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飲んでもムダな薬リスト #1

5/27(土) 13:18配信

文春オンライン

風邪を引いたら抗生物質、年に一度は健康診断を受けるべき――このような医療の常識が、近年見直されつつある。きっかけは、本当に必要十分な医療を提供しようという運動「チュージング・ワイズリー(=賢い選択)」。この運動が始まった経緯とともに、日本で行われている過剰な投薬・治療・検査を検証する。
(出典:文藝春秋2017年5月号・全3回)

日本でも行われている「過剰な医療」リスト(20項目)

1年がかりの「念のため」の検査

 ある80代女性の実話である。

 風邪をこじらせて、かかりつけの開業医にかかった女性は、胸のレントゲン写真を撮ることになった。その結果、肺炎ではなかったが、肺に何か気になる異変が見つかった。それを見た開業医は、「念のためCTを撮って、詳しく調べたほうがいい」と伝えた。そこで女性は、紹介状をもらって、大学病院で追加の検査を受けることになった。

 大学病院でCTを撮ると、やはりいくつか正常と異なる変化が見られた。医師は彼女に、「3~4カ月ごとにCTを撮り、経過観察が必要です」と伝えた。さらに、「念のため」と言われ、エコー検査も受けることになった。すると甲状腺に小さな異変が見つかったので、女性は針を刺して組織を採り、細胞を調べる生検も行うことになった。

 こうして女性は、高齢であるにもかかわらず、何度も大学病院に通うことになった。最後には「どちらも心配ありません」と診断されたのだが、その検査結果をもらうのに、丸1年かかったのだ。

 肺炎かどうかを確認するのに、最初のX線検査は必要だったかもしれない。だが、その後の検査はどこまで必要だったのだろうか。最終的に「異常なし」のお墨付きはもらえたが、女性は1年にわたり「重い病気かもしれない」と不安な日々を過ごすことになった。それだけでなく、度重なる「念のため」の検査によって、決して安くない医療費を本人と国民が負担することになったのだ。

 佐賀大学名誉教授で、現在、京都にある七条診療所の所長を務める小泉俊三医師(総合診療医)はこう話す。

「病気を見逃すと責められるかもしれないので、医師には『念のために検査をして、病気を否定しておきたい』という心理が働きます。また、女性の病歴を把握できていれば、追加の検査はしないという判断ができたかもしれませんが、大学病院の医師は忙しくて、ゆっくり問診をする時間が取れません。そのため情報不足を補おうと、つい検査をオーダーしてしまうのです」

 検査が無暗に増えてしまう背景には、そんな医師側の事情があるという。

 こうした検査が、過剰な投薬や手術につながることも少なくない。たとえば、別の目的で行った血液検査で、ついでに調べた項目に異常値が見つかり、中性脂肪値やコレステロール値を下げる薬を飲むようになった人もいるはずだ。また、この女性のケースでは、CTで見つかった異変が「早期の肺がんの恐れあり」と診断されていたら、「念のために」肺の一部を切り取る手術を受けていた可能性すらあった。

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最終更新:5/30(火) 12:12
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