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揺れる朝鮮半島

5/27(土) 9:10配信

中央公論

 国際的な非難にもかかわらず、北朝鮮は核・ミサイル開発をやめようとしない。韓国も同国初の大統領罷免により政治情勢は混迷している。「深層NEWS」でも、さまざまな角度から南北朝鮮の問題を取り上げた。最悪の事態は果たして避けられるだろうか、キャスター二氏が語り合った。

◆暴走する北朝鮮
「金正恩委員長がある段階で決断したという話を聞いた。これまでは隠していたけれど、これからはすべて見せると。我々はこれだけ持っている。だから下手に手出しするなと。スカッド、ノドン、ムスダンとミサイル実験に成功した。北朝鮮が最後に取り組んでいるのがICBM(大陸間弾道ミサイル)」=辺真一・『コリア・レポート』編集長(二月二十一日)
「準備をすればいつでも次の実験ができる状況にあると思う。ミサイルの弾頭部分に搭載できるように核兵器を小型化、軽量化することと、ミサイルの射程を伸ばすこと。これが組み合わされると、日本とアメリカにとっては全くステージの違う脅威になる」=森本敏・元防衛相(二月二十一日)
「韓国の新政権が、北に融和的な政策をとると、北朝鮮にとっては核・ミサイル開発を続けるうえで好都合。日米韓の連携も崩せる」=武藤正敏・元在韓国特命全権大使(三月十日)

吉田 金正男氏の暗殺で、北朝鮮は空港という公共の場でVXガスを使った。金正恩はそういう人であると、アメリカに受け止められています。化学兵器を使った中東の国がどうなったか。それを知っていての行動です。当然ながら、世界からどんなに非難されても、制裁を受けても、核・ミサイルの開発をやめることはないでしょう。今後どうなるかかなり心配です。

近藤 北朝鮮の数少ない友好国の一つだったマレーシア国内で金正男を殺害しました。これによって両国の関係は非常に難しくなりました。北朝鮮は国際社会でますます孤立しており、さらに何を引き起こすかわからない状況になっています。

◆有事の可能性
「ICBMに成功すると、アメリカの安全保障に対する極めて重大な脅威という認識で、トランプ政権の北朝鮮に対する先制攻撃であるとか、ミサイル基地に対する攻撃とか、空爆とか、そういう事態も非現実的な話と言い難い状況になっていく気がする」=辺氏(二月二十一日)
「力ですべてを解決する国が、対話で核・ミサイルを諦めることはあり得ない。対話で降りると弱さの証明というとらえ方をする。韓国に亡命した北朝鮮元英国駐在北朝鮮公使の#太永浩#テ・ヨンホ#氏は、政権交代しか核・ミサイル開発を止められない、と言っている」=武藤氏(三月十日)
「アメリカが軍事的に手を出すという時には、おそらく中国と何らかの協議をする。ただ、中国にとって北朝鮮は極めて重要な緩衝地域なので、北朝鮮の国家そのものは壊すことはしないという条件で取引して、中国の暗黙の了解のもとに体制を壊す可能性はある」=森本氏(二月二十一日)
近藤 金正男暗殺事件も、北朝鮮の体制を転覆しようという動きを知った金正恩が先手を打ったものだ、という人がいます。後のリーダーとして担ぎ上げられる芽を摘んだという話に説得力があります。

吉田 もしもVXガスを載せたミサイルが飛んできたら、韓国も日本も大きな被害を受けます。「第二次朝鮮戦争」「朝鮮半島有事」などという言葉も聞こえてくるようになりました。ただし、日本に比べて韓国の危機意識は低いようです。有事はぜひとも避けなくてはなりませんが、危機感は共有しなくてはいけません。

近藤 アメリカも強気ですが、手段は限られています。韓国や日本がダメージを受けることを考えると、先制攻撃にはなかなか踏み込めないでしょう。北朝鮮の核・ミサイル技術が相当進んでいることを考えてもリスクが非常に大きい。中国との関係改善によって、抑止力を強化するほかに有効な手だてがありません。

吉田 アメリカも、軍事衝突はなるべく避けたいのではないでしょうか。すると、中国の了解を得たうえで、何らかの形で金正恩委員長を廃する体制転換をはかろうとすることも現実味を帯びてきます。

◆日本の防衛
「日本の弾道ミサイル防衛は二段階。打ち上げの中間段階で狙うイージス艦と、落ちてくる低い高度で狙うPAC3。韓国が配備を急いでいるのがTHAAD(最終段階高高度迎撃ミサイル)。これがあると三段階になる。ただTHAADは非常に高価なうえ、五、六基ないと日本全土をカバーできない。今検討されているのは、イージス艦のシステムを陸上に置くもの。THAADより安いうえ、二基で日本をカバーできると言われている」=小原凡司・東京財団研究員(三月十日)
「二〇〇二年の小泉総理訪朝で金正日が拉致を認めたのには理由がある。アメリカのブッシュ大統領は、イランに侵攻する前は北朝鮮をやるつもりでいた。当時は小泉さんとブッシュ大統領がものすごく親しかったという背景があった。北朝鮮は力にしか折れない。対話で何十年やっても折れない。力を見せるのがすごく大事」=李相哲・龍谷大学教授(三月九日)
「軍事なき外交はあり得ないし、外交なき軍事もない。両方の知識をきちんと持ち、アメリカとも中国とも話をすることが大切」=石破茂・元防衛相(三月十六日)

吉田 同時に多数のミサイルを発射されると、すべてを防御するのは難しくなります。日本は、第三のミサイル防衛システムの配備を検討していますが、日本だけで無理なら、日米韓で協力してミサイル防衛網を強化していくことも考える必要があります。だけど、しばらくは日韓関係の改善は期待できそうもありません。

近藤 李相哲さんが話していたように、北朝鮮は力にしか折れません。力を見せることが大事です。力とは何か。それはアメリカが北朝鮮に対して強い態度を示し、日米韓の連携を深めること。韓国の新政権がどういう政策を打ち出すのか、それが心配です。今、日本の与党の中からは「敵基地攻撃」という話も出ていますが、こうしたことを議論すること自体が抑止力になります。韓国新政権が不透明である以上、日本は自前の防衛力の整備にもっと前向きに取り組むことが重要ではないでしょうか。
(了)

最終更新:5/27(土) 9:10
中央公論

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