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マンU、モウ1年目は「成功」にあらず。EL制覇も、遠ざかったユナイテッドらしさ

5/26(金) 7:20配信

フットボールチャンネル

 16/17シーズンのヨーロッパリーグ(EL)を制したマンチェスター・ユナイテッド。最終的に来季のCL出場権を獲得したシーズンとなったが、モウリーニョ体制1年目を「成功」と総括することはできるのだろうか。(取材・文:山中忍【イングランド】)

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●かつて「タイトルを獲れば成功」だったが…

 ヨーロッパリーグ(EL)の優勝セレモニーで、3本指を立てながら笑顔を見せていたジョゼ・モウリーニョ。マンチェスター・ユナイテッド就任1年目の今季は、開幕前哨戦に当たるコミュニティシールド、リーグカップ、そしてELの3つの優勝トロフィーを手中に収めて幕を閉じた。

 5月23日にスウェーデンで実現したEL優勝は、プレミアリーグ6位に終わったユナイテッドにCL出場権をもたらすタイトル獲得でもあった。アヤックスを退けた決勝は、内容的にも奪うべくして奪った勝利(2-0)。

 敵が欧州主要大会決勝では史上最年少となる平均年齢23歳未満のイレブンだったとはいえ、18分にポール・ポグバ、48分にヘンリク・ムヒタリアンと、モウリーニョが昨夏に買った両新戦力がゴールを決め、巷で「今季の成否を決める」とされた大一番での無難な試合運びを可能にした。それでも、モウリーニョ体制1年目を「成功」とは評価できない。

 かつて「タイトルを獲れば、そのシーズンは成功」と言っていたのは、偉大なサー・アレックス・ファーガソン元監督。国内外で主要タイトルを獲得した今季は紛れもない成功ということになる。

 だが、ファーガソン時代のチームは、「ユナイテッドらしい戦い」という基本線を維持していた。攻めの姿勢、逆転勝利も当たり前の勝負強さ、そして強豪の風格を感じさせる戦いぶりだ。それ故に、指揮官もファンも納得の内容にタイトルという結果が伴えば迷わず成功と判断できた。

 ところが今季の戦いぶりは、「ユナイテッドらしさ」を感じさせるものではなかった。リーグ順位は昨季から1つしか下がっていないが、首位との距離は昨季の15ポイント差から24ポイント差へと広がっている。

 計54得点は今季トップ6で断トツの最少。ホームでは16位で2部への逆戻りを回避したバーンリーよりも少ない8勝しかできなかった。

 計29失点は今季プレミアのベスト2ではある。8節リバプール戦に始まった、アウェイでの強豪対決で堅守を重視する姿勢が間違っているわけでもない。筆者は6バック状態だった同節でのスコアレスドローを、「モウリーニョらしい」戦い方だと前向きに受け取った。

●軌道修正を強いたイブラヒモビッチの負傷離脱

 だが、それは格下との対戦で3ポイントを重ねて優勝を争えればの話。引分けがリーグ最高の15試合を数えたユナイテッドは「勝てない」チームだった。クラブ新記録のリーグ戦25試合連続無敗にしても、半数近い12試合で1ポイント獲得に止まった。

 ユナイテッドの今季ベストゲームとしては、31節チェルシー戦(2-0)がすぐに思い浮かぶ。守備面ではエデン・アザールへの徹底したマンマーク、攻撃面では先発したマーカス・ラッシュフォードのスピードが効いた零封勝ちだが、他に候補となる試合がほとんど浮かばない事実も否定し難い。

 モウリーニョ自身は、5月に入って「EL優勝を逃したとしても今季は成功」との自軍評価を示唆する発言をしている。理由は「前例のない実績」。前述の連続無敗記録がその1つだが、もう1つはクラブ史上初となる新体制1年目の主要タイトル獲得。リーグカップ決勝でサウサンプトンを下した(3-2)時点で達成されていた。

 だが、その決勝のウェンブリー・スタジアムで、優勝監督とは思えない冷めた表情を浮かべていたのはモウリーニョ自身。試合後の会見で「なぜ喜ばないのか?」と質問までされた指揮官の意識は、国内第2のカップ選手権よりも、まだ可能性が残されていたプレミアでのトップ4に向けられていたのだろう。当人もユナイテッドのファンも、リーグ優勝争いに復帰しながらのトップ4返り咲きを目標として今季に臨んでいたはずなのだ。

 ズラタン・イブラヒモビッチが2得点だったリーグカップ決勝は、35歳の新CFへの依存度の高さを示す好例でもあった。リーグ戦17ゴール5アシストのイブラヒモビッチがいなければ6位すら怪しかった。

 実際、前線の大黒柱が膝の靭帯を損傷した4月後半から、ユナイテッドはリーグ順位ではなくEL優勝によるCL出場権獲得へと注力対象を完全に切り替えざるを得なかった。

●来季は本心で「成功」と言えるシーズンを

 モウリーニョは「生身の人間には無理」とまで言いながら、過密日程への不満を繰り返してもいた。たしかに、EL決勝に1週間の準備期間があったアヤックスに対して自軍は中二日。相手よりも10試合多い今季64試合目でもあった。にもかかわらずのEL優勝は讃えられて然るべきだ。

 しかしながら、指揮官に同調して「超人的な日程に耐えての優勝」とまで賞賛は出来ない。同じプレミア勢がEL王者となった2013-14シーズン、チェルシーはコミュニティシールドから数えて68試合目に欧州での決勝を戦った。

 その4日後には3位で終えたプレミア最終節が残されてもいた。加えて、シーズン序盤には欧州スーパーカップ、半ばには日本でのクラブワールドカップをこなし、FAカップとリーグカップの双方で準決勝まで勝ち上がってもいた。

 故障者の数はEL決勝で4名が松葉杖をついて会場入りした今季ユナイテッドほどではなかったにしても、日程の過酷さでは当時のチェルシーが勝るとも劣らない。

 モウリーニョも、内心では今季が成功ではないと自覚しているに違いない。だからこそ、チームの不出来を様々な発言で覆い隠そうとした。

 BBCテレビで「5?7年がかりのプロジェクトになるかもしれない」と発言したのは4月。リーグ優勝を果たすことになるチェルシーと、得点数は最多で失点数は最少の2位となるトッテナムとの大きな差を既に認識していたということだ。

 EL優勝後の喜びも、“3冠”の成功を祝っているようでいて、実は欧州での決勝で負ければ失敗とみなされるプレッシャーからの解放と、CL出場権獲得で今夏の補強が行いやすくなったことへの納得を意味していると受け取れた。

 テレビカメラの前で、目の下にくまを作りながら「非常に良いシーズンだった」と、安堵の表情で語ったモウリーニョ。新体制下のユナイテッドは、晴れてCLをも戦う来季に、指揮官も本心で「成功」と言えるシーズンを目指す。

(取材・文:山中忍【イングランド】)

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