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新卒入社、転職、異動、転勤……新しい環境に馴染むために必要なのは“上司の顔色を読まない力”

5/26(金) 16:20配信

HARBOR BUSINESS Online

 ゴールデンウィークも終わり、5月病も克服し、そろそろ梅雨の季節に入ろうとしているこの時期。4月から入社した新入社員、転職された方、部署配置を経験された方、国内外に転勤された方など、新しい環境に慣れてきた方もいれば、まだまだ慣れない方もいるかも知れません。

 新しい環境、自分を取り巻く新しい人間関係に上手く馴染むためにはどんな人間力が必要でしょうか?本日はこの人間力を、インターナショナルスクールに通う学生さんを対象にした実験を基に考えてみたいと思います。

◆怒りと嫌悪の微表情を読むことが出来れば環境に適応できる

 インターナショナルスクールに通う様々な民族出身の学生さんたちに微表情検知テストを受けてもらいます。そして各々のスコアと各々が集団にどの程度馴染んでいるかを示すスコアとが比べられました。その結果、怒りと嫌悪の微表情を認識する能力が高ければ高いほど、集団に上手く馴染むことが出来ていることがわかりました。

 これはなぜでしょうか?

 他者の怒りや嫌悪の表情・微表情を読むことが出来れば、その人の大切にしたい価値観がわかるからです。

 怒りという感情は、不正義や目的達成を邪魔する障害が原因になって引き起こされます。

 嫌悪という感情は、不快なヒト・モノ・言動が原因になって引き起こされます。人間関係が始まったばかりの状況では、自分を取り巻く個々人がどんな想いを持ち、どんな価値観を大切にしているかを明確につかむことは困難です。

 コミュニケーションをする中で相手がどんな場面で怒りや嫌悪を感じているかを徐々に知ることで、相手の価値観がわかり、相手の不快になることはしないようにしようと思えるようになる、と考えられています。

 逆に言えば、他者が怒りを感じていたり、不快感を抱いているのに気付けなければ、人が大切にしたい価値観を察することができないのですから、その環境に馴染むのは難しいでしょう。

 どんな言動が上司の逆鱗に触れるのか、同僚はどんなことを不快に感じるのか、宗教や民族が違う人は何を不正義と感じるのか、こうしたことを察することが出来る人間力は良好な人間関係を構築する上で欠かせませんよね。

◆ネガティブな微表情はあえて読まないことが大切

 逆に、軽蔑・恐怖・悲しみの微表情を認識する能力が高ければ高いほど、集団に上手く馴染むことが出来ないことがわかりました。これはなぜでしょうか?一言で言えば、こうしたネガティブな表情に敏感になることでストレスに押しつぶされてしまう恐れがあるということが考えられています。

 軽蔑を例に考えます。軽蔑という感情は、他者を見下したり、自分が優位に感じるときに抱く感情です。相手の軽蔑に敏感に反応してしまうと、自尊心が傷つけられ、集団の中の自分を自己否定してしまう可能性が考えられます。

 上司がいつも自分を見下している、同僚が自分をバカにしてる、こんなことを毎回経験していたら確かにその集団に属していることが辛くなりますよね。

 ある程度、相手の感情に鈍感なことも大切なことだということです。もし、あらゆる微表情を読みとるスキルを獲得するという「何らかの」利点を得たいと思うならば、その代わりに自分に向けられるどんなネガティブな感情もはねつけられる心の強さを持たなくてはいけないのかも知れません。

◆微表情を学んだ方が良い人・学ばなくても良い人

 ところで世の中には他者の表情・微表情に元々、敏感な人がいる一方で、全くもって鈍感な人がいます。

 その理由の一つとして育成環境があります。感情表現が豊かな家庭で育った子どもは、感情表現が豊かではない家庭で育った子どもに比べて、他者の表情を読みとる能力が低いことがわかっています。家族の感情や意図を理解するのに、敏感になる必要がないからです。

 つまり、感情表現豊かな育成環境で育った方々は、他者の微妙な感情や抑制された想いに気付きにくい傾向を持っている可能性があるため、表情や微表情を読みとるスキルを学ぶことは集団に適応する上でプラスに働くと考えられます。逆に感情表現が乏しい育成環境で育った方々は、すでに他者の微妙な感情の変化を読みとる能力に長けている可能性があるため、これ以上、その能力を伸ばさなくても良いのかも知れません。

 人の気持ちに敏感になる、いわば空気を察することの長短を知り、実生活に活かすことが大切ですね。

 ちなみに、あらゆる微表情を敏感に察知することを仕事にしている私は、スイッチを持っています。微表情の意味を追求しないスイッチを。

(参考文献)

Yoo, S. H., Matsumoto, D., & LeRoux, J. A. (2006). The influence of emotion recognition and emotion regulation on intercultural adjustment. International Journal of Intercultural Relations, 30(3), 345-363.

<文・清水建二 写真・ぱくたそ>

【清水建二】

株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役。1982年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でメディア論やコミュニケーション論を学ぶ。学際情報学修士。日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Coding System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。微表情読解に関する各種資格も保持している。20歳のときに巻き込まれた狂言誘拐事件をきっかけにウソや人の心の中に関心を持つ。現在、公官庁や企業で研修やコンサルタント活動を精力的に行っている。また、ニュースやバラエティー番組で政治家や芸能人の心理分析をしたり、刑事ドラマ(「科捜研の女 シーズン16」)の監修をしたりと、メディア出演の実績も多数ある。著書に『「顔」と「しぐさ」で相手を見抜く』(フォレスト出版)、『0.2秒のホンネ 微表情を見抜く技術』飛鳥新社がある。

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最終更新:5/26(金) 16:20
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