信頼性評価や量産態勢の構築、上司および経営陣への確認などの時間を考慮すると、2カ月後の量産出荷はかなり困難に思われた――。】

 さて、あなたは37歳の係長だとしよう。そして、この顧客の担当窓口だ。あなたなら、こうした状況で、どのような行動をとるだろうか。顧客対応と社内対応の両方について考えてみてほしい。

 まず考えられるのは、あなたが37歳の係長であるとすると、説明資料を作って上司に報告し判断を仰ぐということであろう。上司はさらにその上の上司に報告するだろう。最終的に意思決定するのは事業部長クラスかもしれない。開発や生産など他部門の協力も仰がなければならないから、上層部を巻き込むことは不可欠だ。場合によっては、経営トップから、開発部門や生産部門に対して強権発動してもらう必要があるかもしれない。

 上層部への報告を終え、承認が下りてはじめて、係長であるあなたは、具体的な行動をとることになる。開発部門、生産部門、品質保証部門、企画部門など関係各所に状況を説明しに行かなければならない。たとえトップからの命でも、2カ月後に量産品納入という厳しい開発スケジュールで、本当に実現できるかどうかは現場の判断に委ねられる。

 開発は5合目まで終わっていたとしても、たいてい9合目あたりで足踏みするものだ。急いで開発しても、製品を出荷してから不具合が見つかったら、損害賠償を請求されかねない。開発現場はほかの開発案件も抱えていて、すぐに技術者の手当がつかないかもしれない。

 こうしたことを考えると、トップの承認も容易には下りないかもしれない。開発や関係部門の意見を聞いてからと判断が先送りされかねない。3月に一度開発中止となっていることから、再び中止になるケースも想定して、企画部門は違約金を請求できる契約を結ぶよう要求するかもしれない。そうなると法務部門とも相談しなければならない。

 こうした諸々のことを考えると、顧客への回答もそれなりの時間を要するだろう。あなたの会社では、はたしてどのくらいで回答できるだろうか。それでも、イエスという回答ならまだよい。ノーという答えであれば、顧客はほかの部品メーカーに急いで声をかけなければならない。あるいは、そうした場合も想定して、すでにほかの部品メーカーに声をかけていているかもしれない。そうなると、時間をかけてイエスと回答しても、時すでに遅しということになりかねない。

 一方、それだけ急いで開発し、どうにか量産にこぎつけたとしても、本当に顧客が計画しているだけの数量を顧客側が生産できる保証はどこにもない。そうなると、あなたは社内で完全に信用を失い、次回から、他部門を説得するのはかなり難しくなるだろう。

 このように、37歳の係長には決定権限がなく、顧客と社内の板挟みになって、振り回されるというのが、ほとんどの企業で起こることではないだろうか。

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最終更新:5/26(金) 12:45
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